ジャマイカの政治ーレゲエ視点で紐解く闇と光ー

こんにちはBad Gyal Marieです

ジャマイカ在住11年目のセレクター兼プロデューサー兼ママです

このブログでは、ジャマイカと音楽、私生活についてダラダラ書いていこうと思います。

今日はジャマイカ総選挙でした。過去にロッカーズチャンネルで書かせて頂いた4年前のジャマイカの政治に関する記事を掲載しようと思います。



4年に一度の「ジャマイカ総選挙」が行われると発表されたのが、1月31日。ジャマイカの街中で「あ〜、選挙か〜」と、人々が不満の声を漏らしたのは言うまでもありません。

投票日は2月25日。
約1ヶ月間の怒涛の選挙期間のはじまりでした。

日本人「あぁ選挙か〜(めんどくさい)」。
ジャマイカ人「あぁ選挙か〜(死人が少ないといいな)」。

ロカチャン読者の皆さん、こんにちは。
今回は、先日荒れに荒れて終結したジャマイカの選挙とその背景について書かせて頂こうと思います。ところで読者の皆さんは、政治や選挙に興味はありますか?

多分そんなに興味ある人はいないと思うんですよね。

まぁぶっちゃけ、選挙って別に楽しいもんでもないしね。特にこのレゲエというREBELな音楽が好きなロカチャン読者の皆さんの中には、日本の政治に対して不信感や不満を募らせている人も多いでしょう。最近はネットやSNSの普及もあって、色々な人の意見が聞けたりもするし、なかには「あ〜めんどくせ〜な、投票」という声や、「結局どこに投票しても一緒でしょ」という不満の声もあるでしょう。

しかし、ここでジャマイカ国民が漏らした「あ〜選挙か〜」は、そういったある種の平和な不満とは全く異なるものなんですね。

実際、キングストンではこんな声をよく聞きました。

「今回の選挙、人が大勢死ななければいいね」と、噂する近所の人たち。
「選挙期間はゴンショット起きるかもしれないら早く帰ってきなさい」 と、子供に言うお母さん。
「うわ〜選挙期間中だから俺のダンス来月に延期するわ」という、イベントプロモーター。
「彼氏が住んでるあのエリアには行けないから、選挙終わるまで会えないのよね」という、友人。
「選挙近くになったら危険だから田舎でのんびりするよ」という、近所のおじさん。


え? えぇっ!?
大勢死ななければいいって、選挙で何人かは絶対死んじゃうってこと?
ゴンショットってことは、選挙戦で銃撃戦が起こるの?
選挙期間中は、ダンスできないくらい危険なの?
行けない場所とかあるの!?
はい、ツッコミどころ盛り沢山ですよね。

でもこれが、ジャマイカの選挙なんです。この裏には、政治家と地域のギャングとの関係とか色々あるんですが、もうめちゃくちゃっすわ、この国の政治は。「日本の政治家は腐ってる!」とか言う意見も多いとは思いますが、この国の政治を知ったら、日本なんてほんとまだマトモに見えます。そのくらい狂ってます。

まあ、もはや酷すぎて笑える域に達しているので、いつも通りツッコミ入れながら紐解いて行こうと思います。「政治」と「レゲエ」の関係についても触れていくし、政治に興味のない皆さんも絶対笑えるので、騙されたと思って読んでみてください。

ジャマイカの政治、「オレンジ」と「緑」
まず説明しておきたいのが、この国は2大政党であるということ。

PNP = People National Party(人民国家党)
JLP = Jamaica Labour Party(ジャマイカ労働党)
*.1 実はこの他にも一応党があるんですが、誰も投票しないのでここでは無視。

この2つの政党には、それぞれシンボルカラーがあって、PNPは「オレンジ」、JLPは「緑」。また、シンボルサインもあって、PNPは「拳のサイン」、JLPは「ビクトリー(ピース)サイン」。さらに、PNPが「太陽や帽子を被った男性」、JLPが「自由の鐘」を党の象徴としています。

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象徴なんてどーでもいいわ、と思うなかれ。

選挙期間になると、支持する政党のシンボルカラーに身を包む人が急増。ジャマイカ全土でオレンジと緑が入り乱れます。

これが怖いんだよね。

後で詳しく触れますが、2大政党ってのは危険でね。なんせ2択なわけじゃん。2択ってことは2つに割れちゃうわけじゃん。結果、2つの政党を支持する人々の間で、なんらかの敵対心が生まれてしまうわけですよ。

なので、巻き込まれたくない人は、選挙期間中はオレンジと緑の「服」を避けるわけなんです。

まあ、言ってもピンと来ないと思うので、この画像をご覧ください。


PNPの集会の様子

画像3

JLPの集会の様子画像2



ちょっと怖くないですか? オレンジに身を包む集団と、緑に身を包む集団。なんか狂気を感じるのは私だけじゃないですよね。

……あれ、まだピンと来ない?

ではこの画像いってみましょう。ハーフウェーツリーで行われた、PNP集会の航空写真。

画像4


人すごっ!!!!!!!

集会っていうのは各党のキャンペーン集会で数万人が集まるんですが、まあ皆さんハイテンションでブブセラ鳴らして自分の政党を応援しているんですね。もし、この何万人ものオレンジの中に自分がうっかり緑を着て紛れ込んだら……。

ちょっとした敵対心でも、それが自分1人に向かってきたら恐ろしいですよね。

実際、私も選挙が決まったときに「うあ〜選挙か〜」とため息をついたんですが、それは買おうと企んでいた緑のスニーカーを諦めなきゃいけなくなっちゃったから。あと、綺麗なグリーンだった髪の毛を茶色に染め直しました。

それくらいシリアスなんですよね。
たかが色なんだけどね。

まあ「緑着れないって……罰ゲームかよw」と、こっそりとツッコミましたけどね。

今後、運悪く選挙期間にジャマイカ旅行が重なってしまった方は、ぜひ覚えておいてください。

選挙期間中、オレンジと緑は避ける!




金の力で票を買う、汚い政治家。


私がこの国の政治で1番驚いたのが、ほぼ全てのゲトーで、既にどっちの政党を支持するか決まっているという事実。

あそこはオレンジ、あそこは緑、とコミュニティごとに綺麗に分かれているんですね。選挙期間になると、政治家が各コミュニティを訪れてキャンペーンを行うのですが、やり方がエグいんですよ。

住民に各政党の色のTシャツやリストバンドを配布するのはまだ良いとして、コミュニティに食料を持って行って無料で配布したり、4年間放置していたくせにボコボコの穴だらけの道を急に直したり、さらには古い家を無料で建て直したり。

「それさ、選挙期間以外にもちゃんとやってあげればいいじゃん!」と、毎回ツッコミたくなりますわ。

もちろん、その見返りは投票なわけで、もろ金で票を買ってる感が日本の常識で言うと考えられないですよね。まあ、実際貧困になげくゲトーの住民にとっては嬉しいことなんでしょうけどね。

さらにエグい話もあって、それは先ほど写真でも説明した選挙の集会。各政党がリーダーと共にジャマイカの各教区やコミュニティをまわってキャンペーンをするんですが、すごい数の人が集まるんですよ。「どうして、ここまでたくさんの人が集まるのかな〜」と思っていたら、なんと無料でご飯がもらえるらしいんですね。

……た、確かに、生活が苦しい人にとっては、ご飯食べられるって嬉しいかも。

噂によると、大きな集会になるとケンタッキー1箱とか色々レベルもあるらしく、ここまで露骨だともう笑っちゃいますよね。大規模な集会では、各政党がバスを何台もチャーターして、人をゴッソリ集めて会場入りさせる。そして会場に来た人々のテンションを高めるために、お酒も無料で配布する。「やること汚ね〜な〜」と思いながらも、ご飯につられて集会に行く人々がちょっと可愛くて微笑んでしまいましたけどね。

しかし、こんな微笑ましいことだけではないんです。

この集会では、集団がハイテンションになって政党を応援するのもあって、毎回何かしら危険な出来事が起こるのは避けられないんです。喧嘩が起これば、寿司詰め状態の集会だと逃げ場がないのでパニックになって負傷者がでるし、今回もJLPの集会でギャングの発砲により2人が亡くなりました。

危険を伴うので、日本人の皆さんは興味本位で集会に行くのは絶対に止めて下さいね。まぁみんなは、タダ飯とタダ酒に釣られたりしないだろうけどさ。w

また、選挙期間中に危険が伴うのは集会だけじゃないんです。

住民が各政党の色に染まったゲトーに行くのは、たとえ反対政党の色の服を身につけていなくとも危険です。そしてさらに危険な場所が、PNP支持地域とJLP支持地域の境目。

支持する政党が違えばその境目が存在するわけで、そこが自動的に危険エリアになるわけなんです。私の旦那の出身地はマックスフィールドなんですが、あそこはもろPNP地域。でもマックスフィールドの下の方にローズタウンという地域があって、そこからTIVOLI、ダウンタウンまでがJLP地域になるんです。

選挙期間になるとマックスフィールドアベニュー沿いにはオレンジの旗が何キロにも渡って飾られるんですが、下の方へ行くにつれて道を隔てて反対側に緑の旗が飾られている地域が見えてくる。

道を挟んで「右がオレンジ、左が緑」という状況は、ただならぬ恐ろしさを感じます。

昔、ナニビルという地域に住んでいたんですが、あそこもナニビル側がオレンジ、道挟んで反対のトップレンジが緑、と綺麗に分かれていて怖かったな。

というのも、今では起こらないですが、昔はその道を挟んで撃ち合いをしていたという歴史があるからなんです。

誰が撃ち合っていたの?
何のために?

という疑問の鍵は、この国の政治の歴史にあるんです。ということで、次の章ではジャマイカ政治の最も黒い闇の部分に突っ込んでいきましょう。

2大政党の激しい戦いの歴史


2大政党は危険と先述しましたが、実はちょっとシャレにならない危険な歴史もあるんです。

「オレンジと緑を着るな」とか、「食べ物で人々を釣るな」」という次元じゃない話。

この記事、日本語で書いてるからいいけど、英語では書いてたら私消されちゃうんじゃ……ってのは冗談ですが、かなり突っ込んだ話をします。まあ、ここまで来たら、この国の腐った政治の根底を掘り下げてしまいましょう。

まず、この2大政党は1940年前後に立ち上げられ、立ち上げ当初から激しい戦いを繰り広げます。
今現在、計16回の選挙のうち「9回PNPが勝利」「7回JLPが勝利」という接戦(前回の選挙までの結果)。


1983年が全部JLPなのは、この年PNPが選挙をボイコットしたため
1940年代から、この2政党を支持する国民の間で争いがあったわけですが、それが1970年代に入ると更に激しくなります。

これは「ギャング」と「政党」が絡み出したのが原因。それを仕掛けたのは、もちろん政治家側。

各コミュニティで支持する政党があるというのは、先ほど説明しましたよね。政治家たちは、その各コミュニティのリーダー(ギャングのボス)に接触をはじめます。もちろんその地域の自分の党への支持を手に入れるには、DON(ボス)を味方につけるのが1番手っ取り早い。

DON率いるギャング達にとっても、政治家がバックにつけば犯罪も色々やりやすくなるわけですよね。
ジャマイカは昔から南米からアメリカ、ヨーロッパに輸出されるコカインの積み替え場所となっているわけで、特に80〜90年代はシャワー然り、コカインビジネスで儲けたギャング達がたくさんいた時代なわけで。

もちろんその犯罪で儲けた金の一部が政治家に流れていたという歴史もあります。

さらに酷いのは、銃をギャングに大量に流して、犯罪規模を大きくさせたり、その銃で他の政党の地域のギャングを攻撃させたのです。

つまり、「あっちの政党を支持するあいつらは殺しちまえ!」ってことであり、同時に「あっちの政党に投票するやつを1人でも多く殺して、投票数を減らせ!」ということ。

まるで子供の喧嘩のよう……正気の沙汰ではないですよね。

お世話になっている政治家に銃を貰えば攻撃するのがゴンマン。

「敵の政党を支持する奴らだし、元々気に入らない近所のギャングスタ達が相手だ、攻撃開始!」

「仲間が1人が死んだぞ、報復だ!向こうの奴らを10人殺そう!」

「よし、全員殺した! 次はこいつらの仲間のあの地域に攻撃だ!」

「また仲間が殺された! ムカつくからあそこにいる住民も殺しちゃえ!」

…..と、こんな風に争いはどんどんと拡大、激化。

なんと1978年と1980年の選挙は史上最悪で、この2年で800人以上が死亡したという記録があります。ここまで来ると政治家達も慌てるわけですよね。自分で蒔いた種なのに……バカだな。

で、この時代に各政党のトップにいたのが、マイケル・マンリー(PNP)とエドワード・シアガ(JPL)なんですね。マンリーはご存知1000ジャマイカドル紙幣の人であり、PNPの初代リーダーであるノーマン・マンリー(空港の名前にもなっている人)の息子。

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ちなみにこのノーマン・マンリーの従兄弟がアレクサンダー・バスタマンテという人で、この人がJLPの創始者。 なんと従兄弟同士がこの2大政党を作ったっていうのも驚きですよね。

画像6

で、そのバスタマンテに可愛がられていたのがシアガ。この人は悪名高いことで有名ですね。もう顔が見るからに悪いわ。(シアガ氏はこの記事を書いた4年前はご存命でいたが、去年89歳でお亡くなりになりました)

シアガの担当教区があのTIVOLI GARDENであり、最悪のギャング集団SHOWER POSSEに深く関わっていたのは、もちろんこの人なわけです。あのDUDUSの父JIM BROWNの葬儀にシアガが参列して、大変な話題になったんですよね。

あー黒い、まじ黒いシアガ。

ちなみにマンリーは、1997年にこの世を去っていますが、シアガは健在。現JLPリーダーのアンドリュー・ホルネスは長年このシアガの右腕だった人物で、あー未だこの黒幕がJLP操ってんだな、と恐ろしくなりますね。

この2人がリーダーだった1970年代後半から、シアガが首相になる1980年までが、荒れに荒れて最悪の時代だったわけですが、そんな状況を音楽の力で打開しようとした人がいます。

さて、それは誰なのか!? 次の章で詳しく触れてみましょう。



ONE LOVEコンサートの奇跡

1976年、マイケル・マンリーは「SMILE JAMAICA」というコンサートを開催すると発表。「争いが絶えないジャマイカに平和を」というテーマのコンサートでした。

マンリーと公私共に仲が良いとされていたBOB MARLEYがこのコンサートの主役として出演するというのも話題に。

だけどこのコンサートに出演することが決まるや否や、BOBに脅迫状や警告が匿名で届くようになります。そしてコンサート開催の2日前、リハーサルをしているBOBの元にJLPの過激派が襲ってきて発砲。
ウェイラーズのメンバーと共に銃弾を受けて負傷してしまいます。

それでもBOBはコンサートに予定通り出演しますが、そのすぐ後にイギリスに渡ってしまいます。その後2年間、BOBはジャマイカに帰ってくることはありませんでした。

1978年、BOBは「ONE LOVEコンサート」という、これまたジャマイカの平和を呼びかけるコンサートに出演するためにジャマイカに戻ってきます。実はこのONE LOVEコンサートを主催していたのが、TIVOLIのSHOWER POSSEの重要メンバーであるクロウディア・マソップ。

わざわざイギリスにいるBOBを訪ねて、「平和を取り戻せるのは貴方しかいない!」と出演交渉したんだとか。

まあいわば、前回はPNP主催のコンサートで、今回はJLP主催のコンサートだったわけですよね。これ、よく出演OKしたよな〜。だってまた襲撃される確率高いわけだし、今度は死ぬかもしれないじゃん。

「なぜ、帰国を決めたの?」と聞かれて、BOBは言いました。

「俺の命より、人々の命が大事だ」
そう。平和のためなら自分の命を投げ打ってでも出演することを決めたんですね。かっこいいな。

そして、それだけではありませんでした。このコンサートでBOBは後世の歴史に残る、有り得ないことをしでかすのです! それはBOBが「JAMMIN’」を歌っていたときでした。 

https://youtu.be/Reo5hD-dEYM

やっべ〜!!!
何回観てもやべ〜!!!!

BOBがもう神様にしか見えない。これぞ奇跡! これぞ平和!

PNP党首マイケルマンリーと、JLP党首エドワードシアガをステージに上げて握手させるって!! この2人、そしてこの2政党のために沢山の人が尊い命を落としてきたわけですよね。

もう争いはやめよう。みんな1つになれるよ。We Can Unite….

く〜っっ目頭熱くなりますよね。これぞ音楽の力! BOB MARLEY素晴らしい!!

しかしこの後ジャマイカが平和になったかというと……そうではなかったんですよね。先述したように、この後もジャマイカはさらに荒れて800人以上が死亡してしまったんです。BOBでもこの腐った政治体制は変えられなかったんですよね。

でもね、決して無駄ではないと思うんですよ。

だってこの映像を観て、私たちはこうやって感動させられているわけで。「平和って大事だな」って30年以上前の映像を観て感じさせられるって凄いことですよね。

そして2016年現在の選挙戦において、多少危険はあるとはいえ、かつてのように多数の死傷者が出ることはないし、撃ち合いもない。時代の流れと言ってしまえばそれまでですが、BOBの功績は無関係ではないと私は思います。

2016年総選挙


無事、2月25日に終結した今回の選挙(今年2020年は9/3に総選挙がありJLPが勝利しました)

今年もありましたよ、ドラマが!!

まずは先述したJLPの集会での発砲事件。死者2人。そして選挙前日に3マイルで行われたPNPの集会でも発砲事件。死者は出なかったものの負傷者多数。

いや〜集会で発砲事件起こるって、マジでありえないでしょう。

この流れで行くと、「あっちの政党についてるゴンマンだ!」となるんでしょうが、実は「相手側の政党を悪くみせるための自作自演じゃねーか」って噂も流れたりしました。真相はどうだかわかりませんが。

今回は、ポーシャ・シンプソン・ミラー(PNP)と、アンドリュー・ホルネス(JLP)の戦いだったわけですが、この2人が戦うのは2回目。前回の選挙でもこの2人が首相の座を賭けて争ったんですね。

アンドリュー・ホルネスは、ジャマイカ史上最も若い政党のリーダーでまだ43歳。若いな〜。気さくで温厚、音楽好きらしいですが、裏にあのシアガがついてると思うとあなどれないですね。

ポーシャはジャマイカ史上初の女性首相で通称「ママP」。彼女は庶民の味方って感じでPNPのイメージにぴったりだと思います。先日、毎年やってるSHAGGY主催のショーに行ったんですが、Ity&Fancy Catというコメディアンの時間にポーシャが現れてビックリ!

ポーシャのモノマネをしてたら本人登場! ってな感じだったんですがね、この内容がまたヤバくて。ミスユニバースの名前を呼び間違ったやつをパロってるんですが、実は今回の選挙でまさかのこれと似た事件が発生したんです。

2月25日夜9時すぎ。選挙結果が発表になりました。まさかの2議席差でJLPの勝利。今回はPNPの圧勝だろうと予想されていただけに衝撃でした。

私は、マックスフィールドの旦那の実家があるコミュニティでセット出してパーティーやってたんですが、JLP勝利の瞬間に大急ぎで片付けて撤収しましたよね。ゴンショット聞こえまくってたしね。まあ、住民はクールなもんで、「いや〜今夜ダンス行くなら、タワーヒルかティボリ(JLP地区)だなw」と、冗談飛ばしてましたがね。

「あ〜、JLPの勝ちか〜。まあいいや。明日にでもあの緑のスニーカー買いに行こ♪」と思ってたんですがね、まさかのその2日後ですよ。リカウント(投票数えなおし)になったのが。

2教区で数え直しになって、なんせ2議席差だったのでPNPが勝つ可能性が出てきた。

もう噂が噂を呼び、「俺はポーシャの従兄弟に聞いたんだけど、PNPが勝つって決まったらしいぜ」とか、一方のJLP地区の友達は「リカウントでPNPが勝ったらPNP地区に行って銃撃ちまくってやるぜ」とか(冗談ですがね)。

そんな騒ぎで、リカウント発表前はダウンタウンで戦車が待機してたりとか、せっかく選挙が終わったのに更に危険を感じるというカオスな状態に。まじでIty&Fancy Catのパロディ並じゃねーかこれ! と、ツッコミながらも不安な日々でした。

結果、やっぱりJLPの勝利。この騒ぎで死傷者も出ずになんとか終結。ふ〜。危ねぇ、危ねぇ。

しかし、やっぱり普通では終わらないジャマイカの選挙。何が起こるかわからないので、常に厳戒態勢でいようと心に誓ったのでした。

「レゲエ」と「政治」の関係
それでは最後に、絶対に外せないこのテーマ。「政治」と「レゲエ」の関係性をいってみましょう。
一見遠いところにありそうな政治とレゲエですが、実は密接な関係にあるんです。

えええ……! と思うでしょう。
でも良く考えてみると自然ですよね。

だってジャマイカに住んでたら、普通にレゲエを聴くわけで。で、もちろん良い曲が多いわけで。
ってことで、政治家にもレゲエファンが多いんですね。

政治家とレゲエの関係をいくつか挙げますと……

前述したシアガは、政治家になる前は実は音楽プロデューサーで1950年代に活躍していました。
その後、自分のレーベルをBylon Leeに売って、それが後のDynamic Soundsになったわけです。

数年前にPNPの元観光・エンターテイメント大臣のダミアン・クロフォードが、ボルトが「GAZA MI SEH」とツイートしたのに対し「Gaza Mi Seh Too 」とツイートしたのが話題になりました(*2)。

*2. GazaとはVybz Kartel率いる音楽集団のこと

また、このクロフォードとダリル・バズ(JLP)が、サウンドクラッシュをしたんですが、これも面白かった。クロフォードは「ドレッド政治家」と別名があり、ドレッドなんですが、もろラスタマンの格好でChronixxで登場。対するダリル・バズは、迷彩に身を包みBounty Killer連発。

そして見ていてまた面白かったのが、PNPのクロフォード側のセレクターをしていたのがLOVERS CHOICE SOUNDのセレクター、ブレダ。LOVERS CHOICEのボス(ブレダの実父)はPNP関係者で、集会では毎回LOVERS CHOICEがセット出してるんですね。

対するダリル・バス側のセレクターは元SWATCHのRANDY RICH(現STONE LOVEセレクター)。SWATCHといえばTIVOLIのサウンド、更にRANDYは生まれも育ちもTIVOLI。もろ「DUDUS神様!」な環境で育ってきているんですね。JLPサイドにつくのも納得。

そしてもちろん、今回の集会でも各政党のセレクターしてたのはこの2人でした。

え! 集会でセレクター?

そうです! さすがレゲエの国ジャマイカ。選挙のキャンペーンソングに使われるのもレゲエなんです。

まあ有名なところでいくとこれですよね。

Delroy Wilson – Better Must Come


この曲、実は超有名なPNPのテーマソングなんです。まあ後付けですがね。

SHAGGY – Strength of a Woman


ポーシャのテーマソングはこれね。女性の首相ですからね。ピッタリですね。

あと、この前集会でかかってて面白かったのが、Sister Crully「Hurry UP」というゴスペルソングだったり(「Hurry Up~♪ Get Ready to Go~♪」で、選挙のはじまりを表現!?)。SOCAサイドからは、Bunji Garlin「Differentology」がかかったり(We Ready Fi Di Road〜♪ で選挙の準備はできてるぜ、的な)。Nigel & Martin「Follow Di Leader」だったり(Leaderはもちろん政党のリーダーのことね)。

ポップスからは、BLACK EYED PEAS「I GOT A FEELING」もかかってたな(Tonight gonna be a good night = 選挙で勝つ予感がするわ! ってことですな)。

HIPHOPもかかりますよ、DJ Khaled「All I Do Is Win」(まんまですな)。

最新ダンスホールだと、Vershon「Inna Real Life」、Jahmiel「Gain the World」もよく聴いたな。

そしてJLPサイドでよくかかったのは、ALKALINE「CHAMPION BOY」(アンドリュー・ホルネスが首相になったらCHAMPION BOYになるもんね)。

そして今回、JLPソングとして最もプレイされたのが、Nesbeth「My Dream」。Nesbethは、ずーっとずーっとこの音楽業界にいるものの、大きなヒットに恵まれなかった苦労人なんですね。実は私、15年前くらいから知り合いで(その昔Beenie Manのパシリだった時代から)、昔から凄く好きなアーティストなだけにこのビッグボスには驚き!!

最近、ずっと支えてきた奥さんが闘病の末亡くなって、でも最後にこのビッグボス見せられて良かった……

なんと首相も登場して一緒に歌っちゃいましたよ!! 正にMy Dreamだよ! もはやこの選挙で1番ボスしたのはNesbethだわ! つーかNesbethのDreamのための選挙だったわ!!とまで思ってしまいました。LOOK AT HIM NOW!!!!

まとめ
随分長くなってしまいましたが、ジャマイカの政治って本当、一筋縄ではいかなくてね。外せないエピソードや歴史ばかりで何1つ削れなかったです。

今回、これまでのコラムで1番苦戦しました。色々書きたすぎたり、みんなが最後まで読めるかなと不安になったり。

私、この国に実際住んで、選挙期間をジャマイカ人と過ごして観察するまで、色々思い違えてたことが多かったなと思ったんです。レゲエのリリックにはよく政治への不満が出てくるし、人々が選挙嫌だな〜と言う度に「さすがレゲエの国ジャマイカ! 一般人もバビロン(政治、警察、社会体制)に反抗するんだ!」とか思ってたんですけどね。

そんな単純な問題じゃなかったんだ。いろんな背景があるんだな〜と。

今回はさらに、実際に知り合いや仲の良い子達の変貌も目の当たりにして驚愕でした。ふだん「この国の政治家はクソだ!」とか文句言ってるのに、選挙になると目の色を変えて「PNP命!」だの「ポーシャ最高!」だの言ってるわけですよ。本気で。

そんな真剣な目を見て、「これは一種の洗脳だな」とちょっと怖くなったんですよね。新興宗教にハマってる人みたいな目をしていて、この人達って教育や情報が行き届いていないから、ものすごく洗脳されやすいんだと気付いたんです。

色々面白おかしく書いてきましたが、間違いなくこの国の政治の歴史はクソです。腐ってます。

でもそんな簡単なことに本当の意味で気がついている人は意外に少ないんじゃないかと感じました。だからこそ、BUJU BANTONはこの曲を……

Buju Banton – Politics Time Again


Kabaka Pyramidはこの曲を歌っているんだな〜と気付かされましたね。

Kabaka Pyramid – Well Done


せめて、新首相のアンドリュー・ホルネスとJLPがより良いジャマイカに導いてくれることを期待して……最後にちょっと良いこと書こうと思ったけど、多分無理だろうな〜w

ということで、最後はロカチャンぽくREBELなリリックで終わってみましょう。

Well done, well done, Mr. Politician man,
Yuh done a wonderful job
a tear down we country
demolition man

うまくやってるね、ご苦労様、Mr.政治家さん
あんたたちのした素晴らしい仕事は
俺達の国を破滅に導いてるんだよ
この破壊屋が!

最後まで読んでくれてありがとうございました。それではまた次回〜。

しかし、NESBETH本当に良かったな〜(←結局そこ)。LIKKLE BIT!


ということで、4年前の記事でした〜

今年の総選挙についてはまた時間のあるときにでも...

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