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TUNICをプレイしました

軽い気持ちで買って後悔

とある日のNintendo Directで、クォータービューのゼルダライクなゲームが紹介された。

とある島に漂着した、小さなキツネ。
このゲームは、操作方法も目的も、最初は何もかもわからない。
唯一の手がかりとなる説明書ですら、冒険を進めないと一部しか読むことができない。
全てが手探りの中、さまざまな仕掛けやバトルに挑む。
徐々に解き明かされていく、島の謎。
そして、その先に待ち受けるものとはー。
Nintendo Direct 紹介ナレーションより

ゲーム映像と中村悠一氏の軽快なナレーションの感じから「ほーんなんか謎解き要素もあって面白そうやな」と特にググることもなく軽い気持ちで買ってプレイ開始。そして気付く違和感。

容赦のない集団リンチ

「もしかして、このゲームすげぇバトルバランスがシビア…??」

そう、このゲーム、やわらかなビジュアルと穏やかな音楽の雰囲気と裏腹に、世界は殺意に満ち溢れている。HPも防御力も乏しい序盤でも、雑魚敵は容赦なく主人公を集団リンチをかますし、主要ボスは明らかに数十回死ぬことを前提に難易度を調整している感に溢れている。そのため、ニンダイの紹介だけを見てなんとなくジャケ買いしてしまったライトユーザーは、戦闘のシビアさへの覚悟が足りぬままこのゲームを始めると「週末にパパッとやれるゲームではない!!」と本腰を入れざるを得ないだろう。私もその一人だ。

幾度となくボコられた

戦闘に関しては特にストーリーボスは本当に慈悲がないので、難易度(いつでも変えられる)を下げたところで、何も考えずにガチャプレイしたら屍の山を築き上げること間違いなし。なんとか全部のボスを通常難易度で倒しクリアはできたが、相当アクションに自信がある人でない限り難易度はEasy(減少)にし、本当に無理なら公式の無敵チートを使うことを検討した方が良いと思うくらいだった。

行動パターンを見極めて戦う

そしたらバトルが面白くないのかと言えば、あくまでも「軽い気持ちでやるべきではなかった」という後悔をした程度で、ソウルライクな高難易度なゲームが好きな人には刺さる内容じゃないかと思います。理不尽に感じる(特にカード面)点もあるが、主要ボスの各攻撃にはちゃんと予備動作もあるので、ちゃんとモーションを見ればわかるようにはなる(避けられるとは言っていない)

ゲーム世界の謎解きを含め、一応ある程度は遊んだし、バトルについては意地になってノーマル難易度で最後まで通すことができた。なお、プレイ時間は19時間程度(ゲーム内にスピードラン向けのIn-Game-Timeタイマーが設定されている)

以下、ゲーム内容のネタバレを含めて感じたことを書いていこうと思う。なお、ゲーム内容、特に謎解きに関心のある方はここで引き返してゲームをプレイして欲しい。

「わからなさ」の妙

まず、このゲームをどのようなプレイヤーがやるかを想定してみると、ボス戦の難易度設計から考えれば「この手のゲームを含めいろんなジャンルのゲームをプレイきている」層に向けていると感じる。「ゲームを全くやったことない」層に対しては本当にわからないように出来てあり、「ゲームをそこそこやってきている」層には「なんかわからないけど興味が湧く」ように作られている。少なくとも私のようにそこそこゲームをやってきた人間にとっては、慣れ親しんだ操作でキャラが動いていくため、わからないけど突き放されている感覚はなく、スムーズにゲーム世界に入れた。

説明書11ページから始まる

このゲームは宣伝文句にもあるように「わからなさ」をすごく大事にしている。この世界の仕組みは全て世界に点在する「説明書」に書いてあり、その説明書も一部分を除き全てが未知の言語(TUNIC語とでも呼ぼうか)で記されている。言葉はわからなくても、かわいく、豊富なイラストによりプレイヤーの理解を深められる(投げ出さずに済む)工夫が感じられた。

「何これ」とふと操作を停止してしまう

宝箱から獲得できるアイテムは全てTUNIC語で書かれているせいで、余程わかりやすいビジュアルじゃないとそれがどのような効果効能を示すのかがわからない。ちなみにゲームは即時セーブ仕様のため、とりあえず効果を試すためにアイテムを使うと二度と戻って来ない。おそらくセーブ&ロード封じだとは思うが、この仕様を道中のボスでやられると負けを重ねるたびにジリ貧になっていくため、それだけはなんとかして欲しかった気はする(爆弾は救済措置?的に使い込むと自然に生えてくるのだが、それでも足りない)

祈りの姿勢

道中で少しずつ説明書を手に入れることで、新しい操作にも気づくことができる。スティック入れでAボタンは回避行動で、回避後にAをホールドすることでダッシュができるというのは最序盤に「わかる」アクションで、多用することになるのだが、途中で手に入る説明書にAボタンを3秒以上ホールドすると祈りのポーズができるという風に、Aボタンの新たな使い方
が「わかる」ようになる。

フックショット(仮称)で行ける場所が増える

また、道中にある意味ありげな音叉やフックのオブジェは最初はどんな意味をもってるかわからなく、とりあえず剣で叩いてみたりするが、攻略を進めていくとゼルダ世界でいうフックショットが手に入り、そのおかげで今まで行けなかったところや回り道をしていたところが「わかる」ようになる。それでも行けない場所がまだある。ということは次はこんなアクションがあるのでは…と、ゲームの進行度に応じて次第にわからないものがわかるようになっていく。

敵に炎上させられたときに、普通のゲームなら数回スリップダメージを受けたら自然に消えるのに、なかなか火が消えずダメージを受けてるのはなぜ?紫のモヤがかかっているところで継続ダメージを受けないために必要なものは?このアイテムの意味は何?と、よくわからない説明書を見つつ考えたり、試したりすることがゲーム慣れした人たちにも刺さるような内容になっていると感じた。

説明書は世界の攻略本

よく見たら現在地がわかる

今のゲームはダウンロード販売も増え、資源の節約と言いつつパッケージ版から紙媒体の説明書もなくなり、攻略情報にしても今や企業がマンパワーや集合知でwikiを作るようになり、攻略本はどちらかといえばデータベースや特典込みのコレクション要素に変わってきているように思う。

メモ欄には書き込みや落書きが

私は小学生のころあまりゲームを買ってもらえなかった(※)のだが、その代わりに(?)友達の持っているゲームの攻略本を買ってもらうことがあった。その攻略本をどうしていたかというと、ゲームがやれない分知識でカバーできるようにと、攻略本を熟読するようになり、鉛筆で攻略本に情報を書き込みボロボロになるまで使っていた。当然持っているゲームについても攻略本を買ってもらっていたし同様のことをしていたが、おそらく持ってないゲームの攻略本を持つというのはなかなか例がないと思われる。

(※)世間一般の家庭に比べて、据置機が敬遠されていたためほぼ持ってなかったのですが、その分携帯機に関しては人並みに買い与えられていました。
コーヒーのマグを置いた跡があったり

TUNICのゲーム内説明書は「人の手が入って使い古された」感がありそれだけでもノスタルジックな気分にさせてくれたのだが、「ゲーム攻略本への書き込み」が持つ意味は、上述の少年時代の私がやっていることと同じく「攻略にとって意味のある情報」であるということだ。

説明書をコンプしろと言わんばかりのクリア画面

おそらく、ネットで調べたら出る情報に頼らず、手探りでこのゲームの最終バトルを超えてクリアすると、どっかのホロウナイトの黒卵に閉じ込められるやつとよく似たバッドエンドを迎えることになるだろう。また道中に戻り説明書を拾う作業を始めると、縮地アクション(仮称)を使って手に入れられるページから新たな収集要素とそのヒントとなるコマンドが提示される。そういえば、オプション画面によくわからない方向キーを入力が記録されるメニューがあったり、道中になんか意味ありげな模様があったなと。はじめは説明書に載ってる模様を探し、そこからは世界に散らばる模様を探し…

コマンドを入力するメニューがある
世界に隠された「コマンド」を紐解け
意味ありげだけど、最初はわからない

説明書を集め、落書きや意味ありげな模様を集めていき、その集大成として攻略本の全体を使った「最後の謎解き」が解けるようになる。それこそ攻略本を拡大してじっくりページを見渡さないと気付けないようになっており、私は攻略本の謎解きページのスクショをiPadに転送し、ゲーム画面の説明書を見返しながら、Apple pencilの手描きでスクショに直接書き込んでいくという、それこそ小学生の時分にやってたようなことを30代になってツールを変えて経験するとは思えなかったし、その結果一発で正解できたことに非常に嬉しさを感じられた。

謎のコレクションアイテム

説明書を完成させもう一度ラスボスの元へ向かうことで物語のエンディングが変わり、「ゲーム世界の住人」もまたこの謎の世界のインストラクションを求めていた歴史があったということが判明する。一応グッドエンドを迎えたということでこのゲームに一区切りをつけることにしたが、謎のアイテムについてはおそらくコンプできていない。説明書に書いてあるTUNIC語の解読方法を読み解くことで「完全に理解」しそれらのアイテムの在処もすべて分かるようになるかもしれないが、きっと時間がかかるだろうし、そこで今更攻略情報に頼るのもこのゲームの趣を損ねてしまいそうなので、これ以上は手を出さずにいておこうと思う。というか今はゲーム内の言語よりもリアル外国語の習得を優先しないといけない。

最後に

表紙がついた「攻略本」

つらつらと書いてきた通り、このゲームは私の原体験に訴えかけるようなつくりになっており、個人的に「刺さる」作品ではあったしその点については最高によかったのだが、戦闘面については「謎解きだけじゃ勿体無いから戦闘は難しくしとけばいいでしょ」といった感じで、消耗アイテムのやり直しが効かない仕様と、装備切り替え画面でポーズ状態にならなかったのが個人的には辛いところだった。加えて、盾パリィのモーションのもっさり度と操作ボタンには最後まで慣れることができなかった。とはいえ、それを想定した無敵チートやスタミナ無限などといった超ゆとり仕様も備えており、メインコンテンツはあくまでも「世界の謎解き」であると感じ、私も初回クリア後は基本的に無敵チートで走り回って謎解きに集中できたので、最後は満足感をもってゲームを終わらせることことができたと思う。

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