僕はその足で煉獄さんが表紙のノートを買いに走っていた

 テレビ東京で放送されている『あちこちオードリー』の一周年を記念した配信ライブ「あちこちオードリー開店1周年パーティー~春日の店、今夜は完全予約制ですよ!~」を視聴しました。パンサーの向井だけがゲストという、一見すると角度が入りまくったブッキングで、面白くなるのかなと思ったのですが、具体的な配信内容については、外部に漏らすことを禁止という、ノブロックことプロデューサーの佐久間宣行から直々にお達しが出たので、向井が書き貯めている反省ノートに焦点を当てたことと、向井が直近で『鬼滅の刃』の劇場版「無限列車編」を観に行ったくらいしか話すことは出来ないのですが、大木を切る時のチェンソーを当てる時の角度だったらめちゃくちゃ効率が悪いくらい角度が入った組み合わせのこの配信は、向井の生きざま、いや、これから何十年も向井がもがいて芸能界で七番のセカンドとして死んでいくさまを見守っていくことが楽しみになるほどの足掻きっぷりを目に焼き付けることが出来、向井のことが少し好きになったことと、こんなにもがいているのを知ると、『有吉の壁』で体を張っているパンサーを見ても、ちょっと笑いが少なくなってしまうんじゃないかなと心配になりました。
 口外禁止とは言え、そこは売れっ子の三人のため、ゴシップ的なトークや悪口などではなく、単に、情緒や行間、文脈を抑えていないなどしたら、間違って伝わったら、面倒くさそうだなという類だったのも、安心して笑えたところです。
 あくまで、向井の反省ノートに焦点を当てた企画で二時間以上配信された、今回の配信で時が経つにつれ、黒くて分厚い反省ノートを何冊も持ってスタジオに登場した瞬間は、幻影旅団の団長が<盗賊の極意(スキルハンター)>を発動させたようでしたが、最後には、机の前に反省ノートを重ねて置いて悶えている姿が、江戸時代の拷問の石抱を受けている人みたいになっていたくらい、向井はぼろぼろになっていったのですが、その姿に、仕事の向き合い方含めて、反省をテーマに、ぶん殴ったり、受け身を取ったり、感情を爆発させたりするオードリーと向井らの生々しいやり取りが刺さる刺さる。年齢が近いこともあって自分を重ねて見てしまいました。
 若林の『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』の文庫版に、若林に向けた手紙のような名文の解説を書いたDJ松永は、そのなかで「俺は誓いました。あなたのように生々しく生きることを。」と書いていたけれども、まさかこの生々しさレースに、向井が参戦し走り去っていくとは。
 若林が現在42歳、向井が34歳であり、その差は8年、自分と同じようなことを反省する若林に向井が、あと、少なくとも八年こうなのかよと、咆哮する様に腹を抱えて笑いながら、劇場版のラストの炭次郎の嘆きとリンクさせて泣けてしまった。そして、とある番組の収録を受けて、もうだれも死なせないと書かれた言葉は、責務を全うした炎柱の煉獄さんだった。まさに、芸能界こそが無限列車であるという現実をむざむざと突き付けられてしまい、配信を見終わった後は体と脳みそが火照り過ぎて、煉獄杏寿郎が表紙になっているノートを買って反省ノートにするために、ツタヤへと走っていきました。
 手に入れて真っ先にマジックペンで、値打ちをこくな!と書き殴りました。

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