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バカ公園の漫才「見える」

(バカ公園・花)

「いきなり重たい話なんだけどさ、俺の父ちゃん20年前くらいに死んじゃってて」

『あ、そうだったんだ?』

「うん。俺がまだ小っちゃいときに死んじゃったからさあ。もし今生きてたらどんな感じだったのかなーって、考えるときがあるんだよね」

『あー、でも、お前のお父さん元気そうだよ?』

「...え?どういうこと?」

『いや、だから、お前のお父さん元気そうだよって』

「いやいや、どういう意味?父ちゃんもう死んじゃってるんだって」

『あー、そうか。死んじゃってるんだもんな』

「え、何?何が言いたいの?」

『だってお前のお父さんずっとそこに居るからさ』

「...は?」

『そこに居るのお父さんでしょ?』

「え!?お前なに、もしかして“見える”の?霊とか」

『うん。見えるよ』

「初耳だわ!え!?お前霊感あったの!?てか俺の父ちゃんそこに居んの!?」

『うん。ずっと居たよ』

「え、いつから?」

『俺と初めて会ったのっていつだっけ?』

「高校2年の春だろ」

『そん時から』

「マジでずっと居るじゃん。なんで教えてくれないんだよ」

『いや、オバケとかじゃなくて、本当にお父さんだと思ってたからさあ』

「本当の父ちゃんでもおかしいだろ。なんでずっと息子に着いてきてるんだよ。過保護かよ」

『過保護なんだなって思ってた』

「父ちゃんだと思ってたんなら挨拶くらいしろよ」

『友達の親ってダルいじゃん』

「なんだお前。いやそうじゃなくて、え、俺の父ちゃんそこに居るんだ?」

『うん。居る居る』

「そしたらさ、話したりとかって出来るの?通訳みたいに」

『うーん、会話とかは出来ないけど、何してるかとかは見えるよ』

「...いま俺の父ちゃんどんな感じなの?」

『なんかねー、カナリアイエローのセットアップ着ててー、』

「え?」

『蝶ネクタイしててー、』

「は?」

『涙が悲しみを溶かして溢れるものだとしたらその雫をもう一度飲み干してしまいたい、って言ってる』

「俺の父ちゃん“ダンディ坂野のカッコしてサウダージのBメロ歌ってる”の???」

『あ!』

「何!?」

『いまサビに入った!』

「サウダージの進捗報告しなくていいよ」

『え?...へ~、そうなんだ~』

「今度はなんだよ?」

『いやなんか、お前の小さいときのエピソード話してるよ』

「え~マジ!?」

『ふんふん、へ~、そんなことあったんだ(笑)』

「ちょっと父ちゃんなに勝手に喋ってんだよ~!?やめろよ~!」

『お前小学校のとき(笑)』

「やめろって~!」

『お子様ランチ頼んで(笑)』

「恥ずかしいって~!」

『日本国旗だけ食べたらしいな(笑)』

「そんなエピソード無えよ!!!!」

『えっ』

「それ俺じゃねえよ!」

『違うの?』

「てかそんな奴いねえだろ!」

『あ、そうなんだ』

「え、じゃあ何!?ココに居るの俺の父ちゃんじゃなくて、知らんオジサンの霊ってこと!?」

『そうかもしれない』

「おい急に怖くなってきたよ~!なんだよコイツ~!」

『あ、でも悪いヤツじゃないみたいだよ』

「え~?」

『こないだ目の前にハトのフン落ちてきて、ギリセーフだったらしいじゃん』

「え!あった!そんなことあった!」

『それ、このオジサンが守護したから避けれたらしい』

「あ、そうなの!?」

『財布落とした時にすぐ戻ってきたでしょ』

「そう!すぐ戻ってきた!中身も全部無事だった!」

『オジサンが警察に届けたらしい』

「直接とどけろよ!俺に!」

『丸亀製麺行ったらいつもデッカイかしわ天あるでしょ』

「ある!デッカイやつ!絶対あるからそれ取っちゃう!」

『オジサンが2つのかしわ天くっつけてるらしい』

「それはグッジョブだな。グッジョブだなじゃねえよ」

『いいじゃん、かしわ天デカいんだから』

「釣り合いが取れねえだろ。ダンディ坂野似のオジサンが憑いてるんだぞ」

『いいじゃん、ダンディ坂野が憑いてるの面白いから』

「いやもう怖いよ~。祓ったりできねえの?」

『流石にそんなこと出来ないよ』

「え~~~。ちなみにオジサンいまどんな状態?」

『見つめあった私は可愛い女じゃなかったね せめて最後は笑顔で飾らせて、って言ってる』

「サウダージ2周目いってんじゃん。1番のAメロじゃん」

『まあイイじゃん。実害は無さそうだし』

「まあそうか~。いっこ聞いていい?」

『ん?』

「オジサンは、こう、どこにいるの?浮いてる?背後にいるの?」

『今は後ろにいるね』

「あ、そうなんだ」

『で、なんか、両手で輪っかを作ってて』

「うん」

『その輪っかで、』

「うん」

『お前の首元を包んでるわ』

「いや首絞めるつもりじゃねえか、いい加減にしろ」

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