装備品のライフサイクルコストから防衛費を考えてみる

防衛装備庁が2020年と2021年に公表した「プロジェクト管理対象装備品等の新規選定等と
取得プログラムの分析及び評価の概要について」を見てみると2020年度のF-35Aのライフサイクルコスト総額は4兆1千億円となっているが2021年度では3兆9千億円に下落している。僅か一年で2千億円もライフサイクルコストが下った事になる。要因としてF-35の導入国が増えた事によるコンポーネントの量産効果やF-35シリーズの大人買いが大きく影響している。防衛装備庁はライフサイクルを抑えるために米政府が主導しているF-35シリーズのまとめ買いの参加による量産効果と国内FACOのコスト低下によるライフサイクルコストの低減を提言している。閣議決定された安保3文書でも5年間の間にF-35シリーズを全て調達する事が明文化されたのもライフサイクルコストの軽減が目的と思われている。これが実現すれば米空軍が提案しているF-35シリーズの普段の訓練を廉価な練習機で行う高度戦術練習機(ATT)の導入の必要性も無くなる。

「プロジェクト管理対象装備品等の新規選定等と取得プログラムの分析及び評価の概要について」2021年度版より
「プロジェクト管理対象装備品等の新規選定等と取得プログラムの分析及び評価の概要について」2020年度版より


「プロジェクト管理対象装備品等の新規選定等と取得プログラムの分析及び評価の概要について」2020年度版より


「プロジェクト管理対象装備品等の新規選定等と取得プログラムの分析及び評価の概要について」2021年度版より

さらにF-35シリーズの調達が完了すれば調達費も削減されるのでその分を他方面に振り分ける事も可能になる。またF-35シリーズの調達コストは米軍向けでも7,790万ドル、F-15EXはターゲティングポッドや電子戦システムを含めると1億200万ドルにもなると航空万能論GF氏は伝えている。前出のようにF-35シリーズの調達コストはさらに廉価になっていく事が予想される。

これまで防衛費増額では岸田首相は防衛の為に増税は必要と言ってきたがF-35を見る限りはその必要性には大いに疑問がある。せっかく円安効果で企業収益が伸び、経団連や連合などの財界や労働界が本格的な賃上げを打ち出してるのにそれに冷水を浴びせる増税は経済や国民の生活のみならず防衛政策にも悪影響でしかない。F-35シリーズを増やせば防衛費の節約やF-15SJやF-2のコンポーネント生産終了による空自機の稼働率の低下にも歯止めがかかるのそれが理解できていない。恐らくだが増税ありきの財務省の官僚の影響かも知れない。それは悪手であり下策以外の何物でもない。

一方F-35をポンコツだの整備費用で国が滅ぶから亡国のF-35と言ってる人々も低下しつつあるF-35のライフサイクルコストに一度でも目を通しただろうか。結局F-35という戦闘機が気に食わない、もしくは有人戦闘機が気に食わない、ドローンだけを並べれば抑止力になると思っている摩訶不思議な理論や反米ナショナリズムによる悪弊がここに出てきている。

さらにこうした事は軍事ジャーナリスト、軍事評論家、軍事マニアも調べていき問題があれば防衛省防衛監察本部や会計検査院に伝えていくべきだ。また防衛省の予算使用の明細書や防衛装備庁のライフサイクルコストの評価を見ると情報開示の必要性が改めて重要であり、必要以上に黒塗りの文書を開示したとある自治体がいかに愚行なのかを再認識する事が出来た。

■ソース
https://www.mod.go.jp/atla/soubiseisaku/project/gaiyo_r030831.pdf

https://www.mod.go.jp/atla/soubiseisaku/project/gaiyo_r020930.pdf

https://www.mod.go.jp/atla/soubiseisaku_project.html

https://grandfleet.info/us-related/instructed-by-the-secretary-of-the-air-force-to-consider-discontinuing-procurement-in-the-future-of-the-uncertain-f-15ex/

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