中高生リーダーシップを教えるために40分間無言を貫いてみた。
先週末、新卒で入社したリンクアンドモチベーション が運営しているモチベーションアカデミアのゼミで中高生向けにリーダーシップについて話をしてきた。いや、違うな。リーダーシップをとってもらうために、あえて話をしなかった。
意図的に「意味のわからない場」「無駄な場」を作ってみる
講義に向けてスライドと配布資料を作っていた時、ふと違和感を感じてキーボードから手を離した。
「リーダーシップを教えるのに、私が全部用意して良いのか?」リーダーシップを伝えるのに座学で良いのか。。場のコントロールを私が持って良いのか。
そう考えて、私はパソコンを閉じた。
テーマだけ出して何も用意しないことを決めた。
どうなるかいろんなパターンをシミュレーションしてみた。
1、誰も動かず、ひたすら沈黙
2、年齢が高い子が役割として仕切り出す
3、つまらないと帰り出す生徒が出る
4、1人だけめっちゃすごい子がいる
例えば、4の場合は私がその子の近くに行って、その子にだけ話していく。その空間にその子と私しかいないかのように、パソコンみせながら楽しそうに話す。
そこに「私も聞きたいから、そっちに行ってよいですか?」と言ってジョインする行動をとれる2人目が現れるかを見ようと思っていた。または「他にも聞きた人いるかもしれないから、呼んでも良いですか?」とさらにその子が周りを巻き込む行動をとれるかを見ようと思っていた。
どう転んだって、筋書きのない場は必ずリーダーシップを学ぶ場になる。
講師として何も言わなかった40分間の子どもたちの動き
自己紹介もなしに開始すぐ「10代の考えるリーダーシップを知りたいから教えてほしい」テーマだけ与えて、何もしなかった。スライドも配布物も何も用意していない。
まず、みんな「えっ、、、?」って感じの顔になったが、誰も私に「どういうことですか?」「何をすればよいのか?」「まず先生について知りたいです。」と質問はしてこなかった。
「議論しようか」と言った生徒の声が小さくてかき消され、3分後には全員が目の前にある紙に自分の考えを書き始めた。
その間も数名は不安そうにキョロキョロしている。
15分後、1人の女の子が小さい声で隣と前の子に声を掛け、議論が始まった。
周囲は「あ、議論してもいいのか」と感じたようだが、まだ他のグループは誰も動かない。それが正しいかどうかわからないから。
私の目の前の女の子が隣の男の子に「話そうか?」と声をかけたが「まだ考えてるから」と断られた。勇気出して、誘ったのに。。恥ずかしそう。。
20分後「グループで話し合ってもよいですか?」と男の子から私に質問があり、「どうぞ」と答えたのをキッカケに全員がグループワークを始めた。
30分過ぎ、グループワークが終わったチームが「どーしよー」という顔で周囲を見て、黙り始める。
40分過ぎたところで私が介入。
言葉を交わさなくても、空気によってルールが作られていく様を体感
「なぜ、誰も私に聞かなかったんだろう。私はずっと目の前にいたのに。今日は私の話を聞くためにみんな来たのに。私は教えて欲しい、とは言ったが、聞いてはいけないとは一言も言ってない」
「なんで、この意味のわからない時間や無駄な時間を終わらそうと動かなかったのだろうか。なんだこれ、って心の中でみんな思っていたのに。大人や先生はいつも意味のあることをやってると信じきっているのは危ない。」
「リーダーシップを机上で語りながら、リーダーシップが必要な状況で全く行動できてないのなんでなのだろう?私に怒られるのが怖い?周りに変な目で見られるのが怖い?」
私はルールを作っていなかったのに、彼らは空気の中で勝手に自分たちでルールを決めた。誰かが言い出したのではない。沈黙の中で決まっていった。
目に見えないものがその場を支配し、コントロールしていく様は子どもだけではなく、会社の会議室でも当たり前に起こっている。
講義は「個人ワーク」して「グループワーク」して「発表」して「振り返り」という形。だから、みんなそれがルールだと思ったのだろう。
ルールなんてあるようでないから。意味のないルールがこの世にはあふれているから。
だから、前向きにどんどん疑ってほしい。
ちょうど思春期なんだし、「先生」や「親」に対して本当かな、と思ったことはどんどん聞けばいい。
リーダーシップは人に宿るのではなく場に宿る
リーダーシップはバトンのようにいろんな人に渡っていく。
私は新しいものを作ることが大好きだから、その場面では意識せずともリーダーシップを発揮することになる。
しかし、「既存のものをうまく回す」みたいなテーマに変わった瞬間、私は興味を失い、バトンは維持管理が得意な人に自然と渡る。
また、「今、うまくいってなくて辛い」みたいな感情の話になると人の話に共感して、前向きにするのが好きな人にバトンが渡る。
リーダーシップがある人とない人がいるわけではなく、リーダーシップを発揮するタイミングがあるかないかだけで、タイミングが来たら自然にできるから無理に意気込まなくても良い。
でも、自分がどんな場面でリーダーシップを発揮できるのか知るのは大切だから、色んな場に行ってほしい。
あとは、空気を動かす1人目になれないなら、2人目、3人目になるのもリーダーシップ。
1人目をリーダーにするのは続く人たち。
後に続く勇気も大切。
満足度が低くなるのは覚悟していたが、想像以上に良かった。でも、正直、当日の満足度なんて意味がない。本当に私の話が彼らにプラスになったかが分かるのは、次に「なんだこの空気?」と思う場面に遭遇した時。
今日の場を思い出し勇気を持って空気を動かせる人になってくれあら良いな、と思う。
たぶん、これからたくさんそんな場に遭遇するだろうから。
------------------------------------------------
私が編集長を務めるバックキャスティングラボのメディアはこちらから
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?