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掌編「二重人格ごっこ(橙)」@毎週ショートショートnote
手鏡を覗き込んでいた彼女と目が合った。
赤く小さなその手鏡は、縁の細かな螺鈿が美しく、ボクが一目惚れしてプレゼントしたものだ。彼女もとても気に入ってくれた。
ボクの彼女は、優しくてチャーミング。影の薄いボクなんかの気持ちに、いつも笑顔で応えてくれる。
彼女はいつものように、鼻の左側をくしゃっと丸めて笑った。ボクも同じように笑い返した。
今日のデートも楽しかったね、と彼女は手鏡をテーブルに置いた。
そうだね、とボクは珈琲に手を伸ばした。
デートの最後は決まって、この喫茶店だった。
ふたりで何度も通っているが、向かい合って座るのは照れくさいから、ボクらはいつも同じほうを向いて座った。
店員さんが、パフェを持ってきた。彼女は嬉しそうに、鼻の左側をくしゃっと丸めた。
勢いよくクリームを頬張ったので、クリームの一部が口から外れてしまった。
うわ、と笑いながら手鏡を覗き込んだ彼女と目が合った。
ボクの鼻の右側は、くしゃっと丸まった。
(405文字)
読んでいただき、ありがとうございます!
今回のお題は、いくつか話が浮かんだのでそれぞれイメージカラーを付けてみました。みなさんは、何色をイメージしましたか?(唐突な問いかけ)
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