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北信越リーグに密着。地域サッカーのリアルを追った『クラシコ』

みなさん、こんにちは。ヨコハマ・フットボール映画祭note公式マガジン第13回を担当します、スタッフの高橋です。よろしくお願いします。

今回は、「YFFFオンラインシアター」の『クラシコ』をご紹介します。

2009年の北信越フットボールリーグ(当時4部相当)に参加した松本山雅FC長野パルセイロを中心に、地域サッカーのリアルを映し出しています。社会人サッカー地域リーグに焦点を当てた本作は、チームを応援するサポーターを主軸にしたドキュメンタリー作品です。

地獄の北信越

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2009年当時のJリーグはJ1、J2の2部のみで、Jリーグを目指すクラブチームはアマチュアリーグ最高峰のJFL(当時3部相当)昇格を目指していました。当時4部リーグ相当の北信越リーグは、「地獄の北信越」と言われるほどの激戦区。集客力の高い専用スタジアム「アルウィン」を本拠地とする松本山雅FC、イラン代表などを歴任したブラジル人名将バドゥが率いる長野パルセイロ、強力なブラジル人選手を有するツエーゲン金沢、チーム力に長けたJAPANサッカーカレッジの4強が優勝を争っていました。優勝チームはJFL昇格をかけて戦う全国地域サッカーリーグ決勝大会(現・全国地域サッカーチャンピオンズリーグ)の出場権利を得られます。

ポテンシャルの高いチームがしのぎを削っていた当時の同リーグは正に地獄でした。2009年に4強の内2チームがJFLへ昇格し、翌年も1チーム昇格。現在3チームがJリーグに加盟しているため、振り返るととんでもない状況でした。

歴史的因縁と信州ダービー

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映画のタイトルの「クラシコ」はスペイン1部のレアル・マドリード、FCバルセロナのダービーマッチ「エル・クラシコ(伝統の一戦)」が由来です。欧州のダービーマッチは歴史的な地域間対立から敵対意識が生じると言われています。長野パルセイロと松本山雅FCの「信州ダービー」は、長きに渡って松本市と長野市がいがみ合ってきた歴史を背景に、大きな盛り上がりを見せました。

橋本純一信州大教授「(日本で)クラシコと呼べるような試合は松本と長野以外ない」
―同作抜粋―

元々は長野県(長野市)と筑摩県(松本市)の2県に分かれていた両都市。1876年の筑摩県庁消失による長野県との県統合から続く確執は、サッカーにおいても激しさを見せました。同作は信州ダービーの背景にある対立と歴史を丁ねいに取材しています。現在松本と長野は所属するカテゴリーが異なるため、公式戦のダービーマッチは2012年以降開催されていません。

松本の情熱的なサポーターたち

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同作の真骨頂はチームを支える人々の声を記録している点です。主に松本サポーターに密着し、彼らの姿を包み隠さず映し出しています。Jリーグを目指す地元チームに夢を見るファンとクラブは、地域密着のあり方を示唆しているように見えます。敗北の嘆き、勝利の歓喜、そしてスタジアムで鳴り響くチャントと、サッカーのだいご味をフィルムを通じて伝わってきます。

北信越リーグで繰り広げられた激戦の先にある結末は―。地域サッカーを十二分に楽しめる同作から目が離せません。

今の松本と今後への期待

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同作公開からちょうど10年の月日が経ちました。松本は2度のJ1昇格を経験し、現在はJ2で戦っています。松本への期待をサポーター、かつてチームに所属していた高崎寛之選手(ベトナム1部サイゴンFC所属)からお聞きしました。

男性サポーター
「競技を専用スタジアムで見る楽しみ、臨場感、興奮はもちろんあるが、一スポーツを超えた市民の間のコミニュティとなっている。松本山雅の期待としては仙台、新潟、鳥栖の様に地方クラブでもJ1に定着したい」
女性サポーター
「Jクラブが松本にできたことは夢のようなことで考えられなかった。J1に定着できるようになってほしいし、いつか(カップ戦やリーグ戦を)優勝してアルプス一万尺を歌いたい」
高崎寛之選手
「松本は僕を再生してくれた場所で、感謝の気持ちでいっぱいです。町全体がアットホームで大好きです。松本はサポーターのチームなので、ファンを元気にするために、勝つために頑張ってほしい」

北信越リーグ時代から変わらぬ熱量で、サポーターや選手のチームを思う気持ちは変わりません。今後の松本の動向が気になるところです。


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『クラシコ』
ヨコハマ・フットボール映画祭2011 最優秀サポーター賞受賞
英題:Clasico on the Edge 監督:樋本淳
出演:安めぐみ(ナレーション)、AC長野パルセイロ、松本山雅FC
97分/ドキュメンタリー/2011年
©クラシコ製作委員会2010
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