太田と伯山、あと岩井

 講談師の六代目神田伯山が、TBSラジオの『爆笑問題カーボーイ(2020.2.19)』にゲストとして出演した。バラエティ番組でも共演し、お互いのラジオ間でもいじりあっていた爆笑問題と伯山という信頼関係が成立している二組のラジオが、面白くないはずがなく、このことだけでも紙幅を埋めることができるほどに笑ったのだが、実はハライチの岩井がその様子を見に行っていたことが、TBSラジオ『ハライチのターン!(2020.2.29)』でのトークにて明かされた。
 「厄介そうなゲストを呼んだ時の爆笑問題さんの立ち回りを、おれはすっごい見たいからさ。」
 岩井は見学に駆けつけた理由をそう話していたが、芸人としての嗅覚に基づいた行動が産み出したこのトークは、爆笑問題と伯山のバチバチなやり合いを振り返りながら、爆笑問題への思いと愛、伯山への羨望のような感情、それらを全てひっくるめて笑い話になっているという岩井のバランス感覚と話術が結集したものとなっていて、相方である澤部の相槌も含めて極上な時間だった。
 最近の『ハライチのターン!』でのもう一つの大きなトピックと言えば、ダブルチーズバーガー論争だ。この論争は、マクドナルドではダブルチーズバーガーが一番好きだという澤部の発言に、岩井が「意味が全く分からない」「チーズバーガーを二段重ねしてるだけじゃん」とケタケタ笑い続けたことに端を発するものだが、翌週には、当然のごとく、この岩井の傍若無人とも取れる態度を見逃せないダブルチーズバーガー派リスナーからのメールが殺到、何通か読み上げられるも、どんな主張も岩井には刺さらない。その中での「チーズバーガーは一個140円、ダブルチーズバーガーは一個340円。チーズバーガーを2個買った方が60円お得」という衝撃の事実が発覚した瞬間、笑い転げてしまった。
 ダブルチーズバーガー派のことを笑い続ける岩井に、澤部は「ダメだ、もうこいつとマックの話できないよ!」とさじを投げる。こんな無意味で愛おしい論争を数週にわたって聞けるのが深夜ラジオの醍醐味だろう。
週に十数本の深夜ラジオを聞いているが、今は『ハライチのターン!』が一番好きだ。二人のトークの題材は、日常に根付いたミニマムなものが多く、お笑い芸人によるすべらない話というよりは、友達から聞くめちゃくちゃ面白い話が持つ楽しさと優しさ、心地よさに満ちている。もっと聞きたいのに、という気持ちにさせられる一時間という短さも絶妙だ。どこか生活が浮ついてしまう日々の中、そんなトークを聞いてみてはどうだろうか。

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