馬楽の時間 95

馬術部物語
「昨日3回 今日また5回
  明日は何回  落ちるやら」
「早く来た者から並べ」と大きな声。
 朝、厩舎に早く来て作業をした者から並ぶ。そしてその日の練習馬が告げられる。急いで馬装し馬場へ。
 部班練習。まず「飛び乗り左右5回」。私は左は出来るが右が出来ない。「残った回数3倍して馬場走っとけ」。放課後はマラソン大会。畜大の馬場は広い。
「鐙上げ」「速歩」。絶対無理。
 私は裸馬に乗っていたので、バランスがいいと思ったが大間違い。裸馬では足でしっかり腹を巻いて乗っていた。ところが鞍が付いている、腹を巻くと、太ももや膝の内側がすれる。あっという間に血だらけ。「脚でつかまるな」と怒鳴られるので、あちこちでバタバタと落馬。手でつかまるなんてとんでもない。落ちたら、またすぐ飛び乗らなければならない。下で怒鳴ってる上級生たちは、1年目が落馬すると満足気に見えた。そんなことはないと思うが。
 練習が楽しいとは思えなかった。ただ何だか特別なことに挑戦している優越感はあった。高校時代の仲間にも誇れる気がした。後々知るのだが、畜大馬術部は過去に何度も日本一になっていた。知ればまたやらねばと思った。

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