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アニメがJ-POPのレベルを上げた

アニメの主題歌は、今や「アイドル」のような大ヒットを生み出していますが、昔はもっとマイナーな世界のさらにおまけ的な扱いを受けていました。
しかしだからといって過去のアニソンがどうでもいい音楽だったわけではなく、非常にクオリティの高い隠れた名曲がいっぱいあります。

今回は、アニメファンの定番曲ではないですが私が思う過去の名曲を、最近のヒット曲と合わせてご紹介します。


Creepy Nuts|Bling-Bang-Bang-Born

Creepy Nutsは代表作と言える曲がなく一般的にはまだ知る人ぞ知る感がありましたが、アニメ主題歌という取っつきやすさとアニメに合い過ぎるラップとサウンドでついに世間に見つかったようです。

DJ松永が作るトラックは軽めの音で、ラテンぽい跳ねたリズムと面白いヘコヘコした音、それにマリンバかビブラフォンか分かりませんが同じ音が鳴り続けるという聴きやすい構成となっています。

もちろんR指定のラップは凄いですが、韻を踏みまくった高速ラップが終わりサビに入るとその終わりに「超Flex」「Don’t test」みたいな覚えやすいフレーズを配置して分かりやすいオチをつけてくれる優しさを感じます。

日本語ラップは今まで「面白い」か「怖い」か「洋楽の日本語化」ばかりだったような気がしますが、そのどれでもない「賢くて軽妙」とでも言うべき正解をついに出してくれたという感じがして、本当にうれしいです。


Official髭男dism|Cry Baby

東京リベンジャーズの大ファンであるヒゲダンのボーカル藤原が主題歌を熱望して作ったという話ですが、その甲斐もあり非常に凝った転調だらけの作品となっていて、下記の解説動画を見ればよく分かりますが、曲の終わりまで常識をひっくり返し続ける素晴らしい作品となっています。

「クリシェ」と呼ばれる典型的なコード進行をことごとく裏切り、意地でも普通の曲に落ち着かせないぞという覚悟が伺えるある意味怪作で、4分しかないとは思えない展開の多いマニアックなこだわりに満ちた作品です。

ヒゲダンはこの曲以外にも「I love…」などでも、1曲の中に複数の曲が入っているような複雑な構成を好むアーティストで、東リベのような複雑でトリックの多い作品にとても合っていると感じました。


チーム"ハナヤマタ"|花ハ踊レヤいろはにほ

次に毛色のまったく違う2010年代の曲をご紹介しますが、これは田中秀和というアニソンの名人というか複雑なコード進行をやりすぎることで一部界隈で有名な作曲家の作品です。

「花ハ踊レヤいろはにほ」は、初見ではちょっと和風のかわいらしい曲に聴こえますが、実は複雑な転調だらけの非常に凝った作りになっていて、音楽評論家の誰かが昔、「こんな凝ったサウンドを毎週聴いて育った小学生が将来どんな音楽を作るようになるか楽しみ」と書いていたのを覚えています。

専門家の方はこの解説動画で理解できるかもしれません


STAR☆ANIS|Move on now!

そしてもうひとつがアイカツのこの曲になりますが、私は子供に付き合わされてアイカツを見ていてこの曲が登場したとき、女児アニメにはありえないハイレベル楽曲の登場に本当に驚きました。

これはボサノバやジャズテイストのよくできた曲でしかもラップパートもありますが、私は、そもそもなぜ小学生女子しか見ないアニメに突然Paris match(?)のようなおしゃれサウンドを持ってきたのかという制作者の意図に衝撃を受け、それでこの田中秀和という名前を覚えました。

アニメやゲーム等子供向け作品の作り手が、周囲の目がないのをいいことにいい意味でやりすぎてしまい、結果的に今までない作品が生まれることがありますが、私はこのアイカツの楽曲がまさにその一例だと思います。


広瀬香美|Groovy!

森川美穂|POSITIVE

1990年代まで遡るとだいぶ雰囲気が変わりますが、今回はこの有名アーティストが作った2曲をご紹介します。

前者は「カードキャプターさくら」、後者は「らんま1/2」のともにED曲で、今聴くと非常に90年代感が強いJ-POPの良曲でパワフルなボーカルがとても印象的です。

まだこの頃はテレビ放送の威力がとても強くさらにCDバブルと重なって、有名アーティストがアニメ主題歌に続々進出して曲を売りまくるといったマーケティング主導的な動きが強い時期でした。

このあたりから、昔のアニソン専門歌手と制作者がベタ過ぎる曲を量産していた時期が終わり、プロのミュージシャンが普通のポップな曲を作り始め、アニソンのレベルが非常に上がったように記憶しています。


斉藤由貴|悲しみよこんにちは

飯島真理|天使の絵の具

最後に80年代、斉藤由貴の曲はめぞん一刻のテレビアニメ主題歌、飯島真理は超時空要塞マクロスの映画の挿入歌です。

今聴くとアレンジや音色に80年代のシンセポップみがとても強く、歴史の古さと相まって懐かしさを感じますが、曲を聴けばわかるようにとても良いメロディとサウンドです。

「悲しみよこんにちは」は意外にもあの玉置浩二の作曲、「天使の絵の具」は今のシティポップにも通ずる良曲を多く作った飯島真理の自作で、作品のタイトルや必殺技を連呼する曲が多かった昭和のアニメソングにしてはかなり異色だったのではないでしょうか。


最後に振り返ると、昭和のアニソンの狭い世界(それはそれで味わい深いものでしたが)からメジャーなアーティストの参加が増えた90年代を経て、たぶん2000年代くらいにそれが普通の水準となり、今ではむしろアーティスト側からアニメの世界をリスペクトした作品が増えてきています。

YOASOBI、AdoやCreepy Nutsのような日本独自のアニメと音楽の相乗効果で世界に進出する事例が増え、ますますJ-POPが唯一無二の個性を持って進化していけるといいですね。




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