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SSD時代のRAID0の故障率について考える|西川善司

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この記事は西川善司さんが瀬戸弘司さんにRAID0の故障率について説明されたチャットのログを転載しました。

この議論の発端となった対談はこちら

以下が、後日チャットで善司さんから瀬戸さんへ送られたフォローアップ解説のログです。

Backspace.fmマガジンに書き込むべきネタだったかなあ
ちょっと解説しますね。

さてさて、故障率についても考えてみましょう

SSDの故障は
(1)コントローラチップ(※)の故障  
(2)記憶セルの故障
の2パターンが考えられます。

※コントローラチップとはCPU側とのやり取りや記憶セルにデータを書き込むための制御をおこなうチップです。
※実際のSSDを見ると偉そうな大き目なICがありますが、あれです。

(1)の確率が100分の1だとすると、たしかに同時に使うRAID0の故障確率は2倍。
100分の2になりますね。

(2)の場合ですが、SSDの寿命は書き込みで経年します。
「SSDの寿命は書き込み量とは無関係」という話もあるみたいですがこれは間違いです。

SSDの記憶セルのフラッシュメモリー(NAND記憶素子)は、高校の理科で習ったトランジスタにおけるソース/ドレイン/ゲートのうちゲートにある電荷量の大小によって制御されるソース/ドレイン間に流れる電流量でデータとなる0か1を判断します。
なので、ゲート側の電荷量は読み出し時には不変です。

しかし、書き込み時は、このゲートの電荷を一度、ソース/ドレイン側に飛び出させて(消去に相当)、書き込む0か1のデータに応じてゲートに電荷を飛び込ませます。
このゲートへの電荷の出し入れ時に、ゲートを包んでいる酸化膜(絶縁膜)を劣化させます。
ここが劣化すると、ゲートに電荷をため込んで保持できなくなり、記憶セルが役立たずとなります。

SSDの寿命を現したTBW値というのは、まさに「どのくらいのデータ量を書き込むとそろそろやばいか」を現した数値です。

ここまでで気が付いたかもしれませんが、

寿命が1TBW値(1TB書き込んだら死ぬ)の容量1TBのSSDがあったします。
こいつにいま1TBを書き込んでみましょう。

まず、1TB+1TBのRAID0構成だとどうでしょうか。
それぞれのSSDに0.5TB+0.5TBが書き込まれるので死にませんね
次の1TBの書き込みでは死にますけど。

1TB単発だとどうでしょうか。
1TB書き込んで即死ですね。
次回のチャンスはありません

つまり、RAID0だと、SSDの寿命が短い...というのは(2)の観点からすれば、正しくないということになります

では、(1)と(2)が両方起こりうるという視点で考えてみましょう。

(1)の視点でRAID0は故障率が二倍
(2)の視点でRAID0は故障率が2分の1

(1)×(2)を計算すると、故障率は単体SSDと変わらなくなりますよね。

基本的に、RAID0の問題は「純粋にデータが破損したときの復旧が難しい」というだけ...と僕は考えています。
(セットアップ面倒、というのはありますね)

その意味で、瀬戸さんが「RAID0はやめる」を選んだことは正しいです。

ただ、RAID0が故障しやすい...というのは、以上の理由からちょっと違うかも、と思うのです。


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