菓子パン作りをやめたら、子どもの入園6年目にして初めて保育参観に行けたパン屋の話

パン屋は長時間労働が当たり前。一日の労働時間は最低12時間、15時間くらいになることもしょっちゅう。体力と気力と向上心と…なんて、自分にできる以上のことをてんこ盛りに自分に期待しつつ走り続けないとやっていけない、そんな悪しきサイクルに自分もはまってました。

材料にこだわり、食材には健康を求めながら、自分自身の時間の使い方は顧みない、というのはつくづく片手落ちだったと思う今日この頃。疲れたら休むのは生き物としては当たり前なのに、自分が疲れていることに気づけないという状態で…。2018年末に、なかなか治らない風邪をひいて、咳に苦しみながら手に取ったのが『捨てないパン屋』でした。

『捨てないパン屋』は、広島のブーランジェリードリアンを営む、田村陽至さんの本。パン屋の3代目に生まれ、パン屋を継ぐことになって夜中から翌日夕方まで働き、菓子パンに総菜パンなどなどあらゆるパンを作っていたけれど、それに疑問を持ち、フランスを一年かけて旅し、薪釜を作り、5種類くらいのシンプルなパンのみを焼くようになったお話。

そしてそのことによって、奥さんとたったふたり、それも一日8時間労働でやっていける店を作ることができたお話。酵母は自家製のみ。粉はビオのみ。しっかり発酵させて消化にも負担の掛からない、一生食べ続けたいと思わせられるパン(取り寄せて、あまりのおいしさに衝撃を受けました)。

「ああ、菓子パン、いらないね。」本を読んで、心底そう思いました。菓子パンといっても、うちの店ではバターもショートニングも使わず、カスタードも有機豆乳と甜菜糖とオーガニックのバニラエクストラクトを使って…、と、素材にはこだわっていましたが、それでも常食して良いものとは思っていない、時間もかかる、仕入れる素材も多い。

そこで2019年の年始から、クリームパンもメロンパンもすっぱりとやめ、沢山揃えていたベーグルも種類を絞り込みました。それだけで、菓子パン生地、クリームやメロンパンに使うクッキー生地の仕込みがなくなり、ドライフルーツなどなどの在庫が減り、食材を収納していたスペースが空いてきて、気づくと自由になる時間も増えていました。

「なるほど。「捨てないパン屋」に書いてあることはホントだった!」というわけで、息子を2014年に1歳未満で保育園に預け始めてから初めて、保育参観に行けたのが2019年4月でした(午前10時スタートの保育参観というのは、パン屋的には「とてもとてもムリ!」だったのです。それが今年は、焼き上がりを見届けてから行けるなんて)。

今年度から年長さんの息子。未満児クラスの娘。家ではメチャクチャだけど、保育園ではちゃんと「社会人」していて、しっかり自分の居場所を作っている姿を見ることが出来ました。毎年参加出来ている人にとっては、保育参観なんて何でもないかもしれないけれど、私はひたすら感慨深かったなぁ…。後日、副園長に感想文を送り付けたくらいです(笑)

「菓子パンをやめたら売り上げ落ちるかも」そんな心配も杞憂でした。そもそも1~2月は売れない月で、「まあダメもとだね」くらいに思っていましたが、菓子パンの代わりに、売りたかった食パンを買って下さるお客様が少しずつ増え、仕入れは最低限なのでかえってゆとりが出てきたのです。

そんなわけで、部屋が片付き始めるともっと片付けたくなるような心境で、「やっぱりドリアンさんを訪ねてみよう。そしてこれからの店について考える元種みたいなものにできればいいね」ということで、行ってきました。広島子連れ研修旅行。

ドリアンさん見学のお話は次回です!

satomi

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