高校2年生の冬
校庭で2学期の終業式が始まった。
バレーボール部だっただろうか、大会で良い成績を修めて表彰されていた。私は、列の後ろのほうで彼女らの姿をぼんやり眺めていた。
「〇〇〇〇さん、前に来てください。」私の名前が呼ばれたように思った。えっ?空耳!?目をまん丸にしてゆっくり後ろを振り返った。
後ろにいた友達は、別の子と喋っていて放送の声を聞いていなかった。
え?私の名前が呼ばれたの?
しばらくして、国語の先生がやってきた。あなた〇〇さんやね?前に出なさい。呼ばれているよ。
え?
聞いてない!!
表彰される生徒は、コートを脱ぐように言われているのに、私はまさに着の身着のまま朝礼台の前に行った。
どうやって賞状を受け取ったかは覚えていない。拍手の中、自分の列に戻っていった。
スゴイ!見せて!
いつ書いたん?
そんな声が聞こえる中
私は、聞いてない。聞いてないねん。
知らんかった。と言い続けた。
本人が一番びっくりしていた。
その日は午前中で学校が終わった。
帰宅すると、パートに出かける直前の母がいた。
「お母さん、見て見て!表彰されたよ!」
興奮する私をよそに、母は「良かったね〜。」と言って背中を向けた。
「もういいわ。喜んでくれると思ったのに。」
涙があふれてきた。
私は、それほど嬉しかったのだ。
それまでの私には華やかな記憶があまりない。高校受験に失敗し、レベルの低い高校に行った。
入学式の日も笑っていなかった。
3年間我慢しよう。クラブにも入らず予備校に通った。
そんな私の元にやってきた幸せだった。
つづく
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