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ロッテ・レーマン R.シュトラウス『献呈』(1941)

ロッテ・レーマン(Lotte Lehmann, 1888-1976)は、1941年夏、6月~8月にかけてドイツ・リート(シューマン、メンデルスゾーン、ワーグナー、ブラームス、R.シュトラウス、当時活動していた作曲家…)の録音をニューヨークで集中的に行っている。

6月24日に8曲(シューマン『詩人の恋』)、同月30日に3曲、7月に入り2日に5曲、9日に2曲、14日に5曲、そして8月13日に8曲(「シューマン『女の愛と生涯』)と合計31曲。
シューマンのピアノ伴奏はブルーノ・ワルター、後にLP初期にもプレスされたあの演奏である。

ヨーロッパからアメリカに渡り、オペラ出演からは遠ざかり、50歳を過ぎたころになると、往年の輝かしい歌声には若干の翳りも見えてきたレーマン。
ただ逆にリートへの没入ぶり、そしてその音楽と詞への洞察力はますます深くなり、レーマンのリート歌手としての絶頂はこの41年と翌42年(6月22日、25日の2日間でシューベルト『美しき水車小屋の娘』全曲を録音)にあったと言ってよい。

R.シュトラウスの4曲『セレナーデ』『明日』『万霊節』『献呈』は41年7月2日の録音(この日も録音されたもう1曲はメンデルスゾーン『歌の翼に』)。

R.シュトラウスとは親交があり、彼のオペラ初演に名を連ね、そして自他ともに認めるレーマン最大の当たり役が『ばらの騎士』の元帥夫人であったことはつとに知られている。
レーマンの気高く、威厳がありつつも包容力のある歌声(当時のコロムビア盤はレベルもハイカットで、声に張りがある)で、恋人への思いと感謝を伝える『献呈』の素晴らしさが、光の下で明らかにされたような傑作録音。
ピアノ伴奏はレーマン最大の理解者、ポール・ウラノフスキー。

HMV-102で再生。


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