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ベレンコ中尉亡命事件と空自のF-35B部隊について

■ベレンコ中尉亡命事件ではMiG25とF-4EJとの間で空戦はあった?


軍事系YouTuberのさぶかるCHAOS TVさんの動画に1976年のベレンコ中尉亡命事件で
西側への亡命のために日本領空に飛来したヴィクトル・ベレンコソ連防空軍中尉の
操縦するMiG25と空自千歳基地からスクランブル発進した第2航空団の
F-4EJどの間で空戦が行われた説が語られている。

念の為に前置きしておくがさぶかるCHAOS TVさんはこの説はジョークであり
あり得ないとの見解である。

まずMiG25の戦闘行動半径は400km程度と言われている。これはF-15Jの約2000kmの
5分の一に過ぎない。
元々MiG25はソ連防空軍向けの迎撃機として開発された経緯があり
外征を行う空軍向けに開発されたわけではない。確かにフェリーなら
余裕でウラジオストクから北海道に到達できるだろうがベレンコ中尉の機体は
低空飛行と急上昇、急降下を繰り返しているのでこれはフェリーではなく
戦闘行動半径での飛行と見るべきだろう。実際ベレンコ中尉の証言でMiG25が函館に
到達した時には燃料は空同然になりかけだったという。そんな中で
F-4EJとの空戦などできるわけが無い。またMiG25は低空飛行を駆使し、
F-4EJのレーダーはルックダウン機能が脆弱でロストを何度もしており、
MiG25が函館市内を旋回していても位置をつかめなかった。またこの事件を機会に
導入されたE-2Cはまだ導入されていなかったのもロストの原因であり
度々ロストしていたのに空戦など不可能である。更にベレンコ中尉は
空自機との空戦の話はしていない。つまり空戦は無かったと見るべきだろう。
もちろんさぶかるCHAOS TVさんもそれは承知の上でお話をされているのだろう。
ただ陰謀論者はパロディサイトやジョーク話を真に受けてソースにする傾向がある。
Qアノンなどは米俳優のトム・ハンクスさんが米軍に逮捕されて処刑されたなんていう
パロディサイトを真に受けてトム・ハンクスさんはディープステートの一員で
トランプ軍(?)に逮捕され処刑されたとデマを吹聴しているので
これは事実ではないと強調するために一筆した。

■海自の名目上のF-35B部隊は何故設置されない?

前回の記事で英空軍のF-35B部隊が海軍のF-35Bを運用し、空軍の人員が
海軍のF-35B部隊を兼任しているとの記事を書いた。

では海自も名目上のF-35B部隊を設置して空自のF-35B部隊(第5航空団)が
兼任すればいいのでは?という意見もありそうだがいずも型護衛艦はF-35Bを最大でも14機しか
艦載できないのに対してクイーン・エリザベス級空母は60〜70機も艦載が可能なので
わざわざ名目上の「海自のF-35B部隊」を設置する必要が無い。まして統合運用の時代に
わざわざ「海自のF-35B部隊」を設置する必要性もない。英軍はF-35B部隊は空軍が
海軍の部隊を含めて統括している。もちろん人員も空軍の軍人で構成されている。
さらに言うと岩国の米海兵隊のF-35B部隊がいずも型護衛艦に
艦載する可能性もある。現にクイーン・エリザベス級空母には英空軍のF-35B部隊である
第617飛行隊と米海兵隊第211戦闘攻撃飛行隊が艦載されており、
空自のF-35Bは7機のみが艦載されてDDGと共に艦隊防空のみ行う可能性が高い。
特に台湾有事ではこの形態になると考えられる。アメリカ級強襲揚陸艦には
F-35Bの他にV-22、UH-1Yも艦載されるのでいずも型護衛艦にも
F-35Bが空自機と共に艦載される可能性を考えればわざわざ「海自のF-35B部隊」を
設置する必要性は乏しくなるものである。

■ソース

https://www.reuters.com/article/factcheck-tom-executed-idUSL1N2PC2NK/ 


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