馬楽の時間 132

調教。
 馬(グリ)を丸馬場に放します。グリ君はまた走り回ります。静観。
 前回よりは荒っぽくない。静観。今日はレベルを上げるつもり。
 手前を一定にします。それだけ。手前を変えようとしたら、進路を塞ぎます。自分が移動するなり、長鞭を横に出すなり。何度かやると、グリ君は理解しました。「そうか、手前を変えちゃだめなんだ」
 3分。進路を塞いで手前を変えます。3分。
 とにかく虐められないと分かると落ち着いてきます。
 酷い馬は、前回の、馬場の外へ出る作戦を続けます。急がないこと。ここを時間をかけて丁寧にやること。その方が良い結果が得られます。力づくは絶対ダメ。短時間で、ある程度の形にするのが上手いと思うのは大間違い。
そんなもの馬術じゃありません。馬術は「術」です。
 さてグリ君、何もせず静観していると常歩になりました。大正解。静かに前方へ回ります。待ち伏せです。グリ君は止まりました。「ハァーイ」と言う感じで片手を上げ、正面から静かに近づきます。グリ君はまだ不安だろうと思います。一遍に行かないで、止まって様子を見て、また近づきます。
 グリ君の前に到着。上げていた手で顔を愛撫してあげます。
「よーしいい子だ。偉いぞグリ君」
 調教大正解。褒めて褒めて、おしまい。いい感じで終わるのがコツ。
 上手くいかなかったら、レベルを下げてでも褒めて終われるようにします。これが達人の技。馬と信頼関係を作るのが調教。

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