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君たちはどうイキるか【スーパービンゴ】

射幸性はどこに向かうのか

2024年2月、麻雀界に激震が走った。歌舞伎町の新宿ブル摘発。かつて「レート記載の幟(のぼり)とティッシュ配りを辞めるように指導された上でゼンツして摘発」「参加費を徴収しての大会を開催して摘発」となにかと警察がつきまとうグループ(*)だったが、令和の時代はシンプルに「フリー雀荘を営業していた」としてお縄を頂戴する次第となった。世も末である。

新宿ブルのXアカウント。そもそもフリー営業がダメとは誰も思っていなかった

これにあわせて都の組合もSNSを通じて声明を出した。

当組合といたしましては、改めまして
・賭け麻雀禁止
・営業時間の遵守
特殊な牌を使い、過剰に射幸心をそそるルールを用いた営業の自粛
・違反営業にも拘わらず派手なネット上での宣伝やゲストを呼んだ営業をする行為の禁止
以上のことを各店舗に遵守頂きますようお願い申し上げます。

東京都麻雀業協同組合のXアカウントより引用

太字で示した部分に注目して欲しい。世間の麻雀の射幸性に対する解像度はこの程度に過ぎないのだ。程なくしてアフター祝儀牌の時代が到来するだろう。そう僕は信じている。

僕たちには祝儀牌消失後の麻雀をデザインする自由がある

祝儀牌の煌めきは失われるのか。サイコロは何度までなら振って良いのか。脱衣麻雀を配信すると除名になるのか。結局の所僕たちには何もわからない。ただ、ここが間違いなく岐路だ。そして「賭博としての麻雀」を存続させる為には脱祝儀牌的なロジックとギミックとが必須となるであろうことは衆目に明らかだ。

では今回はみなさんに、そんな「岐路」についての話をしようと思う。

*具体的に何がどうグループなのか、については以下のYahoo知恵袋を参照

僕たちはいつも岐路に立っている

先日は横浜まで動画の撮影に行った。その日はたまたまRMUの望月涼香プロのゲスト日で名古屋の人間にも手に馴染むホームランビンゴが開催されていた。昼間から終始5卓、まあまあの盛況だった。

世に出てはや一年、プロもビンゴを打つ時代になった

動画パートナーの肥え×さんが経営するQuasarは真の意味で何でもありの雀荘だから、撮影終わりに店内でダラダラしながらお客さんの後ろ見でガヤを入れていても何も言われない。僕としても人様が7に翻弄され思い悩む姿を眺めるのは望外の喜びである。

発言から「どうやら気分障害だろうな」という様子が伺える

「うーん、ごめんなさい」
この一言が聞こえて僕は後ろに駆け寄った。唸っているのは常連のOさん。深い面識はないけれど僕のゲスト日には必ず居るから、恐らくこの店にもおおむね毎日居るのだろう。

末恐ろしいチャンスが行く手を照らしている

確かにここが岐路だ。その手の行方はパックリと二手に分かれている。選択肢は勿論②か⑧かだ。え、⑦を打って聴牌に取る?脳裏を掠めた事すらない素晴らしい着想だ。記念にメモ帳にでも留めておく事としよう。

そして悩み彼は②を打った。別段とおかしい所もない、何なら7が4枚っきりの麻雀でも容易に選び得る手筋だ。

そこに彼はすぐ⑧を引き入れる。

薄く、それでいて妥当な所を引き入れた

Oさんは少考して④切りダマを選択。スーパービンゴという麻雀で最頻と言って良い役有りダマの形だ。⑤引きの変化は消えたものの西⑦⑧の3種9枚(⑧はドラ表示牌)の変化が残る。

しかしそこからがもつれた。取り立てて変化する事もなく、また和了牌が打ち出される事もなく。河が二段目を折り返して9巡目に、遂にOさんは⑥をツモりあげる。

まあ、こういう日もある

取り敢えずの和了に辿り着いた。しかし、Oさんは何故か発声をしない。悶えるように悩んでいる。そしておもむろに西を切り出した。いや、流石に。流石にそれは、だなとベガ立ちしっぱなしで息を吞む。しかし彼の執念が牌を呼び寄せたのか、数巡して⑦を引き入れて渾身の立直。

そういえばこの三面張、ビンゴ限定で随分強い

而して成就するはずもなく、哀れ立直を躱されたOさんは失意の裡にオーラスを迎える事となった。彼の選択は結果的に失敗した訳だが、しかしこれは反省すべき何かだったのだろうか?選択とは「その先に何を見据えているか」という構想力の結実である。ではそもそもホームランビンゴとは何を見据えて動くべきゲームなのだろうか?

ホームランビンゴで僕たちが意識したいこと

僕の目下のメイン種目であるホームランビンゴについては以前にも何切るを記事として取り上げてきた。

その中で再三に渡って述べているが、ホームランビンゴの凄みとして特筆すべきはその「一撃性能の高さ」である。たかが一回の和了で負け分の全てを取り戻そうとする人間の業、その為にこそビンゴはある。7の寄りと継続率とが底支えする期待枚数とに依って僕たちは分散の壁を突破し、それによって初めて一撃必殺を達成し得るのだ。

敗者の心に寄り添うルール、それがホームランビンゴだ

そしてこの一撃必殺を成し遂げるまでの流れについては、実はもうオバカミーコに描かれている。大麻王戦決勝当日の朝、もう一人の主人公・波溜晴が弟子ミーコに語る『闘う組み立て』である。

詳細な内容はオバカミーコ8巻

主導権争いから和了りを拾ってぶっつけに移行し、そこで一撃を決める。作中で波溜は「これは流れ的要素も入るからピンとこなければ参考にしなくてもいい」と語る。あくまでもオカルト要素満載の状態論だからだ。この抽象的な組み立ての一切をホームランゲームはカットビマークの導入によってシステムとして成立させている。主導権争い(満塁)から様々な方法で和了りを拾ってぶっつけ(ホームラン)で一撃を決める。そして僕たちは、このフローにそって『今何をすべきか』を構想する力を問われる。

さて、Oさんは果たして「どうすべき」だったのだろうか?

ぶっつけへの構想

もう一度、彼の悩んでいた牌姿について考えてみたい。

これがつまり今回のお題だ

聴牌している所からの何切るというのも何とも珍しいが、こればかりは聴牌を取る訳にはいかない。ではここで②切りと⑧切りでそれぞれどんな形の最大和了形が考えられるだろうか。

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