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クレデンザ1926×78rpmの邂逅 #135~アストリッド・ヴァルナイ  ワーグナー『エリーザベトの祈り』(1942)

アストリッド・ヴァルナイ(ソプラノ)
ワーグナー:歌劇「タンホイザー」より「エリーザベトの祈り」
指揮:エーリヒ・ラインスドルフ
1942年4月12日 ニューヨーク・リーダークランツホールにて録音
コロムビア・マスターワークス  71399-D

アストリッド・ヴァルナイ(Astrid Varnay, 1918年4月25日 - 2006年9月4日)は、ハンガリー系アメリカ人のソプラノ・ドラマティコ(後年はメゾ・ソプラノに転じる)。特にワーグナーやリヒャルト・シュトラウスを得意としたヴァルナイは、戦後1951年に再開されたバイロイト音楽祭においてマルタ・メードル、ビルギット・ニルソンとともに「戦争後の3人の偉大なワーグナー・プリマドンナ」と称された。
それ以前、1940年代にはメトロポリタンにも出演しており、ワーグナーの作品に出演している。

今回のSPレコードは、恐らくヴァルナイがメト出演のためアメリカに滞在していた時を捉えて録音されたもので、指揮はメトのドイツ・オペラの責任者であったエーリヒ・ラインスドルフ。
ちょうどこの録音の約1か月前に、ラインスドルフとヴァルナイはメトの『ローエングリン』公演で共演している。

数々のバイロイトでの実況録音でヴァルナイの歌を聴くことができるが、彼女はセッション録音には積極的でなく、当時誇った名声のわりには人々の記憶に残っている歌手とは言えない。
先輩格のキルステン・フラグスタート、後輩のビルギット・ニルソンと比較して日本での知名度も低い。
録音嫌いに加え、ワーグナーとR.シュトラウス以外のヴァルナイのレパートリーが少なかったこともその要因と考えられる。

ヴァルナイの声はただ強いだけでなく、そこにそこはかと漂う暗さ、柔らかさに特徴があるが、バイロイト登場の約9年前、1942年4月12日に録音されたこのSP盤に、早くもその片鱗を聴くことができる。


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