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パン屋と環境問題

前回から、時間が空いてしまったけれど、予定通り「パン屋と環境問題」のことを書きました!


「食べ物が、一番の環境問題じゃないか」
前回まで書いてきた、ブーランジェリードリアン田村さんの、お父さんの言葉として、著書「捨てないパン屋」の中で紹介されている言葉。
ほんとに、そうだと思う。子育てしていても、子どもという「自然」に対して、やはり一番気を使うのが食べ物。子どもの身体を作っているのは毎日の食べ物なのだから。特にパン屋は、食べ物を作るのが仕事なので、お客様の身体という「自然」を、自然なままに生かすものを作りたい、と思う。

そしてその意識を広げて行けば、もう少し大きな問題にぶつかる。

パン屋と環境問題、と考えると、大きくは3つの問題があると思う。
ひとつは、食品ロス。
2つめは、素材。どのようにして育てられたものを仕入れるか、ということ。
3つめは、包材。

食品ロスについては、私もその現場を見てきた経験がある。学生時代、某大手のパン屋でアルバイトをしていた。授業が終わってからなので、だいたい夕方から夜まで。すると、最後の仕事は「捨てること」。もう、本当に山ほど捨てた。20年ちょっと前の当時は、まだ持ち帰りも許されていたので(今は衛生上とかいろいろな理由で、できないと思うけれど)、家族に持ち帰ったり、ひとり暮らしの友人に食べてもらったりしていたが、それでも「救出」できないパンたちは、大きなゴミ袋につぶしながら詰め込んで…。

あの罪悪感は、ちょっと忘れられない。
あんなに閉店間際まで焼き足して種類をそろえる必要はあるのだろうか。ロスを減らすためには、「種類を減らす」「作る数を減らす」当たり前だけどこれしかない。今、うちの店でも実験中だけれど、「種類を減らす」効果はすばらしい。

そして素材。パン屋の主な素材は、言うまでもなく小麦である。海外から船で運ばれる小麦には「ポストハーベスト」つまり、輸送中に虫がつかないようにするための薬が撒かれている。これで「パン屋病」になるパン職人は沢山いるのだ(湿疹とか鼻水とか)。私だって小麦アレルギーの診断を受けていた時期があったけれど、マクロビ食に替えたり、国産小麦しか食べなくなったら、いつの間にか小麦を食べても何ともなくなっていた。

小麦を選ぶときは、最低でも国産、できれば地元産、さらにできれば無農薬。そして最上級が肥料も与えない自然栽培、だと思っている。

今、うちのパンには地元・長野県産小麦を100%使用し、そのうち10%が自然栽培小麦だけれど、なんとかして自然栽培小麦を100%に近づけたいと思い、すると商品も大きく見直す必要を感じて、製法などいろいろ検討中。

地元で自然栽培の小麦を作ってくれる人に出会えるなんて、運命的というくらい希少なことだと思うので…。実はそれ以前にも、幾人かの農家さんにお声かけして、無農薬での小麦栽培をお願いしたのだが、中には「無農薬でやるのはいいけれど、もし小麦に病気が出たときは買い取ってほしい」なんていう人もいた。もしかしたら、そんな意見の方が「常識的」なのかもしれないけれど、やはり食べる人の健康や環境を一番に考える人と、一緒に歩みたいなと思ったのだ。

そして包材! 悩みの種の包材…。どうして日本ではこんなにビニール袋が必要とされるのだろう。パンをビニール袋で個包装して、さらにビニール袋に入れる。「ラクだから」「衛生的だから」。潔癖症な国民性も影響してるかな。でも、そのせいで街が汚れたり、海が汚れたりしても、その方面には潔癖症は発揮されないのだろうか。

これに対しても、あの手この手で呼びかけている。今は乾燥が大敵のベーグルを扱っているので、個包装は欠かせないのだけれど…。より良い個包装素材が出てきてほしい。うちの店では、持ち帰り用ビニール袋は撤廃して紙袋に替え、手提げが欲しいお客さまには、リサイクル紙袋で対応している。この写真のドリアンさんエコバッグなんて、ステキでしょう? これも販売してます! つい笑いを誘う効果もあり。持ち歩く楽しさありのエコバッグを、あなたもぜひ。

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