5th stage サンドストームは
2wink、と聞いてワッ!(オブラート)となるひとが増えたストーリーだと思う。
このスチル、よく見なくても先輩の背中に座ってにこやかに微笑んでいる後輩のスチルなのだが、これが発表された時はまだ、ゆうたくんを茶化すような声が多かった気がする。
そしてそれを茶化せなくなったのが、5thステージ サンドストームの分割スト後半が配信されてから。ゆうたくんの覚悟と報復がはじまったから。ゆうたくんが一時「炎上キャラ」になってしまった原因にはこれがあると思っている。
サジェストに暴言が並んでいるのをドキドキしながら見ていた。だってみんなの主語が「葵ゆうた」になった瞬間だったから。
あんスタ作中の炎上キャラは天城燐音と斉宮宗だけれど、ユーザー間ではこの、葵ゆうたくんと、『MaM』の三毛縞斑のほうが印象が強い、気がする。
サンドストームは、中国地方予選会で不当な扱いを受けていたアイドルの、その不当な扱いを指示、操作していたのが運営と取引をしたゆうたくんだった、という話。自分たちを含めた不当な扱いを受けたアイドルを救済するために運営側についたふりをする、本当は味方だよ、という可能性まで丁寧に潰して、ゆうたくん、『2wink』は、本気で先輩を殺しに行った。実際血が流れたり傷ついたりするわけではないけれど、あんスタ的に言えば、そう。
この予選会、SDSの裏側まで把握していたのは、当事者では葵ゆうただけ。ユニットリーダーの、兄のひなたが受け取るはずだった指令と取引を、弟のゆうたは兄と入れ替わって受け取っている。運営的には2winkのどちらか、なんてのはどうでも良かったのだ。
その内容はSSが終わって物語が進んだ今でも、まだ兄には伝わっていない。
ひなたは不毛なデスゲームに放り込まれ、ゆうたの共犯に、実行犯になった。
サンドストーム後半部分はとにかくゆうたが喋る。特に不毛なデスゲームの後半、ひなたのスチルが入ってBGMが変わってからエピローグに入るまでずっと喋っている。楽しそうに、煽るように。フルボイスが追加されてから、ここの長セリフの「嫌さ」が増したと個人的に思う。あまりに綺麗なのだ。声が、言葉が。ゆうたくんは基本的に主語を「葵ゆうた」から外さないので、俺から見たときに、俺たちがどれだけ傷ついたかを、丁寧に説明してくれる。今までおまえたちが、いかに俺たちを蔑ろにしていたか、舐めていたか、ということを。
ゆうたくんはこんな子じゃないんです、こんなことするわけがない。
本当はいい子なんです。
ひなたはゆうたのために、一緒に泥を被ったんです。
いろんな言葉を見た。葵ゆうたのことを必死に守ろうとする言葉たち。自分が応援していたアイドルが、まさかひとを傷つけ、露悪的に振舞うなんて、それに対するフォローがないなんてと、戸惑うファンたち。
今までの2winkが好きなら好きなだけ、傷つくような、そんなファンを見た。
それと同じくらい、最悪こいつ、恩人に対して、という言葉も見た。
彼らが傷つけた相手の方がファンが多くて、傷つくひとが多いからそういう意見が目立つんだろうなとも思った。2winkが踏み台にされてデビュー戦最下位でも仕方ないなあって言わせてずっとずっと負け犬でも大丈夫だよって言って。ゆうたくんのあれは闇落ちでも不穏でも反抗期でもない。ずっと言っていた。なるべく言葉を選んで、茶化して。
彼らはひとに愛されたいから、ひとが好きだから、その親しみやすさがゆえに蔑ろにされて踏み台にされて、そんな彼らでもずっと、言っていたのだ。それをみんなが全然聞いてくれなかったから、ここまで攻撃してはじめてやっと対等に話ができる。
2winkは、ローテがきっちり回ってくるタイプのソシャゲの登場人物じゃなかったら、さっさと退場する脇役の子分ポジだったと思う。死ぬ瞬間が最大の見せ場になるタイプの。
彼らは、ずっと生きて、叫んで、お互いの吐いた血反吐や膿を啜ってお互いの体でしか暖をとれないような冬を越えて、根腐れした根っこが乾いた大地で芽吹くとき。
フルボイスにあたって、シナリオ内のlive2Dの表情が何か所か変更されている。
あたしが印象に残っているのは、羽風先輩に対して、ひなたがどうして? と聞くシーン。
この顔を見て、ああ、ひなたって後悔しているんだなと思っていたオタクは、ここにひなたの覚悟を感じた。一年間、ひなたの覚悟に気づかないでいたことをごめんね、と思った。
ひなたは最初から、葵ひなたの意思で動いていた。なにも知らない中、弟との非言語コミュニケーションと今までの人生で培ったスキルを使って、先輩を傷つけ、俺たちがプラスになるように動いたんだと。
あたしは、サンドストームの2winkの開花前のスチルが大好きだ。コインを奪うひなたと、先輩を足蹴にするゆうた。
悪いから、好きなのではない。
それがふたりの覚悟だと感じられたから。
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