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#15 2つのBA ーDX推進の実際⑤ー

◆DX戦略の策定 4

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前回の振返り
 
「DX推進活動の戦略」の立案についての方法論を考えています。前回はビジネス環境(エコシステム)の可視化によって、ビジネスの構造を明らかにすることについて述べました。そのためのテクニックがモデル化です。

今回は
 戦略策定のための第二のステップである「目的とする変革によってもたらされる、顧客や社会の価値を想定する」について考えを進めて行きます。
 このステップは言い方を変えると「ビジネスの望ましい将来状態を考える」ということになります。
 具体的な手順は以下の通りです。戦略立案のステップ1でビジネスの現状を調査、分析しました。その結果がビジネスを実行する上での要求、つまり「ビジネス要求」としてまとめてあるはずです。これが将来状態を考える上での主要インプットとなります。

ビジネス要求の源泉
 ビジネス要求にはその発生元の違いから3つのタイプがあります。
1.経営視点
 一つは経営の視点から出てくるもので、経営方針やマーケットの変化、投資の優先順位などの経営情報を元にした判断から要求されます。
2.現状の課題
 2つ目は現状遂行中のビジネスの問題点から課題を抽出し、それを改善して行きながらビジネスが新しい価値を創出することを狙います。これはこれまで行っていた、IT化(業務の自動化)やBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)の延長線上にあるものですから、解りやすいですね。ただしDXという錦の御旗を掲げるのであれば、単なるIT化や業務プロセスの改善に留まるのではなく、トランスフォーメーション(変革)を伴う必要があります。つまり課題を解決することで、新しい価値を顧客に提供し、社会的な影響を及ぼすことを可能にするものである必要があります。例えば、自動車を買って自分のものとして利用するのではなく、手軽にシェアすることで必要な時に必要な時間利用してその時間分の料金を支払うというビジネスモデルがあります。この会社はご承知のように元々各地に駐車場を設け、機械で管理するというビジネスを展開していましたが、空いている駐車場があるのに目を付けこの有効利用と、並行して行っていたレンタカービジネスの隙間を埋める新しいビジネスモデルでこれまでに存在しなかった価値を社会に提供しました。これは既存のビジネスが持つ資源や知見を掘り下げることで可能になるトランスフォーメーションです。
3.新規ビジネスへの挑戦
 最後に、 これまでの常識を覆す全く新しい価値を社会に提供する、デジタルの力を利用しビジネスにイノベーションを起こすための挑戦から発生する要求です。
 さてこのようなイノベーションを起こすための方法には、様々なアプローチがあります。これらについては多くの書籍が出ていて、それぞれがユニークで経験に支えられたものになります。このイノベーションを起こす活動からアウトプットされる沢山のビジネス要求があります。これらの要求を整理し優先順位を付け管理します。

ビジネス要求の理解
 上記3つの活動によって明らかになったビジネス要求を分析し、適切な将来のビジネス像を設定します。
 もちろんその中では、どのようなビジネスを展開するのか、その結果どのような価値を顧客や社会に提供するのか、を明らかにします。また、理想とする将来状態に近づくために、何をなすべきなのかを考えます。これが戦略の骨格を形作ります。
 戦略の骨格とは、以下の11個の要素で成り立ちます。ここでは各要素の詳細については触れませんが、各種の要求からこれだけの情報を得ることが必要となります。
1. ビジネスのゴールと目標
2. ソリューション空間のスコープ
3. 制約条件
4. 組織構造と組織文化
5. 能力とプロセス
6. 技術とインフラストラクチャー 
7.ポリシー
8. ビジネスアーキテクチャ
9. 内部資産
10.  前提条件の特定
11.  潜在価値

次回は
 ビジネスアナリシスの戦略立案の3つ目のステップ「遂行しようとするDX推進活動のリスクを見積る」について考えて行きます。


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