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#たらはかにさん
掌編「二重人格ごっこ(緑)」@毎週ショートショートnote
ねえねえ!二重人格って、どんなかな
『身体が生まれた時から精神を支配している主人格』と『主人格から分裂してできる副人格』とが、ひとつの身体に同居している状態だと言われているんだ。副人格は、主人格にはない能力を持っていることが多いそうだ。多数の言語を自在に操るとか、ある分野の専門家とか。
副人格は、いつ能力を身に付けてるの?
とても不思議だよね。肉体的には、『副人格が勉強した時間』は存在しない
掌編「二重人格ごっこ(紫)」@毎週ショートショートnote
今朝も無事、岸辺に繋がれたようだった。
目が覚めると、間もなく午前5時。
シャツのボタンを留め眼鏡をかけ、そろりとベッドから出て、壁の大きな鏡をみる。かなり飲んだはずなので、やはり浮腫んでいる。
曖昧な記憶を反芻しながら、マスクで鼻と口を覆い、部屋を出る。
早朝の駅前はとても静かで、タクシーはすぐにつかまった。
「おつかれさまです」
「おう、おつかれ」
昼休み直前、すれ違ったので何食わ
掌編「二重人格ごっこ(橙)」@毎週ショートショートnote
手鏡を覗き込んでいた彼女と目が合った。
赤く小さなその手鏡は、縁の細かな螺鈿が美しく、ボクが一目惚れしてプレゼントしたものだ。彼女もとても気に入ってくれた。
ボクの彼女は、優しくてチャーミング。影の薄いボクなんかの気持ちに、いつも笑顔で応えてくれる。
彼女はいつものように、鼻の左側をくしゃっと丸めて笑った。ボクも同じように笑い返した。
今日のデートも楽しかったね、と彼女は手鏡をテーブルに置
掌編「違法の健康」@毎週ショートショートnote
「坊っちゃん!坊っちゃん坊っちゃん!」
聞き慣れた声で目覚めた。
「探しましたよ、そんな所で寝転がって。そろそろお時間ですから、お急ぎくださいよ。ささ、お早く」
せっかくの昼寝なのに。
日の差す温室。色々なサボテンの鉢が所狭しと並び、少し暑い。
私のお気に入りの場所である。
白色の、デッキチェアと一本脚の丸テーブルの横に、蓙を敷いて寝転がるのが私の昼寝スタイルだ。
コホン、と私は咳をし