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パステルBBa~act2~

夕方、マル太郎と排泄と散歩のため外に出る。
散歩といってもあまり歩かない。玄関の階段下のカーポートまわりを
30分くらい徘徊するだけだ。いやほとんどじっと止まっている。

そろそろ気温が下がってきたので、玄関へと誘導していると
「あら!まあ!」と聞き覚えのある声が。
例のパステルばーちゃんだ。背筋がむずむずとなる。
「あ、どうも、こんばんは」一応ご挨拶する。

「まー、この頃姿を見なくなったと思って。
そしたら昨日、線香の匂いがして。
まー、いつもブルブル震えていて可哀想にと思ってたら。
百合子さん(義母)が、1日に4回もあんたと散歩に出るって言ってたのに全然見かけなくなったから。
線香の匂いがしたから、まあ可哀想にと思ってね。
これ、『わんちゃんへ』とメモ書いて持って来たから、玄関に置いて行くね」

何を言わんとしているかは明快。
つまり、マル太郎がとうとう・・・と思ったから仏壇にお供えを持って来たよ、というのだ。

ハラワタが煮えくりかえって口から飛び出しそうになる。
元気にここでおしっこしている姿を見たとたんに、その予想はひっこめるべきだろう。口に出さないでおくのが常識ってもんだろう。

ひとっことも言いたくなかった。
顔を見ずに「ありがとうございます」とだけ言っておいたが。
この人はこうして腹の中に浮かんだものを全部なんの吟味もなく、体の外にぶちまけるのが好きらしい。
気持ちよさそうにペラペラと出てくるもんだ。

そのあと、めっちゃ元気が出て、このクソBBaめとののしりながら動いた。
お供えの銀杏(なんで銀杏!?)は即ゴミ箱へ捨てた。
メモはビリビリに破いてこれも捨てた。
藁人形クラスのうらみつらみだ。

心に浮かぶことではあっても、何も知らない他人が面白半分に、しかも私に、「かわいそうに」とか、言ってくれるな!
胸糞悪い!!

この怒りの力は少し体調が悪い時には有用なのだ。
つぎつぎと動ける。
いろんな迷いをちぎっては投げちぎっては投げ、サクサクものごとが進む。
あとはどうなったって知るものか。


ずっと昔にあったことを思い出す。
娘がお腹にいて、つわりが辛かった時だ。
どうにかこうにか晩御飯の用意をして、夫や次男が食卓に着いたとき
「あ、おとうさん、兄ちゃんのご飯食べさせてからにしてくれる?」と口にするや否や、夫は食べかけたご飯をばっと吐き出したのだ。
「え?」とびっくりしたが、すぐに何か気に障ったのだとわかった。
私の言い方もタイミングも悪かったのかもしれない。
食べ始めた人に「先に兄ちゃんに食べさせて」なんて言ったから。
お互い虫の居所が悪かったのだろう。
夫はそのまま自室へ引っ込んだ。

私はこんな仕打ちが理解できず、腹もおさまらず、夫を追いかけて行ってガンと1発ドアを殴って、「いい加減にしろ子どもじゃあるまいし!!」とわめいた。
そのまま戻って、長男に食事介助をした。心臓はバクバクしているのに気持ち悪いような笑顔で、なぜか優越感に浸りながら。

すると、ずっとつわりでモヤモヤとしていた体が、スッキリしたような気がしたのだ。テキパキ動いて片付けもした。
怒りの推進力。
私にはそんな傾向があるのかもしれない。


あ、だから平和な時は何もしないのかな。うへへ。

話がそれた。


そんなこんなでまた今日も夜がきた。
マル太郎と家の前でうろうろしていると(1日4回)、またいずれパステルBBaに出くわすことがあるのだろう。
(ばーちゃんからBBaに昇格した!)

彼女の勘違いは仕方のないことだけど、ただ、思いの丈の全部を口にしないでもらえないだろうか。
もう80有余年生きてきているんだし。

うーん、しかし、それで80有余年生きてきているということは・・・

うーん、これはまたいずれ降りかかってくるってことかな。

うへー(◎_◎;)

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