見出し画像

イプシロンデルタ論法の定数倍を許容するかどうか

少し前に,ツイッター上で「ε-δ論法を考える際,δの取り方は(定数)×εを許容するかどうか」みたいな話題が上がっていた.これらは同値だから本当はどっちでもいい.けれども,テストだったりそういう場面では許すのかどうなのかみたいな問題があるらしい.


定数倍を許容するメリット

  • デルタの取り方に余計な工夫をしなくて済むため,初学者にとって楽

  • (本質的には同じことを理解していれば)イプシロンに都合の良いデルタを持ってこれることが重要だと改めて気付ける.

  • そもそも暗黙の了解として許している教科書はたくさんある.


許容しないメリット

  • 初学者にとって余計な混乱を防ぐことができる.

  • 定義に基づいているのは一応こちら.


結局どっち?

私は許容派である.ただ,手放しに定数倍を許すのではなく,学生側としては同値である証明がしっかり理解できればいいのではないでしょうか.

同値であることの証明

$${c \in \mathbb{R}_{++}}$$とする.($${c}$$ は正の定数ということ.)
また,$${\{a_n\}}$$ を実数上の数列とする.
このとき,以下の主張は同値である(自然数Nは$${\epsilon}$$に依存していることを強調するために$${N(\epsilon)}$$と表記している.)

(1)

$$
\forall \epsilon > 0, \ \exists N(\epsilon) \in \mathbb{N}  s.t. \ [n \geq N(\epsilon) \Rightarrow |a_n-a|< \epsilon]
$$

(2)

$$
\forall \eta > 0, \ \exists N'(\eta) \in \mathbb{N}  s.t. \ [n \geq N'(\eta) \Rightarrow |a_n-a|< c \eta]
$$

証明といえど,どこが条件で何を示すのかが分かっていれば簡単な証明となっている.(混乱を防ぐためにイプシロンの文字を変更している.)


まず(1)ならば(2)については,今(1)が成立していると仮定している.ここで適当な$${\eta>0}$$を取ってくる.$${\epsilon>0}$$には任意性があるため,$${\epsilon=c\eta}$$とすれば(2)が成立する.$${(N'(\eta)=N(c\eta))}$$

次に(2)ならば(1)については,今(2)が成立していると仮定している.ここで適当な$${\epsilon>0}$$を取ってくる.$${\eta>0}$$には任意性があるため,$${\eta=\frac{\epsilon}{c}}$$とすれば(1)が成立する.$${(N(\epsilon)=N'(\frac{\epsilon}{c}))}$$

以上より同値性が示せた.おしまい.

まとめ

イプシロンデルタとか言ってるから関数の収束とかで証明を書けばよかったのだけど無意識に実数列でやってしまったね.やることはほとんど変わんないから別に問題ないんだけどその方が親切だったかなって感じはする.読者は初学者を想定して書いたから,証明は丁寧に記述したけど,論理記号がちょっと難しかったかなって思っている.これに関しては他の記事なり教科書なりを参考にしていただいて,1週間ぐらいにらめっこしてれば頭に入ってくると思います.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?