【鍼の物語 - 毫鍼 GOSHIN -】鍼の研究 #1/1
こんにちは。東です。
今日は待ちに待ったイベントがありました。鍼造りの関係で大変お世話になっているSuRADAS代表 矢野氏とともに、東京都立産業技術研究センターにお伺いしました。
矢野さんは私の打鍼を造って下さった職人さんです。造って頂いた打鍼は、師匠の伊藤瑞凰先生にも見て頂きました。感想は、『この職人さんはうまい。伝えておけ』。お墨付きを頂き、たいへん嬉しかったです。
打鍼については、また別の機会にしますが、矢野さんをご紹介すると、本職はジュエリー職人さん。職人さんが創るたった一つのオーダーメイド・ジュエリーや、過去の思い出の品や受け継いだ品をリペアして今に活かすこともしています。
また、木の加工も非常に上手で、木と金属を合わせたステキな指輪もお創りです。
打鍼は黒檀という木を使いますし、鍼は金属です。私にとっては非常に相性の良い職人さんです。
▼矢野さんのオーダーメイド・ジュエリーの会社
▼東京都立産業技術研究センター
毫鍼の思ひで
私は鍼を研いで使っています。鍼の油を取り、磨いて、鍼先をつけ、消毒にかけます。こんなことやっている人、今ではめったにいません。手間もかかるし、使い捨ての鍼が主流です。
残念ながら私も、2020年以降は、使い捨ての鍼を使うようになりました。なぜならば、神戸源蔵という鍼職人がご逝去されたからです。とても残念でした。
鍼を研いでいると、心が落ち着くのがわかります。非常に気持ちが良くなります。それから、「鍼が手につく」ようになります。「鍼が手につく」という言葉は、私の感覚を表した造語です。なんとなく、手にピタッと収まり、鍼を打つ方も打たれる方も、鍼の流れがスムースで気持ちが良い感じがします。
あと、神戸源蔵の鍼は、ほんのりとした温かみがあります。金属ですからそんなことはないと思うのですが、実際にそう感じます。柔らかくしなやかな鍼の弾力もあります。神戸源蔵の鍼を使うことで、私は鍼の刺入した時の手応えを体得することができました。神戸源蔵の鍼に育ててもらったと言っても、過言ではありません。
鍼造りを試みる
その神戸源蔵の鍼の製造がなくなりました。職人の技という極めて属人的な技術であるがために、貴くも儚く、遂にはその伝承は途絶えました。何度も書きますが、非常に残念でした。
でもどうにかしたい。何もしないで終わりたくない。足掻きたい。同じものが出来なくてもいい。それでも、できるところまで神戸源蔵の鍼を復刻したいと考えるようになりました。
ものつくりの工程は、非常にシンプルです。どんな材料で、どのように作るか。これだけです。工業的に作るのであれば、争点は、造ることができる機械が有るか無いか、のみ。非常にシンプルな論理です。
まずは、神戸源蔵の鍼がどんな材料で造られているのか。これを知ることから始めよう。そんな考えからスタートしました。
道中は色々ありました。材料調査活動を始めてから早や一年。何もわからないまま今日まで来ました。ただ、先述の矢野さんのご協力もあり、今日は大きな一歩を歩めました。
拡散接合した鍼の資材があったからです。特殊な機械で細い鍼を、成分を変えることなく結合することができます。
この拡散接合した神戸源蔵の鍼資材があったおかげで、エネルギー分散型蛍光エックス線分析装置による定性分析を行うことができるとのこと。いやぁ、目の色が変わりましたよね。「こやつ、できる」という心の声が聞こえてきた(気がしました)。先ほど申請が完了し、再来週には結果が出ます。
その後、もう一つの試験も行うことで、より詳細に分析する予定。
さあ、試験手数料も振り込んだし、果報は寝て待て。
一人ではわからないことも、協力して頂けたらできることもある。色んな角度から、鍼の世界を開拓したいですね。
今日はこの辺で。
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