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へそをくっている

へそくりをしている。
へそくりはエライ。

へそくりとは。

へそくりは「臍繰り金(へそくりがね)」の略だが、へそくりの「へそ」と、人間の「へそ(臍)」は全く関係ないものである。
漢字の「臍」は混同からの当て字で、本来は「綜麻繰り金」と書く。
綜麻(へそ)とは、紡いだ麻糸を環状に幾重にも巻きつけた糸巻きのことで、「苧環(おだまき)」ともいう。
その綜麻を繰って貯めたお金を「綜麻繰り金」と言い、「へそ」が人間の「臍(へそ)」と誤解され、「臍繰り金」と書かれるようになったのである。

「語源由来辞典」

「へそくりしているよ」と言ったら、夫も「おれもしてる」という。
夫のへそくりは、語源由来辞典の文章のなかのどこにも、はなから当てはまらない。彼は「お金に困った女性」ではない。

お金に困った女性たちが、麻糸を紡ぐ内職でお金を蓄えていたのが由来、ということらしい。
昔は、家庭の女性が自分のために自由に使えるお金なんか、なかっただろう。糸繰り内職という時代なら、働きに出ることもなく一日中、家事に従事していたことだろう。
内職の収入だって丸ごと使えたわけじゃない。家計の足しにして、それでもなんとか、へそくり分を捻りだしていたのだろうと思う。

私のへそくりはもっとのんきだが、無収入なのは変わりない。
外に出るなり内職するなりして自分の収入を得ようともせず、夫の収入や家の仕事(ささやかに個人事業主です)でやりくりする中で、ちょこっと、「とりわけて」いるのだ。珈琲半杯分ほどの額を。

しかし「ちりつも」で、このへそくりはなかなか頼れる。
今回の白内障治療では、自分が「斜位」という目ん玉であることがわかった。両眼だと焦点が合わないので、プリズム加工した眼鏡をかけることになった。
その眼鏡ができあがり、るんるんな気分でかけてみたら「えっ、なにこれ?」なのだ。ぎぼぢわ゛る゛い゛・・・
「しばらくかけていたら慣れてきますよ」とは言われたが、まず、ちょっとでもかけていられない。

はい、つくりなおしーーーー!!

そんなこんなで処方箋を2回作ってもらい、2回目もだめで、結局プリズムはやめることにした。
多分、視力が不安定なうちに焦って眼鏡を作りたがったためだろう。
少々の視界のズレは昔から慣れている。
普通のレンズに戻ればいいだけの話だ。
ただそれでも、出来上がりには一週間かかる。

プリズムなしなら普通に「じんず」とかで作れて、当日から使える。
私にとって眼鏡は眼であり、やっぱり、予備がないとひじょうに困る。
それで、その「じんず」でちゃちゃっと作ってもらうことにした。

その、まあ、贅沢費用として、このへそくりさんが役に立ったのだった。


へそくりやめられない~~~!
と思ったのはこういうことばかりでなく、思いがけない出費のときにも心強い。

前触れもなくやってくる、家庭置配の薬屋さん。
「次は4か月後です」とはいうものの、ざっくりすぎて忘れている。
で、いきなり来て(私の感覚としてはいきなり)、はい、今回は7千円です、とか法外な値段を言い渡される。
明日銀行行かなきゃ、とか思っているその夕方に!
7千円。予告もなく耳を揃えて7千円。
そんなのあるかい!!
(※義母は風邪薬を常備薬的に飲んでいるから、決して法外とは言えない)

でもザラザラ薬を飲むだけ飲んで「今日、お金ないの」と言ってはお縄なので、「うーん、どっかにあるか?」と脳みそを高速回転させて、あっ、へそくり!!となる。
「ぐぐっ、靴買いたかったのになー」
なんて思いながら、その場をしのぐのだ。
いいんだ、またせっせとへそくるのみ!!
(去年この倍近い支払いだったときは、さすがにあとで義母に請求した)
(;^_^A

へそくりとは言っても、結局、こういう家計の助け的な出番のほうが多い。自分だけの嗜好品やだれにも理解してもらえない必要品(て、なんだ?)なんてそうそうあるわけではないから。
家計の足しにへそくりを使った時には、家計から戻しておく。へそくり封筒にもちゃんとメモしておく。

こうしてへそくりは頼りにされ、我が家では確固たる地位を保っているのだ。
へそくりさん、これからもお互いがんばりましょう。




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