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子ども達はこの半年間何と向き合ったのか?‐オンラインによる民間学童の進化-

コロナで学校が休校になっても、民間学童はその扉を開けていた。
在宅できない保護者のために、子ども達を預かる必要があった。
当然、子ども達は友達とお話をすることもはばかられるストレスフルな時間を長期間学童で過ごすことになる。

子ども達の命を守ることが何よりも重要。
その上でこの期間、子ども達にどんな学びができるかを考えた。

何を学べば良いか分からないこの時間、せっかくなら好きな分野に思いっきりのめり込んでほしい。
その思いを込めて走った約半年を振り返ってみる。

2月から『「世界初」の本を作ろう!』をスタート。

私たちはまず実際に「本を作るという」アウトプットを子ども達に提案した。夏までに1冊自分の大好きなことを本にしよう、と。魅力的な目的を見せる。決して強制ではなく、やりたい子が取り組むスタイル。

学童に来ている子も在宅でいる子も顔を合わせて、本づくりを進めた。自分の好きなことを話しているうちに、閃く子もいれば、友達の進捗を見て刺激を受ける子もいた。

3月、専門家たちからのレクチャーを用意

学童側で、本づくりのスペシャリストからイラストの専門家など本づくりに関わる先生たちを用意し、テレビ会議を通して、子ども達を刺激した。さらに「好き」を見つけるために、音楽やスポーツなど様々な角度の先生に依頼してオンライン授業をしてもらい、子ども達の興味を刺激した。

「旅客機が好きで、その本を書いている」という飛行機に一度も乗ったことはないが知識が博士並みにある子にはANAの社員さんとお話をする機会をつくったことで、本に深さが出てきた。

5月、オンライン授業で先生ができる子が登場

本づくりを進めているうちに、プログラミングが好きな子が自分で授業をつくり、先生としてオンラインで仲間たちにレクチャーをした。

自分と同じ小学生がオンラインを使いこなし、授業のスライドを作り、堂々と説明している姿を見て、さらに子ども達は刺激を受けた。

8月、コロナ禍で頑張っている職業の人たちに話を聞きたいと子ども達が希望。

最初はオンライン修学旅行に行くつもりだった。
子ども達に「どこに行きたい?」と事前に会議を3回行った。
【海外】【海の中】【アニメの世界】【戦国時代】などたくさんのアイディアがでた。
その中に『コロナで活躍している職業の方の話を聞きたい』という子どもが半数以上もいた。
「都市に人が集まらなくなると、犯罪は減るのかを警察官に聞いてみたい。」「薬をどうやって作っているのか聞いてみたい」「学校で学んだのですが、介護の人は普段から非常に衛生状態に気を付けていると思います。そんな中でコロナが起こり、今どういうことに気を付けているのかを聞いてみたい」と。

コロナだから遠足がない。運動会がない。夏休みが少ない、プールいけない、友達と遊べない。そんな悲しい気持ちもあると思う。でも、彼らはそんな中で頑張っている人に目を向け、真実に興味関心を持った。

子ども達はテレビや新聞だけでなく、その場で働く人のリアルな声を聞きたがっていた。約2か月かけて医療、警察、介護関連の方々にご協力をいただき、オンライン職業見学を実施した。
<ダイジェスト版5分動画>

PCR検査の研究開発をしているロシュ・ダイアグノスティックス株式会社の川井さん。PCR検査や薬ができるまでの話をしてくださった。

市川警察署の生活安全課のみなさま。警察官の所持品のお話や、「緊急事態宣言で人が外に出なくなると犯罪は減るのか?」などのご質問に答えていただいた。

株式会社時の生産物のデイサービス3拠点を結んで、お客様と一緒に施設の中をご紹介してくださった。施設でのコロナ対策を質問したり、職員の方のやりがいなどについてお話をお聞きした。

オンライン職業見学が終わった後、40分間彼らとフリートークをした。
「どうだった?」と聞くと、彼らは「不要不急とはどういうことか?」については話し始めた。「遊びは不要不急だよ」「でも遊びがないと人生楽しくないよね」「今は勉強が大事だから、ちょっとだけ遊べればいい」「なんのために勉強するの?」「将来のため」「将来どうなるため?」「幸せにはどうしたらなれるかな?」「そもそも生きるってなんだろ」そんな問いがとんどん産まれてくる場になっていた。
哲学的な話が右から左から聞こえてくる。

半年間、彼らが向き合ったものは何だったのか?**

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彼らは目標を与えられ、用意されたものをインプットしていた半年前とは違い、自分達で新しいアウトプットの方法実践し、インプットしたい情報を自分達で考え、一次情報を求めるようになった。メディアではなく、現場で働く人の本当の声が聞きたい、と。

そして、今、「生きる」ということについて考え始めている。
もちろん、答えはない。
だから、私も一緒に考えている。

本づくりを通して、私は何度も「なんであなたはこれが好きなの?」と聞いた。子ども達は「うーーん」と言いながらも、自分の気持ちが動く理由を一生懸命探っていた。今、自分について向き合いながらつくった新しい本がどんどんできあがりつつある。

コロナは子ども達から通常の授業を3か月奪った。
しかし、逆に、答えのないもの、目に見えないものに向き合う機会を作ったのではないかと私は感じている。
この半年間、子ども達は答えのないものに向き合っていた。
目に見えないものにしっかりと向き合っていた。
失ったものだけではなく、この期間だからこそ得ることができた学びもあったのだ。

大人が「かわいそう」と思うほど、子ども達は弱くない。
この時代をたくましく生きている。

最後に。
子ども達の安全を守ってくださるナナカラのスタッフの方がいたからこそ、できたプロジェクトです。私はいつも目立つ部分を担当するので、表舞台に出がちですが、私がこのように企画できるのも毎日毎日子ども達の命を守っている方々がいるおかげです。本当にありがとうございます。

これからも学校でも家でもない、学童だからこそ作ることができる機会をこれからも追求していきたいと思っています。


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