2人のAzumiのお話

私はある人の”名前”の由来になったことがある。
名付け親ではなく由来に。

この写真を見て欲しい。

画像1

左に映る6歳の男の子、彼の名前は空澄くん

空澄 と書いて あずみ と読む。

私は彼の名前の由来になった。

彼は私が中学生の頃から通っている美容院のオーナーの息子さん。
私は彼に会いたいと思い続け6年越しに会うことができた。

その美容院はオーナーが一人で経営されていて、施術してもらっている間はいつも話すことに夢中になっていた。
学校であった面白い話や、家族の話、嬉しかった話や時には怒った話など、話のネタは尽きなかった。

ある日、オーナーから子供が生まれたと聞き、写真を見せてもらった時、「この子、あずみっていう名前やねん。」と言われた。
一瞬その言葉の意味がよく分からなかった。
すると、「あづはいつも元気いっぱいでよく笑うやろ。だからあづみたいな素敵な子に育って欲しいと思って名前もらってん」とオーナーは満面の笑みを浮かべていた。なんとすでに私の母には了承を得ていたそう。
なんだかとても恥ずかしい気持ちになったが、私はその説明をされても嘘なんじゃないかとずっと半信半疑だった。

その後、私は大学進学のため、あずみ君とは会えないまま別府へ行くことになった。

最後に訪れてから数年経ち、大阪に長期帰省することになったのでお店に行こうと思い、予約しようとホームページを見たらお店は移転していた。しかし、それほど遠くではなく、お店と住まいを一緒にするため移転したのだそう。そのおかげで私は念願叶ってあずみ君に会えた。

お店に着いて、椅子に座りながらヘアカタログを見ていると上の階から子供の声がした。(もしかして、、、)と思っていたら、「今の声、もう一人のあずやで」と言われ、急にドキドキし始めた。まさか今日会えるとは思ってもいなかったので、嬉しさと緊張が混じり合っていた。

奥様と一緒にお店に降りてきたあずみ君に「初めまして、お名前は?」と聞くと少し照れた様子で「あずみです」と答えてくれた。「私もあづみです」と言うと「えー???」と笑顔で首を傾げていた姿がとても可愛らしかった。
奥様から「私もずっとお会いしたかったんです。今日お会いできて嬉しいです。」と言われ泣きそうになった。

あずみ君は英会話を習っているようで、私に英語で挨拶をしてくれた。
とても社交的で初対面の私にもよく話をしてくれる子だ。言うまでもなく、笑顔は最高に素敵だった。

一人の人間の一生に添い遂げる”名前”
身内でもない他人がその由来になることなんて人生であるだろうか。
私はとても名誉なことだと思う。
なんだか彼の人生の一部になったような不思議な感覚だ。

彼はこれからどんな人生を歩んでいくのだろうか。
たとえ辛く悲しい時が来たとしても彼ならきっと乗り越えられるだろう。
あずみ君が二十歳になったら絶対一緒にお酒を飲みたい。
そして一緒にたくさん語り合いたい。

あずみ君がこれからも健やかな日々を送れますように。


そんなお話でした。





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