クレデンザ1926×78rpmの邂逅 #138~ビドゥ・サユン & ヴィラ=ロボス『ブラジル風バッハ 第5番』(1946)
ブラジルを代表する作曲家、エイトル・ヴィラ=ロボス(Heitor Villa-Lobos, 1887年3月5日 - 1959年11月17日)の代表作で最もポピュラーな作品『ブラジル風バッハ(原題:Bachianas Brasileiras)』の第5番。ソプラノ独唱と8つのチェロのための「アリアと踊り」(1938年作曲/1945年改訂)。
ヴィラ=ロボスは『Bachianas Brasileiras(バシアーナス・ブラジレイラス)』全9曲を「ブラジルの民俗音楽とバッハの作曲様式の融合」という観点から作曲しており、中でもこの第5番は国民楽派的視点から、民族的なリズムや旋法による旋律を多声的に処理することに成功した傑作である。
作品発表から現代にいたるまで、ソプラノ、特にレッジェーロやコロラトゥーラのオペラ歌手にとって大切なレパートリーとして定着し、音盤の数も多い。
そんな第5番の録音史の原点が今回取り上げたブラジル出身のソプラノ、ビドゥ・サユン(Bidu Sayão , 1902 年 5 月 11 日 - 1999 年 3 月 12 日) が作曲者自身の指揮の下、1946年にレコーディングしたこのSPレコード(のちにLPでも再発されている)。
チェロ独奏は当時はニューヨーク・フィルハーモニックの首席奏者を務めていたレナード・ローズ(Leonard Rose, 1918年7月27日 - 1984年11月16日)。
サユンはポルトガル、フランス、スイスの血を引く家系出身で、1930年代にはスカラ座やパリ・オペラ座にも出演。そして1937年2月13日、ルクレツィア・ボリの代役としてメトロポリタン歌劇場でマノンを歌い、大絶賛されその後もメトに出演を続けた。
サユンのメトロポリタンの出演回数は通算238回で、偶然にもこれは世紀の大ソプラノ、ネリー・メルバのメト出演回数と全く同じである。
イタリア、フランス・オペラのヒロインのほか、モーツァルトの諸役(スザンナやツェルリーナ)も彼女の魅力のひとつで、ブルーノ・ワルターのお気に入りでもあった。
サユンは1957年にステージから引退、2年後の59年、ヴィラ=ロボスのカンタータ『アマゾンの森』の世界初演ステレオ録音にソプラノ・ソリストとして参加したのが、サユン最後の録音となった。指揮はこの年の11月には世を去るヴィラ=ロボス本人だった。
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