おでかけの日
長男の住む施設では、年に何度かのお出かけの日がある。
園の行事やお出かけは、コロナ流行期は中止になっていたが、徐々に解禁されてきている。
部屋ごとや、希望する行き先ごとなどで、入所者3、4人に職員がそれぞれついて出かける。
家族にもお誘いがあり、私も行ってきた。
園とわが家との中間あたりにある「錦鯉の里」というところだ。大きな施設ではないけど、昔からの特産品である錦鯉のテーマパークなのだ。
錦鯉にはあまり興味はないのだが(コラコラ)、近くに住んでいて行ったことがなかったので、楽しみだった。
入り口で長男たちと合流して、中を見て回る。
大きな水槽にいるいる。当たり前だけど、錦鯉がいーーーっぱい泳いでいる。観光客から餌をたくさんもらうから、みんな丸々立派な体格だ。
(おいしそうではない)
これにさらに餌を投げ入れる。
あっちでもこっちでも、鯉が密集して大きな口をポカポカ開けて、競って食べている。
鯉の上に鯉が乗っかって、えらいことになる。
鯉on鯉。
陸に上がりそうだ。ちょっとコワイ光景である。
口が、口が、口が・・・
脳裏に焼きつく。
そんな時も長男はよそを向いている。
見せようと車椅子の向きを変えると、また反対を向く。小さい頃からの長男あるあるである。
「オレは見たいものしか見ないよ」ってか。
引率の職員さんが長男に
「あれー、◯◯さん、上見ていたの?
わー、上も綺麗だねー!」
というので天井を見たら
天井がこんな鏡になって水槽の上をぐるりと囲んでいた。ここに映る鯉たちを眺めていたのか?確かに、万華鏡みたいで目が離せない。
気が付かなかった。いいとこ見てるなあ。
水槽の部屋の外は堀を巡らせた庭園で、暖かくなると鯉たちはそちらでも泳げるようになる。
鯉の身になってみたら、すごく嬉しいだろうなぁと思った。
あらかた見たあとはお土産コーナーへ。
1人2000円の予算で自分用にお土産を選べる。
長男は、錦鯉がたくさん泳いでいる模様の、藤色の日本手拭いを選んだ。
これをネッカチーフとして喉の気管切開部を守るよう巻くのが、長男のささやかなおしゃれだったりする。
予算は余ったが、帰路に水分補給のジュースを買うらしかった。
お昼時間で、お腹が空いただろう。職員さんも長男達も。
私もマル太郎の昼ごはん時間なので、どこにも寄らずに家に直帰した。
玄関を開けると「アオーン」と一声、マルの声。
普段は滅多に声を出さないので、何事かあったのかと急いで顔を見に行く。
しかしどこといって変わりがなかったので安心した。
この頃は、大きなうんこが出そうなとき(健康便なので、普通サイズなら平気)と、フローリングが滑って立ち上がれなくて切ない時などに、「アオーン」と一声、呼ぶようになっている。
マル太郎も、1人にするのが心配になってきた。4時間以内ならと思っていたが、だんだんそれも難しくなりそうだ。