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空飛ぶ教室‐オンライン修学旅行in流山市‐10年後も君たちの記憶に残る特別な修学旅行であって欲しい。

普段、私はほとんど泣かない。終わったらすぐに次にいくので、振り返って感傷に浸ることがないからだ。
しかし、今回のイベントを終えて、1人になった途端、フっと気持ちが緩み、ぎりぎりまで涙が込み上げてきた。今、こぼれないように上を向きながらパソコンを叩いている。

緊急事態宣言後の5月末から約3か月進めてきたこの企画について、まだ気持ちが高ぶっているうちに言葉にしたい。

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オンライン修学旅行を企画したキッカケ

私の住む流山市は緊急事態宣言後、早い段階で修学旅行を中止することに決めた。「何かしませんか?」と仲間から連絡が来たのは5月20日。

メールを見て、一瞬でアイディアが溢れてきた。
即「オンライン修学旅行やりましょう!」と答え、次の瞬間にはANAさんやマイクロソフトさんなどに声をかけていた。

この間、たぶん1分くらい。

休校になり、できなかった授業をしなければならないのは十分理解している。その時間の確保のために運動会や遠足や職業見学など「答えのない体験」の機会が削られた。

算数や国語と同じくらい大切な「何が起こるか分からない。ワクワクする気持ち」。この答えのないワクワクは一度味わったら癖になり、小さい時に体験していれば、大人まで継続できる。
そのワクワクは学校でなくても作ってあげることができる。
だから、1秒でも早く実施したかった。
1瞬、即、1分、1秒。時間のスピードを意識した表現にしているが、私はとにかく「時間」を意識していた。「できたらいいね」「検討してみよう」など考える時間はない。決めて動く。人生で1度しかない6年生の時間はもう残り少なかったから。

オンライン修学旅行の2つの意図**

①子ども達にコロナ禍でもできる修学旅行を提供し、一生の思い出にしてほしい。

②公立学校のオンライン活用のモデルを作りたい。

特に②については今回、一番プログラム設計で意識をした。
コロナの影響でGIGAスクールが進み、各学校には一人一台タブレットやネットワークが用意され始めている。

しかし、ハードだけでは何もできない。
それを活用して、どんな機会を作るかが非常に大切。
オンラインが万能なわけではない。リアルと合わせてこそ学びは最大化される。「教室は大切な友とつながれる、オンラインはまだ見ぬ未来の友とつながれる」そんな世界を実現したい。
だから
◆学校にあるもの(これから用意されるもの)でできること。
◆お金をかけないこと
◆教室の中でできる規模で実験すること
◆学校で使う教科書などを活用すること
にこだわった。

「自分のクラスでもできるやん」そう思ってもらうために知恵を絞りまくった。

今回のオンライン修学旅行の特徴

◆企画から小学生を巻き込む
大人が知恵を出し合っても失敗する。子ども達が本気で楽しむものを作るなら、主催者側に当事者を入れて対等な立場で意見を言い合うこと。今回は流山市の小学6年生菊井響君と様々なことを相談して決めた。
「その世界にいったような気持ちになりたい」「友達と何かゲームや謎解きしたい」「お母さんにお土産買いたい」そんな話をいっぱいした。
当日もしっかり、ミステリーガイドをつとめてくれた。

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今回の行き先の「タイ」は彼が行きたいといった。頑張っている彼のいきたい場所をかなえたくて、直ぐにタイで会社をしているアジアンアイデンティティの中村さんに連絡をした。彼はずっと私の、みんなの頼れるパートナーだった。

◆行く過程へのこだわり
修学旅行はもうバスや電車や飛行機に乗る前から始まっている。
そのワクワク感なくして、いきなり現地に行っても楽しさは半減する。だから、実際に飛行機に乗って海外にいったような気分になってもらうためにANAさんに協力を依頼した。
入る前にアメを渡し、現役のスタッフによる英語の機内アナウンス、Youtubeの載っているANA機内案内の動画を流す。Tristのデザイナー中村さんがフライトチケットを作ってくれた。空港のラウンジの音、機内サービスの準備、協力者の方々もできるだけ搭乗員っぽい恰好で。そして、画面の背景を座席にして、飛行機に乗っているような演出をした。

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◆学校の勉強とリンクさせる
ミステリーツアーにした。謎解きが子ども達は好きだから。
活用していいのは社会科の地図帳と英和辞典のみ。あとは自分の今までの経験や知識を駆使してもらう。
キャビンアテンダントから実際の機内アナウンス「飛行時間」「到着空港」「現地の気温」「時差」が英語と日本語でスピーチされる。
その後、ヒントカード(英語で書かれて、日本語はなし)を10個解読してチームで話し合う。
今まで知っている知識を総動員し、友達の知識も活用して、少しずつ答えを導き出していく。

『In 2017 and 2018, it was ranked number one in the number of Facebook users by capital city. (2017年、2018年に首都が首都別Facebookユーザー数ランキング1位に選出されました。)』を読んで「Facebookが流行ってるってことは投稿することがあるってことだから観光で有名なところかな」とか。

『It is the sixth largest producer of rice in the world.(世界6位の米の生産量を誇ります。)』を読んで「日本米以外に聞いたことあるのはタイ米だよね」とか。

ものすごく盛り上がった。

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◆リアルな旅ではあまりできない体験
答えが分かった人から飛行機を降り、別の部屋でタイのお菓子を受け取った。

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その間に今まで飛行機だった場所にタイのお香と音楽を流し、世界を変えた。
タイからはアジアンアイデンティティーの中村社長があいさつをし、現地の小学生のお家訪問を行った。
その後、ケット先生にタイ語を教えてもらった。
難解な暗号のような文字を使って自分の名前を書いた。

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タイ

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実際のお宅では国王と王妃様の写真が飾られていることに「違い」を感じ、名探偵コナンのポスターをみて「同じ」を感じた。

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タイのガ-ファーちゃんの家族でのオンライン会議中の様子

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◆オンラインの中での思い出づくり

密な状態を避けながら、現地の人や関係者と写真を撮りたい。
これについては最後までかなり悩んだ。
悩んだ末に出てきた解決策は、Teamsのtogetherモード。
リリースされたばかりの機能。

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画面上であたかも同じ空間にいるような映像になる。

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こちらはTeamsから背景を飛行機座席にした集合写真。

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オンライン修学旅行の今後の展望

ぜひ、色んな学校でやってみてほしい。子どもたちが企画したっていい。
架空の航空会社をクラスで作り、飛行機の音を流し、クイズを作り、現地の人を見つけ、お話を聞く。今回は修学旅行だったが、日常の授業でも同じことができると思う。算数でも国語でも理科でも社会でもできる。授業時間を削らなくても、教え方を少し変えてみればいい。先生ではなく、企業の人、外国の人、色んな職業の人が語れば学校の学びと社会がつながる。そうすると学ぶことが楽しくなる。楽しい学びはグングン伸びる。

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学校実施の際の一番の壁は「話しを聞きたい人とつながること。ネットワークがつくりにくいこと」だと思う。
そこは、ぜひ市民や保護者の力を活用してほしい。
子ども達のために何かやりたい大人はいっぱいいるから。こんな学びしてくれるなら、なんだってやるよ。

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その場でも絵葉書に感想を書いてもらったが、家に帰ってから、手紙やメールで改めて感想をくれた子もいた。

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「海外旅行に行っても、そこの人の家なんて見れないので、タイの人の家を見せてもらったのは、すごく貴重だったなと感じています。機内や空港などでの放送やYouTubeの安全の放送などで、旅行の気分がよりリアルに感じられました。謎解きをしているときや、タイに着いたときも、BGMが流れてて、その場を盛り上げる要素になっていました。修学旅行がなくなったぼくたちのために、こんなに素敵なイベントを企画・実行していただき、本当にありがとうございました。」

今日参加した子達が週明けに友達に話をし、どんどん広がってくれたらとても嬉しい。私はいつも目の前の子だけなく、その先にいる友達まで想像する。私が作れる機会を限られているけれども、そこで心が動いた子達が友達に伝え、行動し、自分の半径5メートルの世界を変えていければ少しずつこの世はもっと面白くなる。

私は今日、「その先の広がり」が見えた気がして、今1人で心地よく泣いている。

今日を思い出して感極まっているのではない。今日がつくった未来に対して感極まっている。

「俺たちはアンラッキーだ」という状況は仲間と知恵でいくらでも「ラッキー」に変えられる。それが伝わったならこれ以上ないほど嬉しい。


チャレンジングな取り組みにご協力いただいたすべての皆様へ

「やるぞ!」という私の勢いではじめた企画。何が何だか分からない中で全力の協力してくださった菊井響君、日本マイクロソフトの宮崎さん、ANAの野島さん、大下さん、奥津さん。Asian Identityの中村社長、藤岡さん、タイのご自宅を訪問させていただいたガイファーちゃん、文字を教えてくれたケット先生。流山市マーケティング課の河尻さん、Trist入居者のメンバー、近藤美保議員、若松さん。行き先を北欧を検討していた際に現地でMTしてくださった藤原夫妻、アミューズメントパークを検討していた際に意見交換してくださった西川さん、小川さん。そしてシェアしてくださった人も含め多くの市民の方々にただただ感謝です。

前日、夜中3時まで準備したのは高校生の文化祭みたいで主催側も超楽しかったです!「あら?いま何やってたんだっけ?」と眠すぎてわからなくなって(笑)
やる側が楽しむっていうのが実は良い企画には1番重要。

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企業も市民もみんなビジネス抜きに手弁当で関わってくださり、本当にありがとうございました!(企業や市からお金はいただいません)

後日、オンライン修学旅行のフォーマット(私が作った企画書やタイムスケジュール、購入備品等)を公開したいと思っています。ご参考になれば嬉しいです。

文章ではなかなかイメージできないと思うので、ぜひ以下の放送をみてほしいです。Nスタさんは事前に参加者へインタビューし、前日遅くまで準備している様子、当日全て、かなりしっかりと取材をしてくださいました。
<メディア放送予定>
◆TBS Nスタ 8/24 18時〜ニュースで放映
◆NHK 8/25 首都圏ネットワーク18時10分〜放映
◆ JCOM 8/24 18時〜ニュースで放映
◆日経新聞、読売新聞、東京新聞は来週どこかで掲載予定

<追記>取り上げていただたメディア

<追記>お問い合わせが多かったので、9月4日の19時から説明・相談・共有会を行います。
もしご興味のある学校関係者の方がいましたら、ぜひご参加ください。


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