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頭のかたちクリニック発の論文掲載のご報告

0歳からの頭のかたちクリニック東京で金・土・日曜外来を担当している 形成外科医の梶田です。
このたび当院の臨床データをまとめた論文が英文学術誌「Archives of Plastic Surgery」に掲載されました。
タイトルは「Efficacy of Cranial Orthosis for Plagiocephaly Based on 2D and 3D Evaluation」、日本語では「2次元および3次元的評価にもとづく斜頭症の頭蓋矯正療法の効果」です。

頭蓋変形を評価する際、一般的にはノギスのような器具を使用して、人手での計測が行われることが多いです。そのような直線的な計測によって得られる評価指標として、CA (cranial asmmetry) や CVAI (cranial vault asymmetry index) 、 CI (cephalic index) が挙げられます。
一方、当院では据え置き型の頭蓋計測に特化した3Dスキャナを導入しており、3次元データを解析して体積を求めることで、頭蓋の左右の大きさのバランスも評価しています。そのような3次元的な評価指標として、前頭部対称率や後頭部対称率が挙げられます。
CA・CVAI・CI は、3次元データから求めることもできます。当院では、過去の論文で報告された手法に倣って、頭蓋の最大平面に近い断面から得られる直線の長さを用いて、これらの数値を算出しています。これらは2次元的な評価指標と言えます。


引用元:論文のFig. 3
斜頭症の頭蓋矯正療法の効果について、日本では2014年に東京女子医科大学から、2021年に国立成育医療研究センターから、代表的な2つの論文が報告されました。これらはそれぞれ3次元的な評価指標と2次元的な評価指標を用いており、治療効果の直接的な比較が困難でした。そこで本研究では、2次元および3次元的評価を同時に用いて、斜頭症の頭蓋矯正療法の効果を示すことにしました。

なお今回は当院でクルムが導入される前の2022年10月までに来院いただき、アイメットで治療を行った1,639人のうち、短頭症を伴わない斜頭症の 1,038人 の患者さんを解析の対象としました。
結果として、2次元的な評価指標と3次元的な評価指標の両者において、頭蓋矯正療法の効果を実証できました。既存の研究と同様に、治療を始めるのが早ければ早いほど、その効果は大きくなることも確認されました。逆に言えば、治療開始が遅れれば遅れるほど、その効果はどんどん少なくなります。

乳児の頭蓋変形が重度の場合、健診で何もせずに様子を見ることは禁忌に近いと考えます。貴重な治療の機会を逸することなく、まずは治療の必要性について正しく評価するために、当院のような専門外来を受診することを強くお勧めします。
(頭蓋変形が軽度の場合、たしかに自然な成長の過程で良くなりますので、当院では治療をお勧めすることはありません)

Archives of Plastic Surgeryはオープンアクセスなので、以下のURLからどなたでも原文を参照できます。
https://doi.org/10.1055/a-2222-1494
治療開始時の月齢と重症度別に、本治療の効果をグラフにまとめましたので、ご参考になりましたら幸いです。

なお当院では現在、主にアイメットではなくクルムでの治療を行っています。クルムでのデータも集計し、アイメットと遜色のない効果が得られていることを確認しています。

乳児の頭蓋矯正療法について、まだ日本ではあまり知られていないことが多いです。より多くの人に正しい情報が発信できるよう、今後とも精進してまいります。ご不明な点がございましたら、ぜひお気軽にお尋ねください。

東京クリニック 医師 梶田 大樹

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