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クレデンザ1926×78rpmの邂逅 #77〜エリーザベト・シューマン モーツァルト、フィールズ、シューマン、メンデルスゾーン、Jos.シュトラウス、グリーグ、マーラーを歌う

E.シューマン 生誕133年

今日6月13日は、ドイツ出身でアメリカに帰化したソプラノ歌手、エリーザベト・シューマン(Elisabeth Schumann, 1888年6月13日  - 1952年4月23日)生誕133年の日。
少し前にシューマンについては彼女が残したシューベルトのリートの78rpmと共に「note」に綴った。

シューマンの歌と恋に生きた波乱万丈の人生については、そちらをご覧いただければ幸いである。

E.シューマンのレパートリー

シューマンのオペラ・レパートリーは広域にわたっていて、ざっと挙げるとこんな感じ。

◆モーツァルト
『イドメネオ』イリア
『後宮からの誘拐』ブロントヒェン
『フィガロの結婚』ケルビーノ、スザンナ
『コジ・ファン・トゥッテ』デスピーナ
『ドン・ジョヴァンニ』ツェルリーナ
『魔笛』パパゲーナ、パミーナ
◆ベートーヴェン
『フィデリオ』マルツェリーネ
◆ウェーバー
『魔弾の射手』エンヒェン
◆ビゼー
『カルメン』ミカエラ
◆トマ
『ミニョン』ミニョン
◆Joh.シュトラウス
『こうもり』アデーレ
◆ワーグナー
『ニュルンベルクのマイスタージンガー』エファ
『ラインの黄金』ヴォークリンデ
『ジークフリート』森の小鳥
◆フンパーディンク
『ヘンゼルとグレーテル』グレーテル
◆プッチーニ
『ラ・ボエーム』ムゼッタ、ミミ
◆レオンカヴァッロ
『道化師』ネッダ
◆R.シュトラウス
『ばらの騎士』ゾフィー
『ナクソス島のアリアドネ』作曲家

役柄を見ていただければお分かりのように、シューマンはソプラノの中でも、レッジェーロからリリコにかけての声質だが、コロラトゥーラではない。
彼女は私が生まれた時には既にこの世には亡いが、私が実際にリアルタイムで聴いたことのあるソプラノ、つまりシューマンの3世代、4世代後の歌手で言えば、エディット・マティスのような存在だったのだろうか?
上のレパートリーもマティスのそれと重なるところが多い。

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また、シューマンとマティスは共にオペラだけでなく、リート、そして宗教曲にもその才能を遺憾なく発揮した点でも似ていると言えるだろう。

さて、今回はシューマンの音楽そのものではなく、彼女の78rpmについて少しだけ。

E.シューマン vs L.レーマン??


シューマンはドイツ・リートにおいては時代を代表する表現者であり、その活動の最盛期の後半が、78rpmの電気吹込み(1925年以降)時代に重なったこともあり、His Master's Voiceに数多く録音を残している。
シューベルトの稿にも記したが、私が最もリスペクトするソプラノ、ロッテ・レーマンとは同い年の親友で、レーマンがリリコからスピントにかけての声を持っていたので、二人のオペラのレパートリーは重なることはあまりなく、同じ演目で共に出演したり、『ばらの騎士』の録音でも共演している。
しかし、当然リートのレパートリー、モーツァルト、シューベルトからヴォルフ、R.シュトラウスに至るまでのドイツ・リートにおいては、ドン被りであった。HMVのシューマンに対し、レーマンはパロ―フォン、そしてアメリカに渡ってからはコロンビアと、レーベル間で考えれば競合していたはずだ。
78rpmは今のCDや配信、そしてサブスクリプションと比較して高価な嗜好品であった。

それを考えると、同じ曲をシューマンとレーマンの両方で聴き較べるなど、一般市民とっては出来なかったはずだ。
シューベルトやシューマン、ブラームスの名曲をどちらで聴くか?は究極の選択だったと想像すると、当時の愛好家の苦心が偲ばれる。

少し横道にそれるが、そういう事情があったからこそ、日本のクラシック音楽評論の祖とも言える野村あらゑびすは、78rpmを紹介、評論する際、「決定盤」という言葉を使った。大先生が太鼓判を押せば、買い手の迷いも相当軽減されただろう(しかし、一方でそれが音楽表現の多様性を歪曲、疎外することにもつながった)

現代の78rpmの需要と供給を俯瞰すると、2人のソプラノで恐らくよりバランスが取れているのはレーマンの方だ。彼女の78rpmは出回る数は決して多くないが、かと言って売価も驚くほどの高さではない。
一方シューマンの78rpmは数は、レーマンよりも市場に出てくる数は多いが、それ以上にそれを欲しがる人が多く、人気が高いのでレーマンより高い金額でトレードされていると思われる。

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今回はそんなエリーザベト・シューマンのリートを中心に7人の作曲家の歌を。

モーツァルト『いましめ』K.433
「マーラー『誰がこの歌を作ったのだろう』(『子供の不思議な角笛』より)
(ピアノ:ジョージ・リ-ヴス)録音:1930年2月

シューマン『ローレライ』Op.53-2と『セレナーデ』Op.36-2(ピアノ:ジョージ・リ-ヴス)録音:1930年2月

シューマン『女の愛と生涯』Op.42より第1曲『彼にあって以来』(ピアノ:ジェラルド・ムーア)録音:時期特定できず

そして、ここからはオーケストラをバックに。

ヨーゼフ・シュトラウス『天体の音楽』Op.235(指揮:レオ・ロゼネク) 録音:1934年6月23日

グリーグ『ソルヴェイグの歌』(『ペール・ギュント』より)録音:1937年

メンデルスゾーン『歌の翼に』Op.34-2 (指揮:レオ・ロゼネク) 録音:1934年6月23日

フィールズ(伝モーツァルト)『子守歌』(指揮:ローレンス・コリンウッド) 録音:1930年2月





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