馬楽の時間 191

 人馬一体。とてもとても我々ごときが到達出来る境地ではない。超一流の人馬にのみ得られるもの。と、思い込まされているのではないでしょうか。
 私はそうは思いません。
 初めて馬に乗った人が「止まって下さい」と馬にお願いし、馬がそれを理解し停止したとしたら、それは人馬一体です。だって人と馬が理解しあったのだから。
 少し前、馬は意思も感情も持った動物だと話しました。単なる動く物ではありません。もちろん機械ではありません。その意志と感情にも働きかけて初めて馬術です。余りに当たり前のことで、忘れてしまいます。ぼんやりしてたらだめですね。
 そこで扶助の話です。例えば前へ出る合図を出したとします。脚を腹に当てた瞬間前に出てくれると最高ですね。目指すのはこれです。ところが、馬は生き物、そう、意思も感情もあります。気分が悪いとパッと反応しないかもしれません。そもそも、脚が腹に当たったことを認識し、これは前に出る合図だと判断し、四肢に動けと指示があって初めて前へです。
 時間のズレがあるんです。だから合図を出して待つんです。
「今合図を出したよ。分かるかい?」
 もし反応してくれなくても責めちゃダメです。自分の合図の出し方に問題は無いかを考えるべきです。一番大事なのは準備です。人と馬がお互いに準備するんで。人は「今合図を出して、馬は反応出来るだろうか?」。馬は「何か合図が来そうだな」
 お互い良い準備が出来ているとパッと反応できます。人馬一体です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?