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Depが挑む3タイトル目の国際大会 チームが勝てれば「目立てなくていい」

2018年、オーバーウォッチ ワールドカップ、日本代表。
2019年、PUBG NationsCup、日本代表。
2022年、VALORANT Champions Tour(VCT) Stage1 - Masters、日本代表。

ZETA DIVISION(以下、ZETA)のDepは、21歳の若さで3タイトル目の国際大会に挑むことになる。

ため息の出るような操作精度と圧倒的な反応速度でキルを量産する姿から、今では「神の子」の異名を取るDep。しかし本人は「あんまり、目立つのは好きじゃないんです」と口にする。

自他共に認める「ゲームには真面目」な青年は、その情熱の全てを勝利のために注いでいる。

腕前の差が明確に分かれるゲームが好き

子どもの頃から兄のPCでゲームに触れはじめたDepは、自身で「ゲームをやり始めてから、ゲームしかやっていないくらい」と振り返るほど、あっという間にゲームの魅力に取りつかれた。

情熱は上達に繋がり、若くしてゲーム内で名を馳せるプレイヤーへと成長する。周囲を見渡して「自分は上手い方だな」という手応えはありながらも大会には興味を持たずにいたDep。だが、盛り上がる競技シーンが彼を放っておかなかった。

当時を知るXQQコーチ曰く「めっちゃ強いやつが居ると話題になっていた」ほどのDepは、勧誘合戦の末に『オーバーウォッチ』でプロゲーマーとしてのキャリアをスタートした。

「誘われたから出ようかな、くらいの気持ちだったんですけど、大会って個人の強さよりチームの強さが問われるじゃないですか。いっつも自分のことばっかり気にしていましたけど、チームについて考えるようになりましたね」

競技の舞台に適応したDepは国内・国外の大会で確かなパフォーマンスを披露し、日本を代表する『オーバーウォッチ』プレイヤーとして名を知られる存在となった。

さらに、活躍の場は1タイトルに留まらない。『オーバーウォッチ』の世界大会に出場した翌年に『PUBG』へ転向すると、すぐさま適応。選手・キャスター陣による日本代表にも選出された。なぜ、これほどまでにゲームジャンルの違いも苦にしないのか。

「新しいゲームが好きなんで、むしろ違うゲームに挑戦することがモチベーションですね。大会の前はさすがに無理ですが、面白そうなゲームが出たらやってみようかなって」

FPSプレイヤーとしてのイメージが強いが、過去にも『League of Legends』に『Shadowverse』、『ポケモン』と他ジャンルのタイトルにも熱中してきた。「上手い下手が明確に出るゲームが結構好きなんです」と事もなげに言ってみせるあたり、彼はプロゲーマーに “向いている” のだろう。

だから「もしあの時、プロゲーマーになっていなかったら」という仮定もDepにはあまり意味がない。

「多分、別のゲームでプロゲーマーになっていたと思います」

この答えに尽きるからだ。

チームが勝たなきゃ、面白くない

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Depのプレイで際立つのは、圧倒的な制圧力だ。現在は『VALORANT』で国内屈指のデュエリストとして幾度となく大暴れしているが、チームシューティングでも、バトルロイヤルでも、とにかくキルを量産してチームを勝利に導いてきた。

その一騎当千ぶりがよくフォーカスされるものの、ゲームで一番に求めるものは「チームの勝利」に他ならない。試合に勝つことさえできれば、自分の活躍は度外視できる。

「チームとして強いのがチームゲームでは一番面白いですね。プロゲーマーになって最初の方からすごいチームに入れたんで、おかげでずっと楽しいです。試合に負けたら悔しくてもっと練習を頑張るし、勝ったら嬉しくてやっぱりもっとモチベーションが上がります」

そんなDepにとって国内トップチームのZETAは「やばいっすね」と言葉が漏れるほど最高の環境だ。チーム加入直後の練習では、あまりのレベルの高さに置いていかれるのではないかと危機感すら覚えたという。

長らく同じメンバーで活動を続けてきたチームへの加入がどのような目で見られるのかも、よく理解していた。だからこそ練習を積み重ね、国内大会優勝という結果でその期待に応えてみせた。

「補強という形で入ったので、やっぱりプレッシャーはありました。日本代表が決まった瞬間はめちゃくちゃ嬉しかったですね。プロゲーマーになってから、一番楽しかった瞬間です」

重圧を乗り越えて挑む、3タイトル目の国際大会。今はもう、緊張よりも楽しみが勝っている。

「アイスランドに来てから、ちょっと練習しただけでも相手の動きが日本と全然違うことがわかるんです。このタイトルで世界と戦うのは初めてなので、吸収できるだけ吸収すればいいかなと思います」

生粋のゲーマーにして、生粋のめんどくさがり

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ゲームには類まれなセンスと集中力を発揮し、存在感抜群のDep。だが、ゲーム外では「マジでめんどくさがり」だという。昨今のプロ選手としては珍しく、Twitterもあまり頻繁には更新しない。

「ゲームで活躍して目立つのは良いんですけど、それ以外では目立ちたくないんです。Twitterをあまりやらないのも、時間が無いのが一番の理由なんですけど、できればあんまり気にしないでほしいですね」

極端にも感じられる発言だが「ごみをゴミ箱に捨てるのが面倒くさいんで、その辺に放置しておく」というのだから、その “めんどくさがり” は筋金入りだ。時折、印象的な色に染める髪も「自分で染めてるんですけど、身内で『やってみて』って言われるんで、じゃあやってみようかな」で実行してしまう。

そんなDepと関わる周囲の人間は、彼がゲーム以外にあまり情熱を注がずともチームプレイには真剣に取り組むタイプだとよく理解している。『オーバーウォッチ』時代から彼をよく知るXQQコーチは、彼の変化も、変わらない部分も含めてこう評する。

「(プロゲーマーとして活動を始めた)4年前より、ちょっと真面目になったかな。でも当時からゲームに関してはめちゃくちゃ凝るタイプで、自分のスタイルを持っていて、研究も練習も多いですよ」

インパクトあるプレーぶりが際立つDepだが、周囲からの評価は気にしたくない。可能ならば目立たず、好きなゲームをずっとプレイしていたい。そこにいるのは神の子でもなんでもない、試合を見守るファンたちと変わらないゲーマーだ。

「まぁ、DepはDepですね」

XQQコーチにそう言われて「今、プロゲーマーやってて楽しいっすね」と笑う。あどけない21歳のゲーマーDepが、世界の舞台に挑む。

(取材・文 ハル飯田)

ZETA DIVISIONが日本代表として出場する国際大会「2022 VALORANT Champions Tour Stage 1 - Masters Reykjavík」は、4月10日23時45分(日本時間)からTwitchYouTubeにて配信予定。

※一部誤った表現がありましたので、修正いたしました。

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