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トランクスorブリーフ?それとも…

人生で自分が大人になったと感じる瞬間というものはいくつかあると思う。

それは成人式とか、二十歳になったとかの法律的な話とかではなく、その瞬間瞬間に感じる時の話である。

例えば、髭が生えてきた時とか、コーヒーをブラックで飲みたいと思った時とか、餡子の良さに気づき始めた時とか…等々。


そして、人生において、紛れもなく初めて"大人になった"と、皆が、いや、男が感じる瞬間が『初めてトランクスを履いた時』である。


これは間違い無いと思う。


小学生の高学年、早い人では4年生辺りから、男子は"トランクス"を履き始める。

それまで純白の"ブリーフ"を履いていた男子の平和な時間が崩れ去る瞬間がやってくるのだ。


初めての時間は体育の時間にやってくる。

いつものように体育の授業の前に更衣室へ行くと、何やら騒がしい。

入ってみると、1人の男子に群がる男子!まさに一国の王子を一目見ようと集まる群衆のように、そして皆目をキラキラ輝かさせている。

なんだと思い視線を下の方にやると、黄金に輝く"布"が現れた。

「なんだ!このズボンのようなパンツは!そして、青い!白く無い!

パンツと言うものは白では無いのか!これはなんだ!車も走ってるではないか!そこに車が走っていても良いのか!」

などのあらゆる感情を引き起こし、軽い衝動に襲われた。

「ヤッチャンそれトランクス!?」

「うん!トランクスだよ!良いでしょ!?」

これが噂のトランクスか!

これは大人が履くものじゃないのか!?

お兄ちゃんだってまだ履いてないぞ!

お父さんになったら履くんじゃないのか!?

などと考えている内に着替えなきゃいけないので、体操服に着替えるのだが、男子が急にモジモジし始める。

そりゃそうだ。

目の前であんなものを見せられたら、急に自分が履いてる"ブリーフ"がおむつに見えてくる。

そりゃ猫背になるわ!である。

トランクスを履いてるヤッチャンの背筋はピンと伸びている。

カッコいい。


トランクスでマウント取るなんて事が出来るのか!?


子供ながらに衝撃を受けたこの日を境に、徐々に生活に変化が出てきた。


男子は1人、2人、3人とどんどんトランクスを履くものが現れた。

履いた者達は、決まって背筋がピンと伸びる。

そして、どんどん増え、僕を除く全ての男子がトランクスになった。


僕はと言うと、家のローカルルール的なもので、小学生までは"ブリーフ"みたいな風潮があったため、小学6年までブリーフで過ごすことになった。

正直死ぬほど恥ずかしかった。


そして、悲劇は起こった。


小学6年生の夏、僕は器械体操の教室に通っていたのだが、その日は、たまたまデニム生地のズボンを履いて参加していた。


器械体操は基本デニム禁止で動きやすいジャージか体操服で参加する。

なので、この日僕は先生にめちゃくちゃ怒られた。


しかし、ここまでは僕の"作戦通り"なのである。

実はこの日学校で体育の授業があったため、体操服をズボンの下に重ねて履いていた。

そこで僕は、デニムのズボンを"あえて"履いていき、先生に怒られたら、ズボンを脱ぎ、下の体操服を見せて、

「実は下に体操服を履いてましたー!!!先生騙されてやーーんの!!!」


これだ。

これで爆笑とる作戦だ。

さて、器械体操教室が始まり、マット運動が始まると僕に気づいた先生が

「ちょっと!!!デニムのズボンダメって言ったでしょうが!?体操服とか着てこないと!」


と言った。よし。ここまでは作戦通り。


時は来た。


僕は丁寧に『先生!デニムダメなのー!?体操服なら良かったの?』

と二回くらいフリ、


先生が「そうだよ!」


と言った瞬間『じゃーん!』


と言いながらデニムのズボンをずらした!!!


まるでスローモーションのように周りの動きが遅くなった。


デニムのズボンが僕の腰から下ろされると、純白を超えるまさに純白"ブリーフ"が皆の前に現れた。


時が止まった。


皆の視線が、股間に集中する。


僕はただの露出狂となった。


僕の顔が恥ずかしさで徐々に真っ赤になる。

履いてたはずの体操服はどこにもない。


周りが騒然とする中、


1人の女子が一声発した。


「てか、ブ、ブリーフ?」


僕の顔はさらに真っ赤になった。

なんとも言えない空気が流れる中僕は必死に弁明した。


"ほんとは体操服作戦"の話をすると、先生は、

「そういう作戦だったんだ!どこかで脱いじゃったんだねー!」

と全力でフォローしてくれたが、僕の鼓膜はずっと、「てか、ブ、ブリーフ?」で震えていた。


僕はあの言葉を絶対に忘れない。

もしも、トランクスを履いていたらあんな事にはなっていなかっただろう。

僕は皆がマット運動をする中恥ずかしさのあまりずっと体育座りをして丸まっていた。



あれから15年の月日がたった。


今思えばブリーフ悪くないなぁなんて思える歳になった。


ある意味、本当の意味で大人になったのかもしれない。


そして、僕は今日もズボンの下に履いている。



真っ赤なふんどしを。



えっ?





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