見出し画像

ブランシュ・テボム マーラー『朝の野を歩けば』(1950)

G.Mahler
Ging heut' morgens übers Feld
(Lieder eines fahrenden Gesellen:Ⅱ)

Blanche Thebom, mezzo-soprano
Sir Adrian Boult, coductor
London Philharmonic Orchestra

HIS MASTER’S VOICE D.B.9577
Shellac 12" 78rpm
Recorded 17 July 1950 at EMI Studio No. 1, Abbey Road, London

G.マーラー 『さすらう若人の歌』より第2曲「朝の野を歩けば 」
ブランシュ・テボム(メゾ・ソプラノ)
サー・エイドリアン・ボールト/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
1950年7月17日、ロンドン・アビーロード・第1スタジオにて録音

ブランシュ・テボム(Blanche Thebom, 1915年9月19日 - 2010年3月23日)はアメリカのメゾ・ソプラノ歌手。

メトロポリタン歌劇場には1944年12月のデビュー以来22シーズンで合計357回の出演を誇る。
メトで最も頻繁に歌ったのは『アイーダ』のアムネリスだが、彼女の名を最も高めたのはワーグナーの『ワルキューレ』のフリッカ役と同じく『トリスタンとイゾルデ』のブランゲーネ役と言ってよいだろう。
フルトヴェングラーがズートハウスとフラグスタートをタイトル・ロールに起用して録音したかの『トリスタンとイゾルデ』でブランゲーネに起用されたのがテボムであったことはよく知られている。

またそのエキゾチックでミステリアスな容姿も相まって、テボムは『サムソンとデリラ』のタイトル・ロール、『ボリス・ゴドゥノフ』のマリーナ、『サロメ』のヘロディアスなど、悪女系の役柄も得意とした。

歌手引退後は後進の指導に当たったが、アトランタ歌劇場の音楽監督を6年間務めたことは特筆すべきキャリアと言っていい。

そんなテボムが1950年7月にエイドリアン・ボールトが指揮するロンドン・フィルとレコーディングしたのマーラーの出世作『さすらう若人の歌』全4曲。

時は既にLPレコード時代で、実際この録音はアメリカではLPでリリースされたが、オリジナルのイギリス盤は12インチSPレコード2枚組である。

マーラーの歌曲のSPや初期LP録音は、同世代で友人でもあったヴォルフ、そしてリヒャルト・シュトラウスのそれと比較して極端に数が少ない。
現在では考えられないことだが、その時代にマーラーの作品は人気がなく、受容も進んでいなかった。
それは交響曲にも言えることで、SPレコード時代にマーラーで気を吐いていたのはワルターとストコフスキーを除けば寂しい限りである。

今回は全4曲の中から、そのメロディが交響曲第1番の第1楽章第一主題に用いられたことでも知られる第2曲「朝の野を歩けば 」を。

「若人」と訳されているドイツ語は”ein Geselle”で、本来の意味は親方の下で修業を終えた徒弟が、さらに技術を磨き、見聞を広めるために旅に出て修行する=「放浪職人」「遍歴職人」のことで、必ずしも若者とは限らない。
その意味では同じ放浪でも、人生の最後に向かって放浪するシューベルト『冬の旅』の主人公とは異なる。

テボムの清新さと彼女らしい色香も加わった名唱を、日本コロムビア最高級ポータブル蓄音機NODEL-221で。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?