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アルカノイド【バブル時代のサボリーマン】

タイトー 1986年12月26日発売

原作は同年に発表されたAC版です。当時のゲーセンはマニア向けの作品が幅を効かせており、お金を落としてくれると云う意味に於いて良いお客であったサラリーマン(所謂サボリーマン)たちは、随分と肩身の狭い思いをしていたと云えるでしょう。

そんな折りに突如発表された本作は「ブロック崩し」を現代風にアレンジしたものでした。

誰もが知っていて遊んだ事のあるゲーム内容に進取の気勢は見えませんが、退嬰と時間潰しの権化たるサボリーマンにはまさしく神のようなゲームに映ったのではないでしょうか。シンプルなゲーム内容に中毒性のある淡々としたゲーム性、アイテムの引きによる適度なランダム性。反射神経にのみ頼らない知的な佇まいなど……インカムの高さも相俟って以後の評価を紛う事なき名作へと押し上げました。

実際のところカラフルなゲーム画面とパドルコントローラーを使った良好な操作性。透明感のある素晴らしいサウンド。壊せないブロックと耐久力のあるブロックの追加アイディア。絶妙な難易度設定……これ以上はないと云う高みで完成された作品に仕上がっています。

また、これは全国に多くの直営店を持っていたタイトーだからこそ企画し得たマーケティングの勝利だったと云えるかも知れません。

本作の社会的ブームを受けて、各メーカーも「ブロック崩し」リメイクに参戦しますが、元祖リメイク作品の完成度を前にして三番煎じほどの評価も得られませんでした。

以後タイトーはビデオゲーム黎明期の名作をリメイクし出します。

ドットイートゲーム「ヘッドオン(1979 セガ)」を「レイメイズ(1988)」として。

風船割りゲーム「サーカス(1977 Exidi)」を「プランプポップ(1988)」として。

陣取りゲーム「QIX(1981 タイトーアメリカ)」を「ヴォルフィード(1989)」として。

プランプポップを除けばリメイクの枠を超えてやろうとする気概も見えますが、残念ながらヒット作品とはなりませんでした(ここらの考察は以後機会があったら書く予定です)。

またアルカノイドの続編として「アルカノイド リベンジ オブ Doh」を翌1987年に発表しましたが、思ったほどのインカムと評価も得られませんでした。

続編としてはグラフィックスが美しくなり、ラウンド数やアイテム増加と正常進化したものだったのですが、操作性がやや良くなった以外、ゲームとして蛇足をしか感じないものとなっています。それだけ「アルカノイド」が完成した作品だったと裏書きしたに過ぎなかった訳です。

ファミコンへの移植版はかなり忠実に再現したものとなっています。専用のパドルコントローラーまで付いていて、操作方法からもゲーム性を追求しようとした節があります。

ただ原作の縦画面を家庭用TVの横画面に移植した事で、ブロックと操作するパドルの位置が近くなり、随分と難度が上がってしまいました。

粗製濫造のタイトーにしては真面目な仕事に見えたのですが、もう少し融通を利かすか考えて欲しかったところですね。

2012.07.01


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