掌編「うんこアイドル」@爪毛の挑戦状
「いやー、成人式ぶり?」
「お前は変わらんな」
「みんなこっちにいたなんてな」
街の小さな居酒屋で和やかに、3人の男はビールを呷りながら昔話に花を咲かせている。
「お前ガキの頃、強運でさ~。覚えてる?レアな金のウンコ、一発だよ!あれはカッコよかったね」
「あれな~。みんなは毎日挑戦してたのにな」
「鮮やかよ!チョチョっときて、ガシャポンとやって。んで、そのまま帰んだもんな~」
「なんか、あん時のお前は神々しかったよ。ほんとに仙人なんだなって思った」
「そのあだ名も懐かしいな」
追加のビールが3つ運ばれてきた。誰からともなくジョッキをカチンと合わせ各々引き寄せる。
「俺、実は腕相撲の特訓してたんだよ」
「一時流行ったよな!女子に負けるやついて可哀想だったな~」
「胡太朗には1度も勝てなくてさ。けっこう悔しかったんだよね」
「あの頃は家の手伝いでむちゃくちゃ鍛えられてたからな」
「山ん中で農作業やってたんだろ?どんな作業してたんだよ。米俵担いだりとか?」
「いや。うんこかき、だな」
「雪かき、的なこと?」
「まあ、そんなようなもん」
「うんこに育てられたうんこ仙人…」
「あんなに糞まみれでよく虐められなかったなって、ずっと思ってんだよね。ふっふ」
「まあ、お前、あの頃アイドルだったからな」
「え?そうなの?」
「自覚ねぇんだもんなあ!カッコいいぜまったく!」
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