神楽ひかりはなにをしたか

ロンドロンドロンドを観ました。
っていうかロンドロンドから劇場版スタァライトへの連続観劇をしました。イオンシネマ海老名……ありがとう……!
ということで、この二作の関連性についての話です。

ロンドロンドロンド(以下:ロロロ)と劇場版 少女☆歌劇レヴュースタァライト(劇ス)の間にはなにがあったのか。それを考察していきます。

今回は神楽ひかりについてかなり重点的に話す回になります


ロロロと劇スの繋がり

まず、ロロロを観た人は劇スに違和感を覚えませんでしたか?
ロロロの最後で、ひかりとばななが向き合います。そこでひかりは、「私たちの舞台はまだ終わってない」みたいなことを言いますよね。

それなのに、劇スがいざ始まったらひかりはロンドンに渡航しており、選抜組とは関わっていません。ロロロの意味深な終わり方なんだったの、となりますよね。

この場面でwi(l)d‐screen baroqueという単語が出ていることから、ひかりのこのセリフは劇スのことを指している、と考えられます。

ここで気になるのが、ばななとひかりの間でどんなやり取りがあったのか、です。そこで交わされた会話が元で、おそらくは劇スが始まり、ひかりは日本を離れた、と考えられるわけです。

結論を言います。ロロロと劇スの間で、神楽ひかりによる再演が行われています。

ちょっと突拍子もないように聞こえるかもしれませんが、そう考えるのが今のところ一番無理なくロロロと劇スをつなげられて、ひかりの行動を説明できるんです。

順を追って説明します。まず、ロロロとTVシリーズにおいて、華恋が戯曲 『スタァライト』の結末を変えました。結果、ひかりは星摘みの塔から解放され、エンディングとなりました。大場ななの再演は神楽ひかりという要素が加わったことによって、華恋の覚醒をもって途切れました。ここまではいいですよね。

ではロロロの最後、ばななとひかりはなにを話したか? それこそが「舞台少女の死」と「再演」なのだと思います。ななからこれらのことを聞いたひかりは、今度はひかり自身の手で再演を行う。
ひかりは一周目の記憶を保持したままなので、星摘みの塔に囚われることなく、再び星のティアラを戴く。

そうして再演したひかりが望んだ「運命の舞台」が、『劇場版 少女☆歌劇レヴュースタァライト』なのです。

そう考えると、劇ス冒頭のひかりの口上も筋が通りませんか?
「生まれ変わったひかりを胸に 命が求める新たな血肉」
というやつです。「生まれ変わった」は再演と、TVシリーズでも起きていた「キラめきの再生産」、ひかりの短剣がキラめきを取り戻すことの暗喩。「命が求める~」から続く一節はwi(l)d-screen baroqueのこと。つまりこの時点で、すでにwi(l)d-screen baroqueは予感されている。

そして極めつけに、このときの口上では「99期生 神楽ひかり」と名乗ります。つまり、まだ聖翔に所属しているのです。つまりこの冒頭シーンこそが、神楽再演における最後のレヴュー、ロロロやTVシリーズでひかりと華恋がぶつかったレヴューに相当するわけです。

「相当する」、という曖昧な言い方をしたのは、おそらくロロロと劇スでは戯曲『スタァライト』の結末が違うからです。
ロロロの『スタァライト』は華恋によって「塔に幽閉されたクレールを開放する」ものへと変わりましたが、神楽再演を挟んだ劇ス冒頭では「今こそ、塔を降りるとき」と語っています。
つまり、二人は星を摘まずに自ら塔を降りるというエンディングに変わっている。
それを示すのがひかりのセリフであり、「塔」の爆破解体シーンなわけです。


明確な根拠と呼べるものは示すことができませんが、劇中にはロロロと劇スの間に再演が入っていると考えないと不自然な箇所があります。

一つは、皆殺しのレヴューの前、香子はんが「うちはずっと待ってましたんや」と言うシーン。香子は新たなオーディションの始まりを待っていた、と語るのですが、おかしくないですか?

もしもロロロやTVシリーズから劇スに繋がるなら、香子は「オーディションは他者のキラめきを奪う」こと、「神楽ひかりが自らを犠牲にしてみんなのキラめきを奪わなかったこと」を知ってるはずですよね。

にもかかわらず、双葉のキラめきを奪うことになると知っていてなお、香子が「次のオーディション」を望むとは、ちょっと考えにくくないですか?
先述したように、ひかり(クレール)が「塔」に幽閉されていないとすれば辻褄があうんです。ひかりが自らを犠牲にしていないのだから、香子は「オーディションは他者のキラめきを奪う」ことを知りようがない



もう一つは、皆殺しのレヴューで星見純那が言う「こんななな、知らない」と「私たちまだ未成年じゃない」です。まず、「未成年」のほう。ロロロでは純那は大場の「再演」について知ったはずです。「ずっと守ってくれた」とわざわざ大場に言っているので、まず間違いないでしょう。つまり、純那は大場が(肉体的にはともかく)精神的には一回も二回りも年上である、という認識があるはずです。そこで「未成年じゃない」って発言はちょっと引っかかります。

「こんななな、知らない」という発言。これについてはもっと単純で、神楽再演の中では大場ななはそもそもオーディションに参加していない可能性があります。

参加枠は8人、ロロロでは華恋が飛び入りしましたが、再演ではわざわざそんなことする必要ありません。大場としても、自分の再演が途切れることがわかっているのにオーディションに参加する理由がない。ひかりが一周目の出来事と「再演」について知っていることをばななに話すだけで充分です。
だから、「星見純那はレヴューに参加する大場ななをそもそも知らない」という可能性があるのです。純那が「ケリをつけるってなにに……?」と困惑するのも当然のことです。純那にはななと競った記憶はないんです。

(余談ですが、ばななが外で洗濯物を取り込んでる最中に他の面々がオーディションの話をしているのもそのためだと思います。みんなは「ばななはオーディションのこと知らないんだよね」と思っているわけです)


と、こう考えると「神楽再演」説が現実味を帯びてきませんか? 当然、「再演したのはばななじゃないの?」と思う方もいるかと思いますが、それはあり得ません。ロロロで星のティアラをいただいたのは神楽ひかりであり、神楽ひかりが介入することによって愛城華恋が覚醒する以上、どうやってもばななはトップスタァになることはできないからです。


神楽ひかりはなにをしたのか?

じゃあ、なんでひかりは再演したんでしょうか?
これは、大場に「舞台少女の死」と「再演」について語られ、愛城華恋を含むみんなを「次の舞台」へ向かわせるため、と仮定しておきます。実際、理由があるとしたらそれくらいしかなさそうです。
では、華恋のもとを離れてロンドンに渡ったのも「次の舞台」へ向かわせるためか? これにはちょっと疑問の余地があります。

はい、みんな大好き競演のレヴューの話です。SPACE CRAZY CUPです。

この中でひかりは華恋のもとを離れた理由を「怖かったから」と語ります。

「次の舞台へ向かわせるためじゃないじゃん!」って思いますよね。その通りです。「次の舞台へ向かわせるため」じゃないんです。
じゃあ「怖かった」という動機は嘘なのか? それも違います。嘘ではありません。初見感想考察でも書いた通り、レヴューにおいて「落下」のあとは舞台を降りて本音を語る場面なのです。これはまごうことなき本心です。

なにが言いたいかというと、「ロロロと劇スの間に神楽ひかりの再演があること」と、「神楽ひかりが愛城華恋のもとを去ったこと」は、別の事柄なんです。

もちろん、関連した出来事ではあります。ひかりがロンドンへ渡ったのは、「自分がそばにいては華恋が次の舞台へ進めない」という思いもなかったわけではないはずです。
ロンドン地下鉄のホームで言う「私の役目は終わったはずよ」というセリフは、「大場ななの再演を途切れさせ、神楽再演を行い、劇スを始めて華恋を含むみんなを次の舞台へ向かわせる」という役目が終わった、という意味合いなわけです。


しかし、よく考えたら変じゃないですか? なんで「みんなを次の舞台へ向かわせる」ためにロンドンに行く必要があるんでしょうか? 大場なながやったように、一緒にいて「舞台少女の死」について自覚させる、というやり方もあるはずです。

もうかわりますね。「怖かったから」です。

神楽ひかりは一度、愛城華恋に敗北しています。TVシリーズ最後のレヴューで。「私のすべて、奪ってみせて」。レヴューにおける敗北とは、相手のキラめきに圧倒されること。だから「華恋に目を奪われてただのファンになってしまうのが怖かった」んです。だからロンドンに逃げたんです。
少なくとも二人の運命の舞台、『スタァライト』を二人で演じることができた、あとは華恋も次の舞台へ向かえるよう、「ひかりちゃんとスタァライトするための愛城華恋から、舞台少女 愛城華恋」になれるよう、ロンドンに戻ろう、と、そこまで考えたかは定かではありませんが、渡航するのにちょうどいいタイミングはここしかなかったのも明らかです。

ということで、「役目は終わった」と安心していたらキリンに呼び出しをくらい、しかも華恋のそばを離れたことで華恋が危機に陥ってしまった。あとの出来事はみなさん知っての通り、というわけです。


というわけで、おそらく私の知る範囲では完全オリジナルであろう、「神楽ひかり再演」説でした。公開当初から「劇スとロロロの間に再演入ってない?」という声はちらほらあったようなんですが、それがひかりの手によるもの、というのは今までなかった切り口じゃないかと思います。

繰り返しになりますが、決定的な根拠と言えるものがありません。ただ、こう考えるのが一番矛盾なくロロロと劇スの繋がりを説明できるんじゃないか、と思います。


次回は第二回レヴュースタァライト座談会の書き起こしを更新予定です。舞台で待っててください。


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