「帯を取るには資金がいる」馬券くんの100万円馬券生活#01
春競馬が終わっても人生は終わらない
2022年6月26日、エフフォーリアが負けた。
タイトルホルダーに完敗だった。
そのタイトルホルダーが先日凱旋門賞で負けた。
世界は広い、日本の競馬ファンはみなそう思っただろう。
エフフォーリアが宝塚記念で負けた日、銀行口座は3桁になった。
もう競馬が嫌になった。
7月は競馬を見るのをやめた。
競馬以外特に趣味がない俺は、金がたまった。
そのたまった金で、旧友と焼肉に行った。味がしなかった。
平日は仕事、休日は競馬を楽しむというのが日常だったわけだが、
競馬をやめた俺は何もすることがなかった。
休日はずっと寝ていた。
そして7月末、気温の急激な変化もあり、体調を崩した。
頭をバットで殴られているかのような頭痛に襲われた。
ネットで調べると、くも膜下出血と書いてあった。ただの夏風邪だった。MRI検査をし、1万円払った。
8月のある日、仕事帰りで乗っていた電車に、くしゃくしゃにした競馬新聞を持っている老人が乗ってきた。
その老人は悪びれる様子も見せず優先席に座り、大ぴらに競馬新聞を広げた。
新聞と顔が触れるぐらいの距離まで目を近づけ、赤ペンで印をつける。
赤ペンのキャップが下に落ち、それを妊婦が拾うが、お礼を言うそぶりも見せない。
老人の目には馬しか見えていないのだ。
年を取っていて、顔はしわくちゃなのに、目は輝いていやがる。
それでいいのだ。それで。
何を考えていたんだ。
競馬は面白い。
俺には競馬しかないんだ。
止まっていた時間が、動き出した。
それからの俺は毎日’競馬の為に’働いた。
本業だけではなく、夜勤も始めた。
9:00から18:00まで働き、22:00から8:00まで働いた。
正直、競馬をやっていなかった7月と比べたら、全然つらくなかった。
そして100万円ためた。2カ月で100万円だ。人間やればできる。
’帯をとる’と何度も言ってきた。
帯をとるには資金がいる。その資金をこの秋競馬に用意することができた。
汗水たらして稼いだ金で、俺は帯をとる。
下準備は整った。
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