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フローラ・ニールセン ヴォルフ『明け方に』(1949)

フローラ・ニールセンは 1900 年にカナダのバンクーバー島で生まれ、1歳の時に家族とともにイギリスに移住したメゾ・ソプラノ。

ロンドン王立音楽大学で声楽を学び、最初はソプラノだったが、数年後メゾ・ソプラノに転向した。

彼女についてはあまり資料が残されていないが、HMVにはこのヴォルフの『明け方に』(裏面は『この棕櫚の樹々のあたりに浮かぶあなたがた』)のほかに、シューマンを収めた1枚、シューベルトを収めた1枚(すべてピアノはジェラルド・ムーア)が少なくとも録音されている。
また、グライドボーン音楽祭ではブリテンのオペラ作品上演のメンバーとしても参加している。

フーゴ・ヴォルフ(1860-1903)は「ドイツ・リートの完成者」と呼ばれ、その作品はリート歌手にとって重要、そして探求すべきものである。

D.フィッシャー=ディースカウやE.シュヴァルツコップといった知性派歌手は演奏会でも録音でも数多く取り上げ、その評価も高い。
ただし、メロディが美しかったり、聴いて気持ちが穏やかになるというより、考えさせられる、といった作品が多いので聴衆にとって取っつき易い作品とは必ずしも言えない。
また、彼の精神の異常状態と作品との関連を考察する必要も少なからずある。

この『明け方に』は「メーリケ歌曲集」に収められた2分30秒弱の短い作品。
不穏なピアノの転調を繰り返して進み、歌も陰鬱な様相で進んでいく。
ただし、詞の内容は不安に苛まれながら浅い眠りから目覚めさせられてしまった主人公が、朝の太陽の光を受け止め、その不安や苦悩から抜け出し希望を見出そうとしている、というポジティヴな終わりを迎えている。

ニールセンの慎重でありながらも、確実に希望へと向かっていくような歌唱に耳を傾けたい。

相変わらずピアノの音が不安定に再生される(特にこのような曲調の場合は・・・)HMV-102で再生。

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