思い出も恋も止まらない
しおりさんの企画に参加させていただきました。
この作品はしおりさんの企画作品になります。
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〇〇:(あ〜終わった………)
僕、佐藤〇〇は今日も仕事を終えて
定時に会社を出る。
3月に高校生を卒業して
東京の会社で働くために地元の千葉から
約1時間かけて毎日通勤する社会人1年目。
今となっては、どこにでもいる普通のサラリーマン。
平凡な毎日を過ごしていたが
今日をきっかけに、少しだけ変わり始めることに。
会社の最寄り駅へ向かって歩いてる僕。
信号待ちで立ち止まる。
信号待ちの間、スマホと信号に目を交互に向ける。
すると、僕は右肩をトントンと叩かれて
僕は後ろを振り返った。
???:「よっ!〇〇。」
〇〇:「えっ、アルノ?」
アルノ:「ふふっ、久しぶり!」
高校の同級生の中西アルノがいた。
中西アルノ、高校時代の同級生。
ビジュアルといい、スタイルといい、両方が良くて
努力家でいつも頼りになる存在。
男女問わずに人気のある存在だったが
実は少々不器用な一面もある。
〇〇:「……久しぶり!」
久しぶりに再会したアルノ。
高校時代からより可愛くなってるアルノに驚きつつ
再会の挨拶を交わした。
どうやら、アルノは高校を卒業してから
東京の大学に進学したらしい。
それにしても、ここで会えるとは思わなかった。
アルノが隣に並び、一緒に駅へと歩きながら話す。
そして、僕はあることを思い出した。
アルノと初めて会ったの………いつだったかな?
遡ること約1年前
高校3年生になりクラス替えが行われた。
こうして僕の席の隣は、アルノになった。
〇〇:「あ…佐藤〇〇です。よろしくです。」
アルノ:「私は中西アルノ。よろしくね!」
〇〇:「うん。」(アルノさん、かわいいな…)
このときから既にアルノの可愛さに見惚れた僕は
平然を装っていても、心の中では鼓動が速くなる。
今思えば、この時から僕はアルノに
恋をしていたと気づいた。
初めてアルノと喋ったあの日から
アルノのことを少しずつ意識するようになり
あるときは……………
トン…(消しゴムが落ちた音)
〇〇:「あ………」
アルノ:「……………」
アルノが消しゴムを拾うと黙って僕に渡してくる。
〇〇:「ありがとう…(小声)」
僕が静かにお礼を言う。
あれ?言った瞬間、アルノが少し微笑んだのは
気のせいだろうか………
また、あるときは……………
アルノ:「ねえ、〇〇!」
〇〇:「何?」
アルノ:「この計算ってどうやればいいの?」
〇〇:「あ〜これは………………………………………
っていう感じでやればできるよ。」
アルノ:「お〜できた。ありがとう〇〇!」
アルノが笑顔でそう言ってくる。
アルノの笑顔を見る度に、心がドキッとして
毎回平然を装うことで気持ちを表には出さなかった。
でもアルノと一緒にいる時間は
どこか楽しくて居心地が良かった。
そして時が経ち、今こうしてアルノと再会した。
帰宅ラッシュに紛れて家へと帰る僕とアルノ。
吊り革につかまって流れる車窓を見ているアルノを
横目で見ながら僕は考えた。
あの時、アルノは僕のこと……どう思ってたのかな?
でも今更、僕はアルノに聞くことはしなかった。
それを聞いてしまえば、ほぼ告白みたいなものだから。
数十分後
アルノ:「じゃあ、私はここだから。
これからも仕事、がんばって!」
〇〇:「うん!アルノも大学がんばれよー!」
こうしてアルノは、家に帰っていった。
その日の夜
僕のスマホに1通のラインが届いた。
アルノL:「今日は久しぶりに会えてよかった!
ところで明日って何か予定ある?」
アルノからのライン。
アルノとラインをするなんて何ヶ月ぶりだろうか。
〇〇L:「何もないよ。」
アルノL:「明日、遊びに行かない?」
〇〇L:「いいよー」
アルノL:「じゃあ、9時にあのバス停に集合!」
〇〇L:「りょーかい!」
翌日
今日は久しぶりにアルノと遊びに行く日。
昨日ラインで言われたバス停にやってきた。
ここに来るのは、いつぶりだろう。
バス停の古いベンチ。
変わらない静かな海。
太陽と海の水面に浮かぶ防波堤の影が少しずつ動く。
この懐かしい景色を目の前に
高校時代の思い出が脳裏に蘇ってくる。
あの頃、ここにあった今は無きカフェテラスは
誰も停めてない空っぽのパーキングに変わっていた。
〇〇:(ちょっと早すぎたな………)
バス停のベンチでアルノを待つことに。
待つこと5分、遠くからアルノが歩いてくる。
アルノ:「ごめん。待った?」
〇〇:「いや…全然大丈夫だよ!」
アルノ:「じゃあ、行こう!」
〇〇:「え、ここからバスに乗るんじゃないの?」
アルノ:「ここはただの集合場所として決めただけ。
今日は、電車で行くの。」
そんなこともあったな…
ここからバスに乗るわけじゃないのに
なぜか遊びに行くときは
いつも、ここを集合場所にしてた。
距離も僕とアルノの家からそこまで離れていない
海沿いの道路にある唯一の目印になる、このバス停を。
電車に乗り、ショッピングモールへ向かった。
ショッピングモールに着くとアルノにリードされて
映画館、カフェなどに寄った。
映画館では……
〇〇:「何か見たいものがあるの?」
アルノ:「これ!」
上映されている作品のポスターをアルノが指さす。
僕たちと同じ年齢の男女が主人公の純愛作品だった。
上映中、スクリーンに釘付けになっている僕とアルノ。
その間は、お互い話すことは無いまま
上映時間の2時間が過ぎていった。
アルノ:「いや〜良かった!
〇〇もしっかり夢中になってて……」
〇〇:「そうだった…?」
アルノ:「うん。〇〇が退屈してないかなって
気になってたけどずっと動かなかったよ?」
〇〇:「まあ、ちょっと見入ってしまったかな?」
その後のカフェでは……
僕とアルノは2人席に座った。
アルノ:「そういえば、あれってまだ覚えてる?」
〇〇:「あれって何のこと?」
しばらく、思い出話で僕とアルノは盛り上がった。
〇〇:「何でそこまで覚えてるんだよ…笑」
アルノ:「だって、あのときの〇〇が
面白かったんだもん!笑」
そう言ってアルノがまた笑った。
自分のことでアルノが笑ってくれた。
アルノの笑顔が見られたことに鼓動が速くなる。
なぜなんだろう?何度も見てるっていうのに………
その後は、アルノの買い物に付き合ったり
荷物を持つことを手伝い、帰る頃に両手は
ショッピングモールの紙袋でふさがれた。
帰る時間になり
西陽がまぶしい車窓を見ながら地元まで帰ってきた。
アルノ:「今日はありがとう!
久しぶりに〇〇と遊びに行けて良かった。」
〇〇:「そっか…それなら良かった。」
アルノ:「あと…〇〇に伝えたかったことがあるの!」
〇〇:「何?」
アルノ:「実は私……今でも〇〇のことが好きなの。」
〇〇:「え、え………今…でも?」
アルノ:「うん。今でも……」
〇〇:「えっ、前から好きだったってこと?」
アルノ:「うん………///」
アルノが少し顔を赤くして頷く。
アルノがずっと好きでいてくれたことに
信じられない気持ちと喜びが込み上げてくる。
〇〇:「ありがとう。アルノ!
こちらこそ、よろしく!」
アルノ・〇〇:「wwwwwwww」
僕とアルノはお互いに顔を合わせて笑った。
アルノ:「ねえ、〇〇。」
〇〇:「………?」
アルノが顔を近づけてくる。そして………
チュッ
僕は、アルノに唇を奪われた。
〇〇:「……っ!?」
アルノ:「ふふふ………///」
数日後
アルノと付き合ってから、時間が合う日だけだけど
朝、途中まで一緒に通勤・通学するようになった。
その日は、アルノと駅前に集合する。
〇〇:「はぁ…はぁ…」(電車あと7分じゃん……💦)
アルノ:「もう!遅い………」
〇〇:「ごめんごめん。はぁ…はぁ…」
アルノと付き合い始めてまだ数日。
まだアルノとの思い出は少ないけれど
これから新しい思い出が生まれて
アルノの笑顔を見るたびに
アルノに恋をしたあの日を思い出すだろう。
僕はそう考えるのであった。
……………終