馬楽の時間 144

調教
 馬術は何千年もの歴史がある。人の側にはいつも馬。偉人を称えるにも、騎馬姿が多い。ナポレオンも楠木正成も。騎乗技術、調教術も多くの文献があり究めつくされている。なのに私はそこに割って入ろうとしている。
 図々しいにも程がある。「分かっちゃいるけどやめられない」
 折角70年以上やってきたんだから、爪痕を残したい。
 さて、やっと馬上の人になった。ここでもし馬があせって、とっとと前へ出るようなら、補助者には引き続き曳馬をしてもらうのがいい。騎乗者は手綱を引かない方がいい。競馬のパドックではそうしている。アメリカの競馬では側に馬を寄せてそうしている。その方が馬が落ち着くようだ。学生を指導していた時もそうしてみた。落ち着く。どうしてなのかは分からない。
 騎手はひたすら声をかけ愛撫する。この愛撫は、愛撫の役割と、馬上で騎手が動いても危害を加える為ではないと、馬に知ってもらう役割がある。
 想像して下さい。草食動物の馬が(つまり、常に肉食動物から狙われている)自分の背に生き物を乗せる。いつガブリとやられるかの恐怖。あり得ないでしょう?馬の背に乗るのはあり得ないことなんです。
 騎手と補助者が雑談を楽しむのが最上の調教。二人がリラックスすると、馬にもリラックスの可能性が生まれる。勿論補助者も愛撫し声をかける。
 そんなことから、騎手より技術が上の経験豊富な補助者が理想中の理想。
 実は私は、そんな補助者をやりたい。
 グリ君はどうだったかなあ?ゆるゆると常歩が出来れば、今日はもうお終い。状態がいいからと欲を出し墓穴を掘ることが多いのでご注意。

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