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クレデンザ1926×78rpmの邂逅 #125~マルタ・アンジェリチ バッハ『全地よ、神にむかいて歓呼せよ』BWV.51 第1曲(1943)

マルタ ・アンジェリチ(Martha Angelici, 1907 年 5 月 22 日 – 1973 年 9 月 11 日))は、コルシカ島出身のフランスのソプラノ・オペラ歌手。スタイルはレッジェーロやコロラトゥーラ。

1934年にコンサート・デビューし、36年、マルセイユで『ラ・ボエーム』のミミ役でオペラ・デビューした。

そして、1938年にパリ・オペラ・コミック座にデビューし、一躍このオペラハウスを代表するソプラノとなった。
53年には『カルメン』のミカエラでパリ・オペラ座にも出演している。

オペラ歌手が必ずしもバッハの宗教声楽曲の歌い手として相応しいとは言えない。

このBWV.51の教会カンタータ『全地よ、神にむかいて歓呼せよ』はソプラノのためのソロ・カンタータとしてよく知られ、レコーディングの数も多い。
中には自らの声質やテクニックを披歴するためのショーピースとして取り上げるコロラトゥーラもいるが、カンタータを歌うというのは、オペラでアリアを歌うのとは大きく異なる。表面的な美しさだけではその本質には迫ることができない。
例えばエディタ・グルベローヴァもこの曲を録音しているが、格調ある清廉なバッハの音楽とは異なるものになってしまっている。

オペラにほとんど出演をしなかったアグネス・ギーベルやマリア・シュターダー、エリー・アメリンクといった優れたバッハ・ソプラノを除けば、20世紀中盤から終わりにかけて、オペラ、バッハの宗教声楽曲その両方で才を見事に発揮したのは、イルムガルト・ゼーフリート、エディト・マティス、ルチア・ポップ、そしてこのマルタ ・アンジェリチ など、ごく限られた人たちだったように思う。

マルタ ・アンジェリチには、パリ・オペラ・コミック座で名コンビと謳われたメゾ・ソプラノ、ジェルメーヌ・セルネイと共演した『イエスよ、汝はわが魂を』BWV.78の第2曲『われは急ぐ』の夢のようなレコードもある。

今回はクレデンザに竹針をつけて、ダイナミズムを多少犠牲にしても、アンジェリチのしなやかな歌声を再生してみた。
歌唱はフランス語。


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