花束

足が濡れていました
もっと早く気づくべきだったのかもしれませんが
目の前で煌々と光るネオンに気をとられてしまっていたようです
そのネオンも本当に美しいものかは私にはわからないのです
でもきっとそれを美しいと世間は呼んでいるのかもしれませんが
そういえば、私はその世間というものもわかっていなかったようです

特に拭くものも無かったものですから、とりあえず手で、そうですね、右手には花束を手にしていたものですから、左手で左の足の裏の水を拭いてみたのです
これもまた、もっと早く気づくべきだったのかもしれませんが
どうやらそれは赤い液体でした
血と呼ばれるものだったのだと思います
これは一体誰の血だったのでしょう
後ろを振り返ってみたのですが、どうやらだいぶ長い間その赤い絨毯の上を歩いてきたようです

その時ある人が、私の目の前に立ち、指を指して、こう言いました
「その右手のナイフを離しなさい」
私は驚きました
一体何を言っているのかがわからなかったからです
確かに私の右手には色とりどりの花があります
なので私はこう言いました
「愛する人にこの花束を届けに行きたいので、早くそこを退いてください」

#創作大賞2024 #オールカテゴリ部門

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