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「イズ・エヴリシング・オウライ?」ライナーノーツ(的なの)

2020年から2021年にかけて、仕事が飛びに飛んで、社会も荒れに荒れて、個人的に刺さってきたことをがばりとからげてソングサイクル(オムニバス形式のミュージカルの一種)にした作品「イズ・エヴリシング・オウライ?」。2021年12月25日初演。ご覧頂いた皆様、スタッフの皆様、出演者の皆様、応援して下さった皆様、ありがとうございました。(千穐楽がおわってから配信版を観てみたのですがスイッチングが想像の50倍すごいやつだったので驚愕しました。いつのまにこんな観やすい構成に?どうなってんの?昭和生まれのアナログ女には謎でしかありません。)

さて、配信のお供にでも、そうじゃなくても、各曲についてのノーツ書きます。もしご興味ありますれば。

そもそも…

フィクションの世界の人達が色んな現代的なお悩みを抱えててそれを披露するとしたら、という薄ら構想が以前からあり、現代的なお悩みがあまりに2020~2021に増えたので、ここいらでひとつ、つくっておくかーと思ったのがこの作品の成り立ち。

No.1 Is Everything Alright?

著名な人間と人間以外の登場人物達が問い掛ける、オープニングのテーマソング。タイトルは「Is everything alright?」=何かお困りですか/大丈夫?と、「オウライ」=手紙/交流のミックス。わたし、国文学科出身なのですが、1年間、往来物(手紙とか寺子屋の教科書とか)だけを読みまくる授業をとっていたことがありまして、「オウライ」ってプリミティヴだけどほんとに人間らしい産物だなあと思ってその授業が好きだったんです。これはただの雑談です。

No.2 異レギュラー

雪女×ネグレクトを、オフブロードウェイ風に。幼少時代、テレビドラマでそんなにこわくないというか寧ろ暖かい家族の物語として描かれた雪女をみたことがありました(なんのドラマだろう)。雪女さんも本当は素敵なひとなのかも、昔からそう思っていました。

No.3 海辺の恋物語

乙姫と亀さん×格差社会を、昭和歌謡テイストで。乙姫さんが亀さんより2800歳上で、年収もケタ違い。そのことを気にしない人も気にする人も、きっと居てしまうのがわれわれの国、そして社会。や、しょっぱいぜ。

No.4 スピード

狼さん×あおり運転を、プレスリー風で。運転すると性格がかわる、といいますよね。お酒と一緒で、変わるのではなく出てくるのではないかと個人的に思っていますが、免許をもっていない私が言ってもしょうがないので免許とってからまた検証します。なんにしても、あおり運転はやめましょう。

No.5 キッチン

桃太郎×同性カップルを、みんなのうたチックに。某議員さんが「レズビアンやゲイが広がってしまったら、足立区は滅んでしまう」との趣旨の発言をしたことが切っ掛けで、レズビアンやゲイ当事者を含む多くの人たちが「自分の住んでいる街は全然滅んでないよ」「足立区も滅びないから安心して」とコメントや写真をTwitterに投稿したことをモチーフに、こんな世界線があったとしたら…な、歌。

No.6 #(ハッシュタグ)

ヘンゼルとグレーテル×SNSデモを、レトロキュートミュージックで。この種のデモは、コロナ禍ならではの新事象の最たる例ではないかと個人的に思います。いっぽう茨木のり子さんの詩「自分の感受性ぐらい」は令和になろうとなんだろうと、個人的にはじぶんの心にきざんでおきたいことばです。

No.7 WALLIOR

ダヴィデ×中東戦争を、ラテンの風吹かせ気味で。タイトルは「warrior」=戦士と「wall」=壁のミックス。2021年、壁に囲まれた「世界最大の刑務所」とも呼ばれるガザが攻撃されたとき、2020年に一旦完成していた本作でしたがこの歌を加筆しました。きくところによると、攻撃を仕掛けている側のイスラエルの若者の中にはパレスチナ問題を知らず、なぜ自国がガザを攻撃しているのか理解していなかった方が居たそうです。平和ボケはどの国にも存在するのか…という個人的な感想を歌詞にのせました。あとは、イスラエルの壁に描かれたバンクシーの「花を投げる少年」を思い浮かべながら。

No.8 BREATHE

鬼×Black Lives Matterをミドルテンポの3拍子で。絵本の鬼が赤い色なのは、侵略してくる欧米人をたとえているという話をきいたことがあります。本当かどうかは知りません。このことについては「なぜ、人は…。」が深まるばかりで、自分の中に答えがありません。

No.9 個性を大切にね

ピノキオとかぐや姫×マウンティングを軽快なスウィングで。三大欲求はよく申しますが、仏教では五欲というのがあるそうで、三欲の他に財欲と名誉欲が足されるそうです。うわぁ~わかるぅ~。人間だものねえ。承認欲求って、ない?ねえ、しょうがないよねえ。ダメ?

No.10 フェミニンズム

ムーラン×フェミニズムを70年代風のロックバラードで。今回のトライアウト初演で「筋トレの歌」として親しまれ(?)ました。はたらく女性のみなさん、やっぱり先輩の殿方の発言にムカッとしたことあったりします?私は、ありますよ(笑)。実力みせて跳ね返したるわー!と思って頑張って今は仲良くなりましたけど。って思ってるの私側だけだったらどうしよう。あーしんどいねえ。

No.11 ダークサイド・ヒーロー

リンゴ×ドラッグにビートルズエッセンスを2滴ほど足して。人間弱いよね、でもイヴの時代からそうなんだからしょうがないよね。さっきから「しょうがない」ばかり言ってる気がする。それでも人生は続く。

No.12 ダイアリー

裸の王様の家来×同調圧力を、全14曲の中では最もミュージカルらしい構成で。どんなひとも「No」ということが少なくともできる現代は、先代よりまだマシだと思っています。流されないでいたいな。…かの王国の家来が、毎晩帰宅してから自分の日記に言いたい放題書いてたらどんな感じかな、と思ってこの歌になりました。

No.13 返信不要

ソングサイクルは基本的に1曲で1話が完結しますが、これはNo.2と繋がっており、更には次曲のラストにも繋がっています。

No.14 Alright

オープニングのアンサーソング。アンサーとはいえ、人生には答えなんか見つけられずに終わると思ってはいますが。

以上、こうして文章だけ読むとすごく社会派作品にも見えますが、楽曲はそんなことないです(はずです)。とにもかくにも素晴らしいオリジナルキャストメンバーで聴くことができ自分自身がしあわせでした。またどこかでどなたかに歌って頂けますように。トライアウト初演、ありがとうございました。

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Photo by相澤祥子

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