痰と咳について

痰(たん)、喀痰(かくたん)の役割

痰は肺内の分泌物や吸い込んだ空気中の異物が気道の粘液に付着したものです。

健康な人間はほとんど痰を体外に排出しません。

正常な状態でも1日に60〜100mlは分泌されているが、途中でほとんど吸収されています。

咽頭に達した物でも無意識のうちに飲み込んでいることがほとんどだそうです。

痰の中にはウイルスや菌、ホコリなどが含まれます。
また、ウイルスや細菌を抑え込むための抗体も含まれています。

つまり、痰を作り出すことでウイルスや細菌を体外に排出し、肺を病気から守っているのです。

(ちなみに痰を飲み込んでしまっても胃酸で細菌やウイルスを殺してしまうのでほとんどの場合は感染はしませんが、できれば飲み込まずに出した方が良いです)

痰の種類と原因

一言で痰と言ってもいろいろな性状があります。

粘液性:白くねばねばした痰

膿性:黄色い色で強い粘りがある

漿液性:水のようにサラサラで無色透明

血性;少量の血液が混じった痰

などがあります。

一般にウイルスよりも細菌の方が膿性の痰が出やすいです。

気道はいつでも濡れた状態にしていようと分泌液が出ています。

気道が乾くとウイルスや細菌に感染しやすくなるからです。
(だから空気の乾燥する冬は風邪を引きやすいのです。)

痰が溜まるとなぜいけない?

①気道が狭くなり呼吸がしづらくなる。

②感染しやすくなる(肺炎など)

③無気肺(肺の中に空気が入らなくなる状態)を起こす

④咳を誘発し、睡眠など生活の質が低下する

体内に痰が溜まると上記のようなことが起こります。痰自体は身体を守るためにできるものですが、体外に排出できることが重要になります。

排痰方法

排痰方法は大きく、①体位排痰、②呼吸介助(リハビリ)、③自己排痰の3つに分けられます。

①体位排痰
重力を利用して痰をのど元に集める方法です。
(あおむけであれば肺の前面、うつ伏せであれば肺の後面、右惻臥位であれば左肺といった具合に排痰されます。)

②呼吸介助(リハビリ)
・呼吸法による呼吸筋の強化
・胸郭のモビライゼーション
・呼吸筋の筋緊張緩和
など

③自己排痰
咳、ハフィング(声を出さずに勢いよく息を吐く方法)でのど元に上がってきている痰を体外へ出す方法があります。

※この他にも排痰器具を使って吸痰することもあります。

咳(せき)の原因

ここまでは痰について説明しました。

痰は基本的に何かウイルスや細菌に感染することで増えます。

では、咳はどんな時に出るのでしょうか?
大きく3つに分けられます。

①チリやホコリなど外気から吸い込んだ時

②痰はど気道内の異物を体外へ取り除こうとする時

③気道に炎症がある時

①と②はからだの防御反応なので健康な人でも見られる反応ですが、③は適切な治療や対処が必要です。

また咳には、痰を伴う湿性咳嗽、痰を伴わない乾性咳嗽があります。

湿性咳嗽には以下のような病気があります。

•風邪
・インフルエンザ
・気管支炎
・気管支拡張症
・肺炎
・肺水腫
・副鼻腔炎(ちくのう)  など

また、乾性咳嗽には以下のような病気があります。

・気管支喘息
・間質性肺炎
・肺結核
・気胸
・肺癌
・喫煙者
・心因性(緊張など)  など

普段の生活習慣が大事

痰や咳は思っている以上に体力を奪います。十分な睡眠を取りましょう。
また、栄養バランスを考えて食事に気を使いましょう。水分補給も大切です。

乾燥は細菌やウイルスに感染しやすいので加湿器などを使って室内の湿度を保ちましょう。
外ではマスクをつけるのも乾燥の対策になります。

さらに、生活環境から受ける刺激も咳や痰の原因になります。
例えば、自動車の排気ガス、工場などからの排煙、粉塵や喫煙なども影響しますので注意しましょう。

今回は咳と痰のメカニズムを中心にお伝えしましたが、疾患については紹介程度です。

また、疾患についてや肺などの呼吸器の解剖、生理学についても書きたいと思います。

お読みいただきありがとうございます。

積土成山
岩瀬 勝覚