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クレデンザ1926×78rpmの邂逅 #70~ロッテ・レーマン シューマン『女の愛と生涯』(1928)

今日午前中、ジェルメーヌ・マルティネッリがフランス語で歌うシューマンの『女の愛と生涯』の78rpmをご紹介した。

『女の愛と生涯』を歌う、ということ

私は『女の愛と生涯』を女性声楽家が歌う、という行いは「女優がNHK大河ドラマの主人公の若い頃から命尽きるまでを演じ切るのと同じこと」と思っていて、それを聴くことにより、その声楽家の本質をしっかりと心に留めることができる、といったちょっと可笑しなメジャーを持っている。
そして、何より8曲から成るこの連作歌曲集が大好きだ。

前稿でも綴ったように、ソプラノ、メゾ、アルト(コントラルト)に限らず、腕に覚えのある女性声楽家なら、リサイタルで取り上げ、幸運なアーティストならレコーディングもできるだろう。
誰の・いつの・どんな『女の愛と生涯』であっても、聴くに値しない歌などないような気さえする。

ただこれは余談だが、私のよく知るメゾ・ソプラノの素敵な声と表現力をお持ちのとある声楽家は、今まで人前で一度も『女の愛と生涯』を歌ったことがないし、自分のお弟子のレッスンにも使ったことがない、という。
これからそんなには長くはないであろう声楽家人生の中で、この事実はとても意外だった。
「歌うのが難しいし、いつも自分にはまだ早い、と思ってしまう」というのがその理由だということらしい。
私がしつこく「私も歌える場所を一緒に考えますから、歌ってみましょうよ!」と背中を押し続けていたら、取り敢えず自宅で自主練は始めたご様子。
こればかりは声楽家本人の気持ちに完全になり切らなければどうしようもないことだろうか・・・。

ロッテ・レーマン 1928年、1回目の『女の愛と生涯』

この「note」をよくお読みいただいている方なら、私がロッテ・レーマン(Lotte Lehmann, 1888年2月27日 - 1976年8月26日)の歌に目がないことは先刻ご承知と思われる。

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彼女の78rpmの数々について語り、その【ターンテーブル動画】をアップしてきた。たくさん記事があるので、例えばこれをお読みいただき、78rpmの音を聴いていただければ存外の喜び。

その中で1928年11月10日、ベルリンでのレーマン1回目の録音となる『女の愛と生涯』の78rpm10inch4枚組から、第1曲 『彼に会って以来』のみ、電気的再生でお届けしたことがあった。英パローフォン・オデオン・シリーズがオリジナルだが、私が所有しているその盤は、何故か4枚目(第7曲と第8曲)がなく、3枚だけの不揃い盤だった。

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いつか4枚目を補充せねばと思っていた矢先、大阪のストレイト・レコードで、とても状態のいい日本コロムビア製、しかもこれも状態の良いバインダー・ジャケットに入った4枚揃いを見かけ、即購入してしまった。

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この後、その音と彼女の生々しい声を実際にお聴きいただきたいと思うが、これはもう空前絶後である。
アコースティック録音(ラッパ吹き込み)の名残りか、伴奏はピアノではなく、レーマンが大活躍したベルリン国立歌劇場の指揮者で、パロ―フォンのハウス・コンダクターとして膨大なレコーディング・セッションをこなしてきたフリーダ―・ヴァイスマンが指揮する室内アンサンブルが担っている。

なお、レーマンはその後、1941年6月に彼女の”心の師“とも言うべきブルーノ・ワルターのピアノ伴奏で『女の愛と生涯』を再録している。

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そちらは声の深みが増し、振れ幅がより大きくなって、リート歌手としてのレーマンの神髄、達観のようなものを感じさせる歌だ。これにはこれの良さがあり、1928年、40歳のレーマンの歌にもその良さがある。

冒頭でも触れたことを具体的に言ってみれば、42歳大原麗子『春日局』を演じた一年間、「いつの春日局を演じていた時が一番感じ入ったか?」が観る人によって異なってくるのと同じ理屈だ。

【ターンテーブル動画】

というわけで、今回は日本コロムビア盤で全8曲、ロッテ・レーマン稀代のシューマン『女の愛と生涯』78rpmを、竹針をつけたクレデンザ蓄音機で。


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